表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/126

52 治りますよ

「モナちゃんからのお願い?なんでも聞くわよ」


 何も言っていないにも関わらずアネーレさんは了承した。そんなに安請け合いしては駄目だよアネーレさん。


「あ、ありがとう。えーっと、今村の人の多くが夏燥熱に罹ってしまっていて「え?」その治療薬に「モナちゃんどういうこと?」」


 アネーレさんが顔を青くしてふるふる震えていた。


「か、夏燥熱って高熱が一ヶ月ほど続いてミイラのように干からびてしまう病気じゃない!治す方法は無いって言われている····リリーは!リリーは大丈夫なの?結婚式には間に合わないけど帰るって、手紙を出したのよ!」


「リリーも罹っていると聞いているけど、大丈b「そんなー!!どうすればいいの!」」


 落ち着いて欲しい。はぁ、とため息を吐きながら立ち上がり、沸かしていたお湯でお茶を入れる。今のままじゃ話にならなさそうだ。


 ジュウロウザにシチューのおかわりはいるかと尋ねれば、いると言われたので、器に入れれば、新たに目の前に木の器が差し出されてきた。


 エクスさん、貴方はアネーレさんを落ち着かせなさい!

 そんな顔をしても駄目です。




「モナちゃん、ごめんなさい。直ぐに村に帰るわ」


 アネーレさんが立ち上がって出発の用意を始めた。


「待ってください。このお茶を飲んで落ち着いてください。ばぁちゃんの薬茶です。私のお願いを聞いてくれるのですよね」


 そう言って、少し熱めの薬茶を差し出す。

 アネーレさんは渋々腰を下ろしてお茶を飲んでくれた。


「アネーレさん。治りますよ。夏燥熱は治ります。そのための雪華藤です」


 その言葉にアネーレさんの菫のような美しい紫の瞳からぽろりと涙がこぼれた。


「それで、雪華藤は採取出来るのだけど、私は速く移動できないの。だからメルトの街で雪華藤を渡すので、その雪華藤を村まで運んで欲しいの」


「ええ。ええ。それぐらい簡単なことよ。他に出来ることがあれば何でもするわ」


 だから、何でもするって簡単に言っちゃ駄目だよアネーレさん。私は魔石を差し出して言った。


「メルトの街で待っていてくれたら、それでいいです。その間にこの魔石を加工してエクスさんの背負っている鞄につけるといいですよ。今よりもっと容量が増えるでしょう」


 しかし、アネーレさんは魔石を受け取らずに立ち上がって、エクスさんにも荷物をまとめるように促す。


「いいえ。私達もセッカトーを取りに行くわ「え?」」


 私達に付いていくと言っているアネーレさんの横では、何を言っているのという顔をしているエクスさんがいる。


「モナちゃんが行くのに私達が街で、のほほんと待っているなんてできないわ「アネーレ、ちょっと僕は」だまりなさい!」


 黙るように言われ、項垂れるエクスさん。『僕は街でゆっくりしたい』と心の声が漏れているエクスさんをギッと睨みつけるアネーレさん。


「アネーレさんの武器は折れてしまっていましたよね。街で新調した方がいいのではないのですか?」


 私に指摘されたアネーレさんは、慌ててエクスさんに武器はないのかと詰め寄っていたが、エクスさんが手に入れられる最高の槍を壊してしまったことを知ったアネーレさんは肩を落とした。


「武器はい····いるわよ···ね」


 アネーレさんのその言葉に私は頷く。カスステータスの私が言うのもなんだけど、魔物があちらこちらにいる世界では必要不可欠な物だ。


「わかったわ!一旦、街に降りるけど、武器を調達したら、追いつくわ!「え?ぼくは」廃教会のある山ね!」


 そう言ったアネーレさんはエクスさんの首根っこを掴んで、雪の壁を駆け上がって行った。

 冒険者って、人ひとり抱えて跳べるのは普通なのだろうか。エクスさんが『僕のシチュー』と叫んでいるが、エクスさんの物ではない。それに、シチューの鍋は残念ながらジュウロウザが食べきって空だ。しかし、ジュウロウザ。少々食べ過ぎだと思う。



 二人が立ち去ったあと、私は大雑把な地図を開く。太陽は中天を過ぎ、傾き始めていた。あと、どれぐらい進めるだろうか。ゲームでは夜になると魔物の種も質も大きく異なり、断然に強くなる。それまでに、安全を確保しなければならない。それに、山の天気もどうなるか、わからない。今は晴天だが、いつ吹雪いてもおかしくはない。精々、3時間行動できればいいほうか。


 旧山道は戻り際に発見した。看板の痕跡と整備されていたであろう雪の下の道を私の眼で確認したのだ。


 地図を見ながら考える。何かが引っかかるのだ。何かがあったような気がする。雪の壁の内側を地図を見ながら歩き回る。

 雪の壁?雪····。


「雪の神殿だ!そう、古代遺跡!冬の女神を祀った古代神殿!」


 このシュエーレン連峰が雪に閉ざされている主たる原因である冬の女神ティスカを祀った神殿。そこは神の護りがあり魔物が侵入してこない!


「モナ殿。俺にわかる言葉で話してくれるか?」


 はっ!また、違う言葉を話していた?


「ごめんなさい。今からだと廃墟教会までたどり着けないと思うので、その中間点にある神殿を目指しましょう」


 そう言って、私は地図をジュウロウザに見せ、ここと氷竜の巣がある間の山を指した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ