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6 ドキドキしている心臓

 信じられないと私は目を見開く。和国の着物と袴を着て、腰には刀を差し、黒髪を一つに結ったジュウロウザを視る。


LUK −1000000


 え?私、明け方まで手を繋いで、LUK 1or0 にまでにしたよ。何?マイナス百万って!き、恐怖すぎる。


「ねぇ、なんでまだこの村に居るの?怪我が治ったらこんな辺鄙な村に居る必要ないよね」


 本当なら助けてもらったお礼を言わなければならないのだろうが、それよりも私は目の前の数値に恐怖を覚えた。


「モナねぇちゃん」


 ジュウロウザの後ろからルードが顔を出して呼びかけてきた。


「このお兄さん。麦の収穫手伝ってくれるって」


「は?」


 なぜ、手伝う必要があるのか。確かに冬を越した麦は大きく育ちそろそろ収穫をしなければならないので、村全体で収穫の日を調整しているところだったりする。


「助けていただいたお礼にお手伝いをと、思いまして」


 そう、ルードの前にいるジュウロウザが丁寧な言葉で言った。

 お手伝い?麦の収穫は一日で済むことはない。数日はかかるのだ。それはこの村の男手がほとんど出稼ぎに行っているため、老人と女子供がいるだけなのだ。確かにリアンがいなくなった為、働き手は減った。減った、減ったんだけど、私が許容できる範囲ではない。


 私はカツカツとジュウロウザの元に行き腕を掴む。


「ねぇ。貴方は自分がどういう状態か知って、それを言っているの?それとも知らないの?」


 知っていて村に留まる選択肢をしたのなら最悪だ。

 彼は私を見下ろして首を傾げている。え?マジで気がついていない?自分がクラッシャーであることを?

 いや、もしかしたら彼の周りが常にその状態だとしたら、気がつく要素は皆無だ。


「今のステータスを見て」


 私の言葉に眉をひそめるジュウロウザ。しかし、そんな顔をしてもイケメンだな。


「貴方のステータスを見て」


 もう一度同じことを言う。するとジュウロウザは私から視線を外し、どこか曖昧な空間を見るような目になった。ステータスを開いたのだろう。


「LUKの数値を見て」


 ジュウロウザの視線が一点に止まった事を確認する。今のLUKの数値は−962511にまでマイナス値が減った。それが、どんどん数値が下がっていっているのだ。ジュウロウザは目を見開いて宙を見ている。


「言っておくけど、グレイトモンキーなんてこの辺りに出現なんてしない魔物。その不運の根源と言っていいステータス。私は貴方が招いたことだと考えているのだけど?」


 しかし、ジュウロウザは私の質問には答えず。 


「この数値って減らすことができたのか?」


 質問に質問を返さないでほしい。ジュウロウザの掴んでいない方の手が私を掴んでこようとしたので、手を放し大きく一歩下がる。しかし、ジュウロウザも一歩近づいて来たので、更に私が一歩下がる。


「私に触らないでもらえる?貴方のステータスで腕を掴まれると、腕が折れるとか肩が外れるとかするから近づかないで!」


 リアンよりも高いステータスなのだ。カスステータスの私は簡単に縊り殺されるだろう。

 そう言っている私の前にルードが立ちふさがってくれた。本当にこの子はいい子だ。


「モナねぇちゃんに触る時は、ヒナ鳥に触るように繊細に扱わないと、死んじゃうから」


 ルード的には私はヒナ鳥なのか。しかし、子供のリアンであの状態だったのだ。ルードもそれなりに気を使ってくれていたようだ。


「ヒナ鳥?」


 まぁ。おかしな例えだとは思うけどそれぐらいの気合で扱って欲しい。


「俺の兄ちゃんは子供の時にモナねぇちゃんを何度か掴んだだけで骨を折っているんだ。モナねぇちゃんは弱いから守ってあげないと駄目だって、母さんから何度も言われていたのにね」


 そうか、何度も注意されていて、あれだったのか。リアンは本当に馬鹿だったのか?


 ジュウロウザは何か考えるように眉をひそめて、空間と私を交互に見ている。私が離れたことでLUKのマイナス値が増えていっていることを確認できたことだろう。わかったのなら、さっさとこの地を去ってほしい。


「わかった」


 そう、わかってくれたのか。さて、私は昼食を取ってから、採取に向かうか。裏口から家の中に戻ろうとすれば、ふわりと体が浮いた。


 は?


「これなら、腕を掴んでいないからいいだろ?」


 とても近くで声がした。横を見ればジュウロウザの顔が近くに!


 思わずのけ反るが、子供のように抱きかかえられているため、距離が取れない。なにこれ。確かに手は掴んでいない。しかし、それは抱きかかえればいいということにはならない。


 ドキドキしている心臓を抑え込むように、ため息を長く吐く。


「私を抱きかかえる意味がわからない。貴方がさっさと村を出ていけばいいこと」


「妹は手を繋ぐか、抱っこすると喜んだ。それから、俺は鬼頭十郎左だ」



数ある小説の中からこの作品を読んでいただきましてありがとうございます。

そして、ブックマークをしていただきました読者様、ありがとうございます。

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