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81 リリー

 何が最恐だ!私の何処が恐ろしいと!ムッキー!!


「モナ殿?どうかしたのか?」


「武神!ムカつく!!」


「できればわかる言葉で言って欲しいのだが」


 また、私は話す言葉を間違えていたのか!いや、この際いい!


『武神!!この私のどこが最恐なんだ!!この弱々ステータスの私のどこが!!出て来て説明しろー!!はぁはぁ』


 少しスッキリした。だけど、相変わらず大声を出すと体力が削られるのは変わらない。HPが10も減ってしまった。

 息を整えて困惑している二人に視線を向ける。


「キトウさん。シンセイさん。戻りましょうか」


 そう言ったあと私は踵を返して、部屋の隅に向う。確かこの辺りの壁だったような?


「姫はどうされたのだ?」

「時々、わからない言葉を無意識に話す事があるが、今のはわざとだな」


 という二人の言葉を背中で聞きながら、壁に埋め込まれたギミックを見つけた。微妙に触感が違う壁素材があり、それを奥に押す。

 すると壁が横にスライドし、ポッカリと闇が口を開けた。


「ここからは出口まで一本道です。さっさとダンジョンからでましょう」


 武神!覚えておけよ!いつか会うときがあれば、絶対に文句を言い続けてやるんだから!でも、手は決して出さないよ!!




 そして、無事にダンジョンを脱出し、村に戻った私は日常を取り戻したのだった。めでたし、めでたし·····。



 んな訳はなかった。一番の問題はそれは守護者という者だった。


「モナちゃん。そのおじいさんはどなた?」


 なぜか、村の入口で待ち構えていた普段着を着ていた母さんから一番に出た言葉だった。その隣にはいつも背負っている大盾を持っていない父さんが立っている。


「守護者その2」


 私は端的に答える。私とジュウロウザはベルーイに乗っているが、シンセイは戟を担いで徒歩で村まで付いてきたのだ。せめて騎獣をと言ったものの、己の足があるからいいと老兵は言い、ベルーイと並走してエトマから村まできたのだ。並走と言ってもベルーイが早く走ると私が保たないので、早足という速度ではあった。


 私が、守護者その2と説明した途端、母さんはシンセイに駆け寄って、証拠を見せるように問い詰めていた。そして、シンセイの右腕の聖痕を見て、これは大変と言わんばかりに村の中に帰って行った。残された私とジュウロウザとシンセイと父さんは何が大変なのだろうと、母さんの背中を見送っていた。


「父さん、それで村の状況はどうなったの?」


「ん?ああ、ほとんどの人は回復しているが、一番近くで、なんだっけハク···はく?」


「白月香?」


「そうそう、その白月香を吸ったリリー以外は皆、回復して日常を取り戻している。モナが頑張ってくれたおかげだ」


 リリーが!確かに祝い事だと言うことで白月香を焚いたと聞いたけど、まさか一番近くにリリーがいたなんて!

 一体あれから何日経ってしまった?私が5日も寝込んでしまったばかりに


「キトウさん。ベルーイを村の中に進めて下さい。リリーのところに行きます」


「モナ。20日以上経ってしまったのだ。もう、回復する見込みはないとサリも言っている」


 ばぁちゃんがそう言うのもわかる。1ヶ月でミイラのように干からびてしまう病気だ。もう、回復出来る状態ではないのだろう。だけど私には治せるはずだ。


「大丈夫。リリーは治すから。結婚式には出るって言ったもの」


 そう、約束をしたのだ。約束は守らなければならない。


「モナ殿。場所がわからないので案内を頼む」


 ジュウロウザがそう言うとベルーイが進んでくれた。シンセイも付いて来ており、何故か父さんも付いて来ていた。そして、父さんからため息が漏れ聞こえてきた。


「モナ。行っても会えないかもしれないぞ」


「会って治すから」


「だからな「父さん!」」


 私は父さんの否定的な言葉を遮る。


「誰しも幸せになる権利はあると思うの。だから、リリーは幸せにならないといけないの!」


 そう、私の天使は幸せにならなければならないのだ。私がそう強く言うと盛大なため息が父さんから漏れた。


「それで、その者は何の病を患っておるのですかな?」


 私と父とのやり取りを黙って聞いていたシンセイから疑問が投げかけられた。何も知らないシンセイからすれば、何を言い合っているのかと思うのだろう。


「ご老人、夏燥熱ですよ」


 父さんがシンセイの疑問に答えてくれた。その病名を聞いたシンセイは『これはこれは』と頷く。


「姫、これはちと難しいのではなかろうか?」


「大丈夫です」


「姫がそう言うのであれば、吾は言う事はなし」


 うーん?シンセイの私が言うのであれば信じるというのは嬉しいけれど、そこまで信用してもらっていいのだろうか。


 その後は誰も何も話さないまま、リリーの家の前にたどり着いた。そこはまるでお通やと言わんばかりにすすり泣く声が家の中から響いていた。

 私はジュウロウザにベルーイから降ろしてもらって、家の玄関扉をノックした。



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