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39 不安に思っていること

「おねぇちゃん。『おおと』はどんなところだった?大きなところ?」


 少し発音がおかしいけど、大きなところではあった。食事を用意をしていると、ソフィーが近くにいて、旅の話を聞いてきた。お土産に渡した一角兎のぬいぐるみを抱いて、嬉しそう。


「そうだね。大きな街だったね。人もたくさんいたよ」


「そうなんだ!わたしも『おおと』に行ってみたいなぁ」


 ふふふ。ソフィーは可愛いな。私の癒やしだ。


「ソフィー。ソフィーが王都に行くと魔物に襲われて食われてしまうよ」


 ルードもキッチンに入って来ており、ソフィーと一緒になって、話を聞いていた。


「それじゃ、ルードが守ってくれるよね」


「あ。当たり前だろ!」


 ルードは顔を真赤にして叫んでいる。

 ふふふ、ルードも可愛いな。そんな二人の頭を撫でてあげる。


「私は魔物に襲われなかったから、ソフィーも大丈夫じゃないかな?」


「それは、おねぇちゃんだからだよ」

「それは、モナねぇちゃんだからだ」


 え?そこまで仲良くなくてもいいと思うよ。


「ねぇ、ルード。トゥーリさんは大丈夫なの?」


 村の人の殆どが病に臥せっているのだ。ルードの母親のトゥーリさんは大丈夫なのだろうか。ここにルードが居てもいいのだろうか。


「あ。母さんは大丈夫。父さんにモナねぇちゃんの腕輪が切れたことを聞いて、母さんもその日は外に出なかったから」


 そう言えば、リアンが戻るって言う日は結婚式だったはず。


「ねぇ。リリーとキールの結婚式はどうなったの?」


「え?そんなのねぇちゃんの腕輪が切れたから延期になった。それで、モナねぇちゃんが戻って来てからにするって、リリーねぇちゃんが言ってるって、でも今は熱が出て動けないみたい。キールにぃちゃんが必死で看病している」


「それは、私の責任重大ね。絶対に薬草を持って帰らないと駄目ってことか」


 あの、天使を死なせるわけにはいかない。天使は幸せにならないと駄目!


「ご飯できたから、ばぁちゃんとキトウさんを呼んできて」


「「はーい」」


 可愛い二人の背中を見送って、私は食卓に配膳をする。

 シュエーレン連峰か。万年雪に閉ざされた国境沿いにある山々だ。雪山の装備が必要だが、問題は私が登れるかどうかだ。

 いや、自力で登るのは私では無理だ。

 馬竜はどれぐらいまで寒さに耐えれるのだろう。騎獣の雪山装備もあるけど、馬竜にも対応できるのだろうか。それも『雪華籐』は山の中腹にあるのだ。


「私、雪山で生きていける自信がない」


「モナ殿、どうかしたのか?」


 思案しながら配膳をしていたため、ジュウロウザが目の前にいることに気が付かなかった。


「あ、夕食できたので、座っていてください」


 まだ、配膳途中なので、キッチンに鶏の香草焼きを取りに行こうと、足を動かす。そう!なんと今日はお肉料理があるのだ。王都で手に入れたコッコのお肉。鶏に似ていて美味しかったので、生肉を買っていたのだ。


 ····で、なんでキッチンまでジュウロウザが付いてくるのか?


「どうかしましたか?」


 取り敢えず聞いてみる。


「何度か、聞こうと思っていたのだが·····」


 なんだろう?何か聞かれるような事があっただろうかと首を傾げる。


「その、時々モナ殿の使う言葉がわからないのだが、何処の言葉だろうか?」


 私の使う言葉?え?意味がわからないのだけど?


「いや、先程も『ワタシユキヤマデ』と言っていたが、何を言っていたのだろうと思って。時々、わからない言葉を使っているが、何か不安があるなら言ってくれないか?」


「うぇ?」


 私、無意識で日本語を喋っていた?説明?これも無理。


「ごめんなさい。気をつけます」


「モナ殿。きちんと言ってくれないとわからない」


「後で話します。先に食事にしましょう」




 ルードはトゥーリさんの分の夕食も持って帰り、ソフィーは美味しい美味しいと言って食べてくれた。


 そして、私は片付けが終わった後、ジュウロウザにお茶を出して、隣に座る。


「不安に思っていることですか」


 私はお茶を一口飲む。不安に思っていることなんていっぱいある。山盛りだ。


「やはり、一番は私の体力の無さですね。雪山で生きていける気がしません。それに、シュエーレンの山々に住む魔物が厄介です。下手すると氷竜に遭遇します」


 そう、あの連峰の頂上に竜の住処があるのだ。氷属性の全体攻撃を受けて一環の終わり。ゲームオーバーだ。

 しかし、ここは今の私にとって現実だ。死んだら終わりそれまでだ。


 ぶるりと震える。体の内側から響く体を破壊される音。また、それを聞くことになるのかと思うと、恐怖が心を占める。


 そう、私が頑なにリアンを避けている理由はこれだ。内側から響く骨の軋む音が、私にとって恐怖以外の何物でもない。そして、恐怖心と共に私の中で燻っている未練が顔を出す。今となってはどうしようもない未練だ。



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