89 ブチのめしたい
ふっかーつ!!
私の治癒スキルのおかげで翌朝完全復活をした!
今度は治癒スキルで体調は崩さなかった。うーん。どういう仕様かまだよくわからない。真眼で視ても『どのような病も怪我も完治することができる』としか分からなかった。
そして、私の目の前にはニコニコと笑顔のリアンがいる。ブチのめしたい!
「なんでまだ居るわけ?」
3日も寝込んでしまったから収穫できる野菜があるだろうと、玄関を出ると待ち構えていたかのようなリアンがいた。ちっ!てっきり、あのあとフェリオさんに追い出されて、もう戻ってこないかと思ったのに!
今朝、父さんが昨日のうちに村の外に連れ出したと言っていたのは嘘だったのか!
「昨日、トーリアの宿まで戻ったんだけど、ルナに怒られてしまったんだ。何で連れてこなかったのって」
ルナ·····ルナ。あのドジっ子聖女か!何でドジっ子聖女が私を連れてこいと?
私はジュウロウザを盾にして聞いてみる。
籠を持って両手を塞がれた私に対抗策なんてありはしない。
野菜の収穫に庭に出ると言えば、ジュウロウザが付いていくと言い、玄関を出るとリアンが待ち構えていたのだ。それは盾にするしかない。
「何で私が行かなければならないのか、きちんと説明をしろ!それに私はクズステータスとわかった上で言っているのか、その説明込みで説明しろ!」
「心配しなくても大丈夫だよ。モナは俺が守るから。説明っていっても詳しくは聞いていないんだ。『ロズワード』を攻略するにはモナの力が必要って言われただけだし」
ロズワード!!地底湖ダンジョンのロズワード!
え?3ヶ月でそこまで行っているの?ペース早すぎない?
ロズワードと言えばモナがレアアイテム要員として必要な人魚の鱗を手に入れることができるダンジョンだ。しかし、モナが居なくても手に入れようと思えばできるし、代替え品でも可能だ。ただ、ダンジョンを幾度も周回しなければならない。
うん。私が行く必要···あれ?何でドジっ子聖女は私の存在を知っている?
うーん?
「リアン。そのルナって言う人に言っておいて、『周回して海の雫を集めれば問題ない』と」
私がそう言うと、リアンは一歩私に近づいて言った。
「ルナがそう言っているんだ。進むにはモナが必要だって」
うぉ!これ以上近づかないで欲しい。思わずジュウロウザの腕を思いっきり掴んでしまった。
「リアン!これ以上近づくな!ルナっていう人を信頼しているようだけど、言っておくけど、村の人たちを治す薬草を取りに行くのに私が何度死にかけたと思ってるの!路線馬車に乗るだけで体力を奪われるし、寒さにも体力を奪われるし、雪山で寝込むし、私が普通に行動できると思わないでくれる?」
私が事実を捲し立てたというのにリアンはにっこりと笑って
「モナ、ルナに嫉妬しているのか?そんな事をしなくても俺はモナのことs「するか!!!」」
と、見当違いな事を言い出したので、その言葉をぶった斬る。
最後まで言わせるものか!はぁはぁはぁ·····くっ!リアンと話をしているだけで体力が奪われていくのは何とかならないのか!
「モナ殿。中に戻ろう」
背後で怪しげにハァハァと息の荒い私を心配してか、ジュウロウザが家の中に入ろうと言ってきた。しかし、ここで素直に家に戻ろうものなら何時間でもリアンは粘って私を連れて行こうとするだろう。
それこそたまったもんじゃない。
「まだ、大丈夫です」
ジュウロウザにそう言って、不満気なリアンを睨みつける。
「そもそもLV.35でロズワードに行こうと言う時点で無謀ってものでしょ!それにその腰の剣、普通のロングソードじゃない。せめて、火の神殿かエトマのダンジョンぐらい攻略してLV.40超えてから言ってくれる?」
そう、流石に3ヶ月でロズワードに行こうだなんておかしいと思って、リアンのレベルを視てみれば、案の定レベルが全く足りていなかった。
それに火の属性の武器を持っていないのに、地底湖に行くだなんて無謀っていうものだ。
「でも、ルナが「リアン!」」
私はリアンの言葉を遮る。そんなにルナが好きならルナの所に帰れ!
「リアンが弱いと死ぬのは仲間だと、昔から言っているよね。はっきり言ってLV.35でロズワードに行くだなんて死にたいのって言いたい。ただでさえ私は弱いのに、守ってやる?だったら、ロズワードに行って一旦攻略してしてから、私を誘ってくれる?私、死にたくないもの」
私はそう言って現実的に無理だと諭す。行きたいのなら自分たちだけで行けばいい。モナである私が行く必要は····いや、まさか····と、言うことは····ふーん。そう言うこと。