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34 レッドドラゴンの討伐依頼は

「それで、シアの案で王都に来ることになったと。その間にリアンを王都に戻させて仲間にしていた者達を置いていこうということか。モナの幸運の腕輪が一斉に切れるということは、相当なことだな。仲間内でそんな事が起こったのは一度だけだったぞ」


 シオン伯父さんが呆れるように言った。そう、村の人には私のミサンガを配っている····というか、私の父が皆に自慢して噂が噂を呼んで村の人達全員に作ることになってしまったのだ。あの時は大変だったなぁ。


「そうね。私はないけど、もし、仲間全員の腕輪が切れたら速攻に引き返すわね」


 父もその様な事を言っていたが、何かジンクスか何かあるのだろうか。


「モナの依頼の件だが、村に戻るのは急いでも3日後ぐらいになりそうなのだが、大丈夫か?」


 え?そこまで急ぐ依頼じゃないのだけど。水路と水車と作るっていうことだし、時間がかかることだし、急いではないよ。


「シオン伯父さん、そこまで急がなくてもいいよ。さっきも言ったけど、南側に水路を作るのに人手がいるし、人が集まるのも時間がかかると思うよ。受けている依頼があるなら、終わらせてからでいいよ」


「あらあら、ゆっくりしていたら、戻ったらやることが何も無いってことになるじゃない?」


 え?そこまでのことにはならないと思うよ。以前水路を作って貰った時は3ヶ月掛かったしね。

 そう、今ある水路は6年前に作ってもらったのだ。その時は色々苦労をした。全てが粘土質の地層なら良かったのだけど、水喰らい土の地層が混じっていたのだ。色々相談をして、結局水路に石畳を用いてとても頑丈な水路を作り上げてしまったのだ。

 そこまでの物は作るつもりはなかったのに、何故か村の皆が張り切ってしまった。きっと、水で困らなくなるならと張り切って作ったのだろう。


「だから、2日で依頼を終わらせて、3日後に戻るからね」


 マリエッタさんがニコリと笑った。

 ん?もしかして、一緒の依頼を受けている?


「同じ依頼を受けているの?」


「そうだ。ここから北にあるグローズ山で暴れている。レッドドラゴンの討伐を依頼されている」


 レッドドラゴン!!流石、SランクとAランクの冒険者!

 しかし、グローズ山ってどこかで聞いたことがあるな。グローズ山のレッドドラゴン····ドラゴン?はっ!


「モナちゃん、どうしたの?」


 グローズ山のドラゴンゾンビの討伐!

 毒素を垂れ流し、毒の山となってしまったグローズ山の依頼だ!あの毒娘、魔術師イリスが活躍する依頼だ。そうか、その前にシオン伯父さん達が依頼を受けていた。それが、ゾンビ化してしまったのか。


「そのドラゴン倒したら、跡形もなく燃やしてくれる?」


「ドラゴンを燃やすのか?素材を取らずに?」


 シオン伯父さんが聞いてきた。あ、素材はいるのか。


「えっと、ドラゴンって大きいよね。全部素材として持って帰らないよね」


「それはそうだ。角とか牙とかは持って帰るが持てない物はそのまま放置だ」


 そうだよね。それが、ゾンビ化するんだよね。


「その····そのまま放置するドラゴンを燃やして欲しいの」


 私の言葉にマリエッタさんが不可解な顔をして首を傾げる。でも、直ぐに笑顔になって頷いてくれた。


「よくわからないけど、モナちゃんがそう言うなら、燃やせばいいのね」


「うん」


 これで、毒の山になって、この王都まで被害が及ぶ事はなくなるだろう。

 詳しく聞かれると、答えに困ることになったけど、二人は私の言葉を信じてくれた。そんな目の前の二人に笑いかける。


「あらあら、後でリアンに自慢しておかないと」


「久々にモナの笑顔が見れただけで、イヤイヤ討伐の依頼を受けた甲斐(かい)はあった」


 イヤイヤ討伐の依頼を受けたのか。それはおざなりにドラゴンを放置するよね。

 シオン伯父さんは私の頭を撫ぜて、立ち上がった。


「さて、アルトに露払いをさせようと思っていたが、さっさと終わらすか」


「そうね。今からだと追いつきそうね」


 マリエッタさんも続いて立ち上がった。え?今からドラゴン討伐に向かうの?もう日が暮れていますけど? 


「ジューローザ。テオから聞いたかもしれないが、モナの事を頼んだぞ」


「そうそう、モナちゃんは目を離すとフラフラって居なくなっているからね」


 父さん、ジュウロウザに何を話したの!それから、私はそんなにフラフラしてないよ!マリエッタさん!


「心得ている」


 え?ジュウロウザ、何を心得ているの?マジで父さんから何を聞かされているの?


 ジュウロウザからの言葉を聞いた二人は頷いて、店を出ていった。




「モナ殿。先程のドラゴンを燃やせと言ったのは何故だ?」


 日が落ちて、暗闇が辺りを支配しても、外灯により明るく街を照らす光に満ちた王都を眺めながら、宿屋に戻っているとジュウロウザの声が聞こえた。

 午前中は馬竜で移動し、昼からは宿屋探しに歩き回り、疲れているところにお腹がいっぱいで、眠気が襲ってきている私に話しかけてきたのだ。


「んー。そのあとドラゴンゾンビに成るから」


 眠気と戦っていた私は無意識に答えてしまっていた。レッドドラゴンがドラゴンゾンビになる未来を。



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