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67 人は見た目ではない

 2日ほど山頂に滞在して、今は雪山を降りている。その間に色々話を聞いた。氷竜の事だ。親の氷竜の言葉から、引っかかっていたことがあったのだ。


『我らの子の運命を変えてはくれぬか?守ってくれぬか?我らの運命が変えれなくとも、せめて新しい命を守ってほしい』


 運命を変える。氷竜というものに先見の能力があるのかわからないが、自分たちはここで命絶えることが、わかっていたようにも思えた。


 ジュウロウザ曰く、あの後直ぐにドラゴンの素材を求めて冒険者が来たそうだ。その冒険者にドラゴンを倒す力があったのかと問えばリーダーと呼ばれた男にはあっただろうが、依頼を受けてきたようだったから、何かしら倒せる物を用意はしていたのではないのか、と言った。


 それで、少し思い当たる事がある。ゲームでのことだ。ドラゴンの卵。

 エトマの街で手に入れられるドラゴンの卵だ。

 その冒険者達がドラゴンを何らかの手段で倒し、素材と卵を売ったとしたら?


 ドラゴンの卵は相当の量の魔力を注ぎ込まないと生まれることはない。だから、勇者リアンが訪れるまで、卵のまま存在していた。


 あのドラゴンは氷竜だったのだ。それは元から無理な話だったのだ。

 火山のマグマの中の中央にある火の神殿に大きくなったばかりの幼い氷竜に向かわすなんて。だから、神殿に着いた瞬間に燃えて息絶えたのだ。


 リアンごめん。火の神殿には自力で行って!流石に氷竜は駄目だ。



 そして、その卵は私が抱えている。別に私の魔力を与えているわけじゃない。私の魔力なんて雀の涙ほどしかないからね。

 横向きに座っている私を支えながら、器用にジュウロウザが有り余っている魔力を与え続けているのだ。


 氷竜を孵してどうするかって?まぁ、自然に返すのが一番だろうね。ドラゴンの知り合いでもいれば任せられるのだけど、生憎私はただの人だ。ドラゴンの知り合いなんていやしない。


「モナ殿、難しい顔をしているが、何か考えごとか?」


「ん?火の神殿で氷竜を死なせなくてよくなったけど、生まれた氷竜をどうしようかと。雪華藤は多めに取ってあるから、村ではある程度お世話はできるけど、その後は自立してくれるかなと」


「火の神殿?なんの事だ?」


 はっ!また、口が滑ってしまった。片手で口を押さえ


「何でもないです」


 と取り繕うが、ジュウロウザは苦笑いをして言う。


「そこには火竜はいるのか?」


 火竜?ああ、なぜドラゴンに乗ってその火山に行かなければならないのかと言えば、そこが火竜たちの住処だからだ。人の身で火山に登ろうものなら、火竜たちの総攻撃に遭うのは間違いないだろう。


「いますよ。火の神殿の火山は火竜たちの住処ですから」


「だから、火竜がいたのか」


 ジュウロウザは何かを納得したようだ。



 順調に山を降りていき、廃教会のところまで戻ってきた。

 だが、私の目は見てはならない者が映ってしまった。


「モナ殿。あれは」


「キトウさん、目を合わせていはいけません。絡まれたらコンクリートで固められて海に捨てられます」


「コンクリートがよくわからないが、無視でいいのだな」


 そう、無視でいい。あれとは関わりたくない。


「おい、テメーら!気合がたんねーぞ!タマついてんのか?ああ゛?!」


 数人の黒い服を纏った人達が震えながら教会に向かって何かをしている。震えているのは寒いのか後ろに立っている人物が恐ろしいのかはわからないが、一心不乱に何かを唱えている。


 そして、その集団の後ろからは、前方の集団に発破をかけるように、声をかけている人物は、教会の教祖が着る黒い服装を纏っているが、黒髪のオールバックで黒いサングラスをしており、タバコを吹かしながら前方の集団の背中を蹴飛ばしている。


「これぐらい、人を刺すぐらいの気合で行けや!」


 人は刺しては駄目だ。それもその服装は聖職者だろう。決して口にしてはならない言葉だ。


 恐らく教会内にはびこっているモノ達を浄化しようとしているのだろうが、ゲームでシスターの幽霊しかいなかったのは、こいつのおかげだったようだ。


「テメーら、フザケてんのか?サクッとヤりやがれ!サクッと!」


 どう聞いても、ヤクザの幹部が部下に指示しているようにしか聞こえない。やっぱ、私は無理だ。どれだけ浄化能力が高かろうが、魔祓いのスキルを持っていようがヤクザ神官のパウーロを仲間にはしたくない。


 私達は関わりたくないので、そのまま廃教会の横を素通りする。はぁ、あれで能力だけはいいのだ。人は見た目ではない、いい典型例だ。



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