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87 殴ろう

「モナ殿、無理をして起き上がらなくても良いのでは?」


 ジュウロウザが支えて起こしてくれた。いつ部屋に入ってきたのか全くわからなかった。


「いいえ。大丈夫です」


 そう言って、息を吐く。肋骨を押さえられると呼吸がしにくい。


「それで、途中から記憶がないのですが、何がどうなって私は生きているのでしょう」


 あのときはマジで死んだと思ったし、血を吐くだなんて人生で3度ぐらいしか····。思ったよりあるな。全て、リアンが関わることで起こった吐血だったが。


「記憶が無いのならわざわざ思い出さなくていいだろう?」


 いや、事実を知ると言うことは大切な事だ。不意打ちリアンにどう対処するか。そこが一番重要だ。···出来ないような気がするけど。


「はぁ。今回は全くもって不意打ち過ぎて反応できなかった。私が駄目だったのです」


 声すら出なかった。今までなら、リアンの所為で怪我を負わされたり、引きずられたり、捕獲されても叫び声を上げる事ができた。それで大人の人が助けに入ってきてくれた。

 いつも何があってもいいように気を張っていたのに、リアンが戻ってくるはずがないと、思い込んでいた私の落ち度だ。


「いや、村長殿に呼ばれたのなら、俺が付いていけばよかったのだ。すまなかった」


 ジュウロウザがそう言って、頭を下げてきた。

 三者三様に自分が悪いと言っている。なんだか、その状況がおかしく思えてしてしまった。


「ぷっ。三人が三人共自分が悪いだなんて言っていたらきりがないですね。クスクス···イッ!」


 笑ったらぐるぐる巻に固定していた肋骨が動いたようで、激痛が走った。


「モナ殿!」

「姫!」


「大丈夫。笑ったのが駄目だったみたい」


 ジュウロウザがベッド上に座っている私の側に腰を下ろし、私の頭を撫ぜながら言った。


「笑えるようで良かった」


 いや、笑った所為で胸が痛いんだけど?すると扉の向こうから声が掛けられた。


「キトーかリューゲン老師。扉を開けてもらえないかしら?モナちゃんにミルク粥持ってきたの」


 母さんが私のために食事を持ってきてくれたようだ。まだ床にいたシンセイが立ち上がり、扉を開ける。そこにはトレイを両手で抱えた母さんが立っていた。

 なんかトレイの上が山盛りになっているけど私はそんなに食べれないよ。


 そんな山盛りなったトレイをシンセイが受け取る。


「キトーも老師もモナちゃんが倒れてからまともに食事を取ってないでしょう?モナちゃんは起きたのだからちゃんと食べて欲しいわ」


 え?私が倒れて2日経ってるって言っていたけど、その間ご飯を食べてなかったの?


「申しわけな···」


 シンセイは言葉を止め、気がつけば戟を母さんに突きつけていた。正確には母さんの横の空間にだ。


 手に持っていたトレイはというと、私の部屋のテーブルの上に置いてある。いつの間に!!

 ジュウロウザも何かを警戒しているのか、扉の方に視線を向けながら、私を抱き寄せていた。


「あら?不法侵入かしら?」


 母さんはそう言いながら後ろを振り返る。私には誰がそこにいるか見えず、わからない。



「モナが目を覚ましたって聞いたから」


 その声を聞いて私の肌は粟立った。リアンがいる。扉の向こうにリアンが!


 誰に聞いたんだ!あれか!殴りに行くと言っていた父さんにか!きっちり殴って足止めしておいてよ!!

 いや、父さんを殴ろう。違った、父さんを殴ってもらおう。殴ったりしたら私が手を痛めてしまう。


「リアンくん。モナちゃんは起きたばっかりなの。帰ってもらえるかな?」


「いや、でも」


「若造。去れ。姫には会えぬぞ」


 リアンが母さんに帰れといわれ戸惑っている声に、シンセイが強く言葉を放った。

 シンセイが言った言葉に反応したのか母さんが横に押しのけられ、リアンの姿が私の目に映る。なんか姿がフェリオさんに近づいていっている気がする。


 ああ、さっきから肌の粟立ちがひどい。ジュウロウザに抱き寄せされているため動けないが。私の手は先程から武器(ムチ)を探してピクピクと動いている。


「モナ!」


 リアンはこちらに来ようとしているが、シンセイに戟を突きつけられ、それ以上は入ってこれないようだ。


「ちっ!ジイさん邪魔だ!それにしてもお前は誰だ?モナのなんだ?村の人じゃないのになぜこの村にいる?」


 なんだか機嫌が悪いらしい。でも、シンセイに当たるのは間違っているんじゃない?


「吾か?吾は姫の守護者じゃ」


 そう言ってシンセイは右腕を見せた。すると、リアンはその腕を凝視して、信じられないという顔をする。そして、リアンは私を見る。いや、私の横に視線を向けている。


「じゃ、お前はモナのなんだ?」


 強く睨んだ視線を向けて、ジュウロウザにリアンが問いかけた。



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