4 LUKって変動するもの?
今、目の前でとても奇妙な現象が起きている。先程からLUK がカウントアップいや、マイナス値だからカウントダウンだろうか。マイナス値が増えていっている。
今LUK が-949645になっている。1372減っているのだ。いや、LUK がマイナス値になっている時点でおかしいのだが。
そのスピードがとても早い。もう-950317になっている。恐ろしい、一体何が起こっていると言うのだ。
思わずジュウロウザの寝ている腕を掴んでしまった。・・・止まった?いや、今度はマイナス値が減っていっている?-949982になっている。コレは何?どういう現象?私は手を離す・・・マイナス値が増える。触れる・・・マイナス値が減る。
私の所為?
ああ!謎のコマンドの正体はこれか!
ゲームでモナには謎のコマンドがあった。ネットで検索しても誰も使い方がわからなかった戦闘コマンド『手を握る』。
何度か使ったことがあった。なんの意味があるのか検証するために。だが、全く使う主旨がみえてこなかったのだ。
例えば勇者リアンに使うとする。モナの『手を握る』コマンドは必ずターンの一番始めに発動する。
『モナはリアンの手を握った』
『リアンはモナに手を握られているため攻撃できない』
・・・攻撃できないんかーい!画面に向かってつっこんだ。誰に使用してもそうだった。もし、モナのLUK を分け与えるコマンドだとしたら?いや、ゲームに運のステータスは存在しなかった。
なら・・・クラッシャー専用のコマンドだったのか?しかし、かなり始めの方から混ぜるな危険と言われていた二人だ。誰も試した人が居なかったからネットに上がる事がなかったのか?
これだと、かなり楽に人魚の鱗を手に入れる事ができたのでは?私は途中からジュウロウザを仲間にすることをやめた。後半戦になるとクラッシャー具合が特に酷くなり、ジュウロウザしか生き残らない事が多発したため、他の仲間を復活させるため金が底をつきかけたのだ。
もし、このクラッシャーを制御できたとしたら?いや、そもそもモナは長期間仲間にはできない。でも、ボス戦のみこの二人を入れる事ができたとしたら、かなり楽だったのでは?
このモナの『手を握る』コマンドはかなり使えたのかもしれない。あのドジっ子ヒーラーの成功率を上げることもできたのでは?確かに、ドジっ子ヒーラーに『手を握る』を使った後の回復は成功していたように思える。
それも今更って感じだ。私はあのリアンの仲間になるつもりはない。絶対にない。
「モナ、御仁の具合はどうじゃ」
いつの間にか、ばぁちゃんが部屋に入って来ていた。どうやら、怪我人の着物を繕って持ってきてくれたみたい。考え込んでいて気が付かなかった。
「ばぁちゃん。コレ谷に捨ててきていい?」
具合がどうと言うより、私の命の危険が迫っているかもしれないこの状況下で、私は根源を消すという要望を出してみた。
「モナ!命の恩人に対して何ということを言うんじゃ!」
ばぁちゃんに怒られた。普通は助けられた人に対して言うべき言葉では無いことは理解している。
しかし、しかしだ。目の前にいる人物はクラッシャーと呼ばれ、勇者の幼馴染みヒロインと混ぜるな危険と言われた人物だ。現にLUKがマイナス値に振り切っている。
これは魔王が村に降ってきてもおかしくは無いレベルではないのだろうか。
「ばぁちゃん。マジでコレ危険。村に厄災が降りかかるレベル」
切実にばぁちゃんの目を見て訴える。私の真剣さがわかってくれたのか、ばぁちゃんは私とジュウロウザを交互に見るがある一点に視線を止めた。
「その手はなんじゃ?」
ばぁちゃんは私の手を見て繋がっている先を見る。言葉と態度が合わないと思っているのだろうか。
「ばぁちゃん。私のLUKが∞あるって教えたよね。彼はそのLUKがマイナス90万なんだよ。今、そのマイナス値を下げていっているの。助けて貰ったのは本当だけど、そもそもグレイトモンキーはもっと南のメドルト山にいる魔物。彼が居たから西の森にグレイトモンキーがいたんじゃないかな?」
私は切実に訴える。私が正しいと。この男は捨ててくるべきだと。
「モナ、それはモナがそう思っておるだけじゃろ?怪我をしている者に非道な行いをするような子に育てた覚えはない。その者はリアンじゃないぞ」
もしかしてモナは男性不審になってしまっておるのかのう。と言葉をもらしてばぁちゃんは部屋を出ていった。
私が悪い?でも、このジュウロウザは危険だ。主に私の命が危機に瀕してしまう。
いや、ただ単に私がゲームの世界と思い込んでいるだけ?よく似ているけど、実は違っていたりする?
·····リアンが勇者に選ばれたのは事実だ。そして、私とリアンが幼馴染みというのも本当だ。
ただ、目の前のこの男がゲームのジュウロウザと同じであるとは限らない。
ばぁちゃんの言うとおりだ。まずは事実確認をしなければならない。