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29 美味しいものは正義

「モナ殿は危機感というものが、足りないように思えるのだが?」


 馬竜に騎乗して揺られながら景色を見ていると、ジュウロウザからそんな言葉が降ってきた。

 横目で斜め上を見る。私は、ジュウロウザに支えられながら、揺られている。

 危機感あるよ。リアンに対してだけど。


 他は?と問われれば、過去の記憶に基づく影響が大きいと言わざるえない。はっきり言って私はこの世界をゲームでしか知らないのだ。

 私の世界とは、村と隣町が私の世界のすべてだったのだ。


 拡張収納付きの鞄を持っているだけで攫われるなんて知らなかった。ゲームでは中盤で漸く手に入れられるアイテムでとても重宝した記憶しかないのだ。


「私の人生計画で、遠出をするという選択肢はありませんでしたので、足りないかもしれないですね」


 そう、私は私のクズステータスを一番理解できているのだ。旅に出るという人生計画は全くなかった。

 リアンに旅の仲間に求められても、断る気まんまんだった。『私のステータスわかっているよね』と言えば引かざるおえない。


「······選択肢はなかったのか。街で言えなかった事を説明するとだな」


 ジュウロウザから凄く間を置かれれて、話をされた。なかったよ。そんな選択肢は。


「モナ殿は見た目が良いことに自覚はあるか?」


 なんか変な質問をされた。見た目?まぁ、ゲームの幼馴染みヒロインに設定されているぐらいだから、見た目はいいだろうね。しかし、私から言わせると、結婚式にはでられなかったが、今日結婚するリリーの方が美人だ。ゆるふわの金髪に澄んだ空の様な青い瞳。儚げに微笑む姿はまさに天使!いや、女神と言っていいぐらいだ。なぜ、キールを選んだのかわからないぐらい美人だ。

 だから、私は答える。


「私は普通だと思うけど?」


 すると、斜め上からまた、ため息が降ってきた。


「プルム村の人たちは皆が見た目が良いから、わからないかもしれないが、モナ殿は美しい」


「ふぇ?」


 そんな事、前の人生を合わせても初めて言われた。いや、可愛いは言われることはある。リアンなんかはウザいぐらいに可愛いと言ってくる。一度、リアンにはリピート機能が付いているのではと疑ったぐらいだった。


「見た目のいい人を攫って売買する闇組織が世の中には存在するのだ」


「ゔぇ?」


 人を売買するだって!そんな物がこの世界にはあるの!この世界、物騒すぎるんだけど?


「ルード殿が言っていたが、12歳にならないと、村を出てはいけないという決まりがあるのは、自分の身が守れない子供をそういう組織から守るためでもあるのではないのだろうか」


 そ、そうなの?確かに美人の人は多い村だから、そんな闇組織に存在を知られれば攫われそうだ。


「だから、モナ殿も一人でふらふらしないで欲しい」


 私は思いっきり首を縦に振る。私なんて絶対に捕まったら逃げられない。やっぱり、王都に行くものじゃなかったのかもしれない。


 でも、こうして馬竜に揺られて王都を目指してはいるが、私の目に映る世界は長閑な平和な世界に思えてくる。


 本当に魔王というものがいるのだろうか。

 本当に魔物の活動が活発になって人々の生活を脅かしているのだろうか。

 本当にこの馬竜ではなければならなかったのだろうか。モフモフじゃ駄目だったのだろうか。

 モフモフ。未だに私の心残りだ。




 お昼休憩だ。念願のお昼休憩だ。

 見通しのよい河原で昼食を取ることになった。馬竜はその間は放し飼いにしておくらしい。自分で勝手に餌を狩ってきて食べるようだ。やはり、肉食だった。


 そして、私は先程買った食材と調理器具を鞄から取り出す。この拡張収納の鞄はやはり便利だ。



 鍋を取り出して中を見る。その中には肉の塊が水の中に沈んでいた。売っているお肉は傷まないように、塩漬けの肉しかなかったのだ。

 その肉の端をナイフで切って魔道コンロで熱していたフライパンで焼いて、食べてみる。豚肉に近い味だ。しかし、まだ塩味が強い。本当なら、流水で塩を抜くべきなのだろうが、流石に川の水に漬け込むのは抵抗がある。塩を控えればいいか。


 その肉をスライスして玉ねぎと一緒に炒めて、私が持参していた調味料の一つ、ケチャップで味付けする。

 硬そうなパンをスライスして、魔道コンロに網を敷いて炙っておき、レタスをクリーンで綺麗にして千切る。

 そして、パン、レタス、肉、マヨネーズ、パンの順でサンドして出来上がりだ。


 簡単だが、保存食より美味しいはず。

 いつも、遠出をするときに弁当と一緒に持ち歩いている調味料があって良かった。昨日は使わなかったけど、いつもなら、リアンがマヨネーズ増々だとか、ケチャップ増々だとかにして食べるから、必要だったのだ。


 サンドイッチを食べやすい大きさである半分に切って10個出来上がったので、そのうち7個をジュウロウザに差し出し、残りの3個を私の取皿に分けた。


 一口パクリと食べる。思ったよりもお肉の旨味がケチャップと合っている。それに塩を入れなくて正解だ。ちょうどいい塩梅だ。マヨネーズがマイルドに味を整えてくれている。美味しい。

 やっぱり、美味しいものは正義だ!



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