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30 何をした?

 昼からの道中も何事もなく順調だった。ジュウロウザ曰く、夕方には路線馬車で今日行く予定であったラウリーの街に着くそうだ。

 ラウリーの街は水の都と言っていいほど、街中に水路が張り巡らせてある。海から王都まで引いている運河の中継地なのだ。そして、陸路でも辺境から王都までつなぐ街道の中継地なのだ。物資を購入するなら、ラウリーと言われるほど、珍しいものがあるのだ。まぁ、これもゲームでの知識なので、どこまで当てになるかはわからない。


 しかし、お腹が満たされて、心地よい揺れが続くと、まぶたが下がってきてしまう。

 眠りの淵の入り口に入ろうかという時に、耳障りな音が聞こえてきた。

 人のざわめき、悲鳴、金属がぶつかる音。


「なに?」


 私は、何があったのかと、前方を見る。なんか、緑色の小人の集団に馬車が襲われている?


「昨日、俺たちが乗っていた馬車が、ゴブリンに襲われている」


 ジュウロウザが説明をしてくれた。あの緑の小人はゴブリンだったのか。初めて見たよ。それも、昨日乗っていた馬車だって?

 遠目でよくわからないが、昨日挨拶をしてきた冒険者の人がいるような気がしないでもない。っというか、うる覚えだったからあまり記憶に残っていないと言った方が正しい。


「えっと、私はどうすることも出来ないよ」


 馬車が襲われているからと言って正義感を振りまいて、助けに入るのは勇者とか、戦う能力のある人にお願いしたい。私には無理だ。


 ジュウロウザが右手を前に突き出して、指で何かを弾いた。

 すると、ゴブリンの一体が倒れた!え?何をした?


「キトウさん。何をしました?」


 私は恐る恐るジュウロウザを伺い見る。


「ああ、このままでは刀を抜けないから、小石を弾き飛ばした。こうやって」


 ジュウロウザはそう言って、小石を見せ指で弾いた。また、一体のゴブリンが倒れる。

 お、恐ろしい。いや、リアンよりステータスが高いのは理解していたけど。私、ここに居て大丈夫?そのうち、腕が無くなっていたりしない?


「キトウさん。その力を私に向けないでくださいね」


 これは言っておかねばならない。私なんて、そのゴブリンより弱いのだから。


「モナ殿。普通は人には攻撃しない」


 そう言いながらも、ジュウロウザは次々にゴブリンを屠っていき、最後の一体は護衛の冒険者の人の手によって倒された。


「ですが、手を繋いだだけで骨が折れたり、関節が外れたりしたのですから、ありえるかもしれないじゃないですか。私なんて簡単に死んじゃいますからね」


「ルード殿から、幼児並の体力しかないと聞いている。だから、気をつけているから、大丈夫だ。」


 ルード!ひな鳥の次は幼児並って!否定はしないけど····。しないけれど、なんか人から聞かされると、私は駄目人間だと思わされてしまう。


「お!お客さんたちだったのか!」


 冒険者の人が上を仰ぎ見ながら声を掛けてきた。確か、リーダのサナトスっていう名前だったか?

 しかし、ラ○ウ仕様の馬だからね。成人男性からしても、首が痛いほど上を向かないと駄目だね。


「助かった。本当に午前中から魔物に襲われっぱなしだったんだ。本当に最近は多くて困るな。時間が遅れているから、もう行かないと、本当に助かった」


 そう言って慌ててサナトスが馬車の方に向かって行き、馬に乗って出発をした。

 今、思ったけど殆ど全力疾走で駆けているじゃない。それは乗り心地は悪いよ。


 でも、おかしな事を言っていたな。


「魔物に襲われ続けている?」


 私は首を傾げて呟く。魔物なんてさっき見たものだけだった。それも、襲われていたのを見ただけで、村を出てから一度も魔物に遭遇なんてしていない。まぁ、元々村の周りは弱い魔物ばかりだから気にする必要もないけど····。


「馬竜がいるから襲われていない?」


「いや、そこはモナ殿がいるからだろう」


「え?私?」


 私はジュウロウザを仰ぎ見る。馬竜がゆっくりと動き出した。


「モナ殿のお陰で、俺は刀を振らずにこの数日を過ごしている。今まではありえないことだ」


 ああ、ジュウロウザはクラッシャーだからね。しかし、アイテムとしては存在していたけど、私は別に魔物避けなんて持ってはいない。

 となると、LUK ∞ が魔物を避けているということになってしまう。それはそれで、おかしいような気がするな。それなら、リアン避けをしてくれてもよかったのでは?


「そうなのかな?それにしても、魔物の死骸はこのまま?」


 通り過ぎていく地面に倒れているゴブリンの死骸をみて言う。


「ゴブリンからは素材が取れないから、大抵このままだ」


 いい素材が取れるかどうかの問題なんだ。でも、放置した死骸って不衛生だよね。それに魔物の死骸を食べる魔物っていないのだろうか。


「ふーん。てっきり、魔物の死骸を食べにくる魔物がいて、街道で襲われたとかになるのかと思っていたのですけど、そのうち死骸は消え去るってことなんですね」


「え?魔物が魔物を食べる?」


 あ、魔物は食物連鎖の中には入らないのか。でも、そうなると魔物は何を食べているんだろう。


「この馬竜ってその辺の魔物を食べるって聞いたから、魔物も魔物を食べるのかと思っただけです。気にしないでください」


 私って、世間知らずだったんだ。恥ずかしいな。



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