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27 世紀末的なお馬様

「この馬竜は丈夫で力も強いので、お買い得ですよ。普通の馬と同じで騎乗にも馬車を引くにも適してますよ」


 店の店主が、この馬竜を勧めて来る。何故だ。檻の中では多種多様な騎獣がいるのにだ。

 ジュウロウザが騎獣が欲しいと言っただけで、この騎獣を勧めてきたのだ。だから、思い切って聞いてみる。


「何故、この騎獣を勧めるのですか?他にも騎獣がたくさんいますよね」


 私の質問に店主は狼狽えたあと、項垂れて答えた。


「実は、珍しい馬竜を購入したのはいいのですが、気性が荒くて手を焼いていたのです。それが、お客様がいらしてから急に大人しくなりまして·····」


 この際、売りつけようとしたのか。酷いな。コレ、ジュウロウザが強すぎるから、大人しくしているのでは?

 しかし、何故私の目の前にいるのだろう?これ程大きいと自力で乗れないよ。黒○号って呼んじゃうよ。


「試し乗りはできるか?」


 え?ジュウロウザ、コレにするの?コレどう見てもラ○ウ専用だよ。赤い鱗なら呂○奉先専用だよ。


「裏に乗馬場がありますよ」


 これはペットショップでよく行われる手法ではないのか?

 ゲージから出して抱っこできますよと言われ、抱っこしてしまえば飼いたくなる衝動に襲われてしまう怖ろしい現象が起きるのだ。


 ジュウロウザに促され裏手に誘導される。店主は馬竜を連れてきて鞍を付け出した。


「キトウさん。流石にアレは大き過ぎませんか?」


 鞍を付けられている馬竜を見る。遠目から見ても大きい。


「モナ殿。馬竜ともなれば弱い魔物なら蹴飛ばして進める。そんなに速度を出せないのなら、あれぐらいの騎獣は必要だ」


 あ、私の所為?魔物に追いつかれない速さで進むのなら問題ないけど、ゆっくり進むのなら厳つい騎獣が必要ってこと?


 はぁ。私のクズステータスを補うために必要なオプションと思って、我慢するしかないのか。出来れば、モフモフが良かった。モフモフ。あの檻の中にたくさん居たのにな。


 私が遠い目をしていると、馬竜に鞍とハミを付けられ、手綱を引きながら店主がやってきた。そのハミ、噛み切られないのだろうか。


 うっ。側で見るとやはり凄い迫力だ。先程は気が付かなかったが、尻尾は毛に覆われているわけではなく、鱗に覆われていた。それも太く長くトカゲのような尻尾だった。絶対に後ろからは近づかないでおこう。


 で、私はどうやってこれに乗ればいいの?この馬竜の背は私の頭の位置にあるのだけど?やっぱ大きすぎるのではないのだろうか。


「モナ殿。失礼する」


 ジュウロウザからそう声を掛けられたかと思うと、抱えられ、そのまま馬上の人となった。え?もしかして、ジュウロウザは私を抱えながらこの高さを飛べるわけ?


 しかし、高い。とてつもなく高い。正面ではなく横向きに座っているが、怖いものは怖い。それはそうだろう。私の頭の高さに座りその上から景色をみているのだ。


 その座っているモノが動き出した。乗馬はしたことはないが、揺れることは知っている。·····ん?思ったより揺れない?あの馬車よりはいい。


「これなら大丈夫かも?」


「それは良かった」


 上から、ほっとため息が聞こえた。やはり、クズステータスの私が大丈夫かどうかと言うことが問題だったのだろう。


 ジュウロウザに抱えられ地面に降り立ったが、私って騎獣にすらまともに乗ることができないのか。いや、わかってはいたことだけど、情けないな。


「この馬竜はいくらだ?馬具一式も付けてほしいのだが」


 ジュウロウザが店主に値段の交渉を始めた。そして、私と馬竜が残された。

 いや、気性の荒い馬を残していかないでくれ、私は横目でチラリと馬竜を見る。うっ。目が合ってしまった。


「ええーと。よろしく?」


 私は馬竜に何を言っているのか。人の言葉なんてわかりはしないだろうに。


『キューィ』


 ん?なに、今の可愛らしい鳴き声は?


「もしかして返事をしてくれた?」


『キュ』


 な、なんて見た目に合わない鳴き声なのだ。可愛らしすぎだ。ア○ベのごま○ゃんと同じ声質なんて詐欺だ!


 黒い厳つい馬を見る。飼うとなったら名前が必要なのだろうけど、私の中では黒○号か赤○しか出てこない。しかし、あの鳴き声を聞いてしまったら、その上にごま○ゃんが被さってしまった。

 もう、頭の中がパニックだ。


「モナ殿」


 そんな事を考えているとジュウロウザが戻ってきた。


「馬竜に付ける馬具を新しいものにしてもらうから、他に必要な物を買いにいこう」


 確かに必要な物はある。調理器具だ。私は美味しいご飯が食べたい。その為には、野外で調理できる器材が必要なのだ。

 今日のお昼御飯はまともな物が食べたいな。


 そう心に決め、店が立ち並ぶ大通り向かって行った。


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