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57 カミト (十郎左 side)

十郎左 side


 モナ殿は本当に不思議だ。時々、おかしな事を言ってはいたが、あまり気にはしないようにはしていた。


 しかし、モナ殿が答えた言葉に違和感を感じた。レッドドラゴンを跡形もなく燃やすように言ったこと不思議に思って聞いてみれば、レッドドラゴンがドラゴンゾンビになると答えたのだ。ドラゴンがゾンビに成るとは聞いたことがなかったが、モナ殿は確信があるかのように言い切ったのだ。


 今度はシュエーレン連峰に行く工程を話していたはずなのに、唐突にダンジョンの話を言いだしたのだ。それも、『ダンジョンができているかどうかという確認』という、本来は存在しないが、ダンジョンが発生することがわかっている言いようだった。


 モナ殿には未来視ができるのかと思えば未来なんてわからないと言う。ただ、ただ、不思議だ。


 どこから、知識を得ているのかわからないが、モナ殿の言っていることに間違はないということがわかった。



 いきなり、宿を出ようと言われたことには驚いたが、結果を見れば納得のできる事柄だった。

 はっきり言えば、あのままモナ殿がベッドで眠り、俺が暖炉の側でいることになれば、俺はモナ殿を守ることはできなかっただろう。

 あの、眠り香だ。あの眠り香は魔物にも感知出来ないほど微量な匂いしか発せず、気がつけば深い眠りに落とされる。

 眠りに落とされないにしても、体の自由は奪われ、満足に動くこともままならなかっただろう。

 しかし、モナ殿はその微細な匂いに気が付き風を起こしていた。

 後で聞けば、あの甘ったるい匂いが嫌いで鼻につくと言っていた。普通ならわからないであろう匂いをだ。


 これは、あのプルム村からモナ殿を出してはならなかったのではないのだろうかと思い始めていた。

 村の人々が姫と呼び、守っていたであろうモナ殿をだ。



 雪山で会った村の住人だという女性もだ。彼女もモナ殿の願いを内容も聞かずに了承した。姫君の願いは叶えるという村の掟のまま答えたのだ。

 夫である男性の意見も確認せずに、モナ殿に従うと。



 そして、この神殿。地図にも存在せず、道は雪で塞がれ普通なら行くという選択肢には入れない、この神殿に行こうといいだしたのだ。

 その捨て去られた神殿を元ある姿にしたばかりか、古代の遺跡にあるダンジョンぐらいにしかお目にかかったことのない移動する床を、まるでその物を知っているように乗り込んだ。

 終いには女神の加護だ。俺は女神に己の不甲斐なさを恥、モナ殿を守る力を望んだ。そして、与えられたのが【神人(カミト)の守護者】の称号と【神人(カミト)の守護】というスキルだ。ただ、このスキルには発動条件がある。普通に使えないとは困ったものだ。




「休まれないのですか?」


 寝ていたはずのモナ殿が起きてきたのか、声をかけられた。


 見た目はテントだったが、中に入れば広い山小屋のような部屋の区切りがない室内が広がっており、その奥のベッドでモナ殿は寝ていたはずだった。


「暖炉の火の番をすると言ったはずだが?」


 建物の中で底冷えの寒さはないが、暖炉の火がないといささか室内が冷えるのも確かだ。


「そんな事を言わずに、ジューローザも寝た方がいいですよ。昨日も休んでいませんでしたから」


 なんだ?俺は思わず腰に佩いている刀に手を掛ける。


「お前は誰だ?モナ殿は俺の事をそう呼ばない」


「あら?キトーだった?失敗。失敗」


 いや、そもそもモナ殿はきちんと名を呼んでくれる。モナ殿の姿をした者は舌を出し、失敗したと言う。


 そして、姿が歪み、見たことのある姿に変化した。俺に守護者の力を与えた女神の姿にだ。刀に掛けていた手を離し、その場に跪く。


─ふふふ、今回の神人は元気いっぱいで手を焼いているみたいね。本来の守護者はあれでしょう?意地悪なエルドラードに別の役目を与えられたみたいだしね。神人もその役目の中に入ればいいのだけど、本人は嫌がりそうだから、代わりに神人の守護者の一人になってもらうわ─


 意地悪な神?どういうことだ?

 守護者の一人?守護者は一人ではないということか?


「質問を宜しいでしょうか」


─いいわよ─


「神人とは何を指すのでしょうか」


─あら?護衛している人物っていう答えでは····満足しないのでしょうね─


 そのとおりだ。神人がモナ殿の事を指していることぐらいは理解できる。


─簡単に言えば人の身に落とした神の欠片かしら?彼女の殆どはこの世界の一部になってしまっているけど、心の一部というか欠片だけが人の身となって輪廻をくりかえしているの。心残りなのかしら?悪あがきかしら?もう、叶うことなんてできやしないのにね─


 叶わない願い?村の人々が姫と呼ばれる者の願いを叶え続けているのに関係があるのだろうか。


「では、神の欠片の存在だからこそ、神たる貴女様が守護者を与え。守護者は神の欠片という存在を守ればいいと言うことでしょうか?」


─あら?それは違うわよ。言ったじゃない彼女の殆どは世界の一部に成っていると、神人がこの世界に絶望をすれば、世界の一部となっている彼女にも影響を与え、世界が崩壊するからよ。神人が穏やかに暮らす事が守護者に与えられた役目よ─


 とても、とても困難な役目だった。あのモナ殿が穏やかに暮らす?いや、妹のソフィー殿と祖母殿が幸せなら、満足はしてくれそうだが····頭が痛い。



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