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26 瀕死だ

 着いた。やっと着いた。今日の宿泊する街エトマ。この街は中核都市となるため、昼にいたトリーアよりも大きな街だ。ゲームではここの地下ダンジョンでレベル上げに励んだ。

 そう、エトマはダンジョン都市なのだ。物資は豊富にあり、娯楽施設もある。冒険者が数多くいるので、仲間を集めるには王都の次にこのエトマが良かったのだ。


 そして、私はジュウロウザに抱えられていた。ゲームならHPが赤色になっている状態だ。


HP 5


 瀕死だ。もう、ベッドに埋もれたい。ゲームのモナはよくリアンの仲間になって旅ができたものだと関心する。


 私の状態に他の乗客が心配してくれて、いろんな物をくれたのだけど、お婆さん、馬車に酔っているわけじゃないよ。お姉さん、お腹が空いているわけじゃないよ。

 ニニャ。トイレ我慢しているわけじゃないから!ニニャは連れ合いの人に頭を叩かれていた。


 ジュウロウザは途中休憩のときに御者の人に次の街までにすると言ってくれていたようだった。なので、他の乗客の人にお礼を言って、その場を後にした。

 その時に、『昼から魔物の襲撃がなくて思ったより早くついたな』と護衛の冒険者の話し声が聞こえてきた。

 いつもは魔物に襲われているのか。


「モナ殿。食事はどうする?」


 食べる元気はないけど、食べないと駄目なことはわかる。できれば、ホテルで部屋食を食べてそのまま寝たい。


「宿の部屋で食べれないかな?多分、食べたらそのまま寝ると思う」


 既に意識が朦朧だ。人のざわめき。店に呼び込む声。村では感じられない外灯の明かり。

 過去の記憶がフラッシュバックする。

 何もかもが物で溢れた国。分刻みに時間に追われていた日々。満たされてもいたが、人間関係が希薄な日常。


“今更何を思い出すことがある”


 過去で使っていた言葉が思わずこぼれ出た。


「モナ殿。どうかしたか?」


「何でもない」


 それだけ言って、私は再び眠りの海に沈んで行った。




 翌朝、空は気持ちのいいぐらい快晴だった。私の心は曇天だ。

 昨日の夜はジュウロウザに起こされて、食べ物を詰め込んで、そのまま意識がぶっ飛んだから、HPは30に戻っていた。


 何が、私の気持ちを塞いでいるかと言えば、お風呂に入りたい。なんか、髪が凄く粉っぽい。そして、この宿に風呂なんてものは付いてない。いや、これは私のわがままだ。今日の宿は絶対に風呂のあるところに泊まるんだからね!仕方がなく、生活魔術のクリーンで我慢をした。


 で、移動手段なんだけど、ジュウロウザは騎獣を勧めてきた。まぁ、こうなってくると騎獣か歩きかの選択肢しかなくなるのだけど、私のクズ具合を嘗めてもらっては困る。


「キトウさん。私はまともに騎獣に乗れませんよ。途中で落ちること確実です。それに騎獣を買っても家で飼育できません。ニワトリぐらいなら問題ないですが、大きすぎます」


 騎獣となれば、それ用の騎獣舎が必要になってくる。最後まで飼育できないモノは買ってはいけません。


「それにあまり早く王都に着きすぎても困るのです」


 リアンと鉢合わせは勘弁してもらいたい。そう思いながら、宿で出された朝食を見る。はぁ、やっぱり美味しくないな。外の食事は私には合わない。

 このスープ塩気が多すぎる。パンのもそもそ感が酷い。


 あまり手が進まない朝食も泊まっていた部屋で取っている。私がいつ起きるかわからなかったから、宿の人にジュウロウザが朝食も部屋で食べれるように頼んでいてくれたらしい。

 はぁ、この肉硬すぎ。それに塩気が多すぎだ。保存食か何かか?

 唯一美味しいのが、オレンジのような見た目で中はいちじくの様な果肉が詰まった果物だ。


「どういう騎獣がいいかは、騎獣を見て決めればいいし、休憩を入れながら行けば、時間の調整はできるはずだ。村での飼育はなんとかなるんじゃないのか?」


 ジュウロウザがこの美味しくない朝食を詰め込みながらそう言ってくるが、飼育がなんとかなるって、いい加減すぎないか?

 確かに外に行っていた人たちが戻って来るときは、騎獣に乗って戻ってくるので、普段空いている騎獣舎は存在する。もしかして、それの事を言っているのか?


「はぁ。騎獣で動くしか選択肢が無いことぐらいわかっていますよ。路線馬車に乗るだけで、これだけキトウさんにご迷惑をお掛けしているのです」


「いや、迷惑を掛けているのは俺も言えることだ」


 ええ、朝起きると、例のステータスがマイナス100万になっている事に変わりがないので、今も私とジュウロウザは隣に座って食べている。

 この朝起きると元に戻っているのはなんとかならないのだろうか。しかし、私の作った腕輪さえ一過性のものでしかないので、お手上げだ。






 私の目の前には鱗をまとった馬がいる。ここは騎獣を売買している店の一つだ。このエトマの街は多種多様な店がある。その中でゲームでよく利用していた店を訪れたのだ。本当にゲームと同じ位置に店があった。

 実はゲームではここに竜の卵が売っていた。それで、卵を買ってドラゴンを育ててとある山頂の神殿を目指すというイベントがあるのだ。


 この店なら何かいい騎獣がいそうな気がしたので来てみたのだけど、世紀末の某登場人物の馬の様に厳つく、それに加え上下に4本の牙が口からはみ出ており、硬そうな黒い鱗を纏っているのだ。絶対に肉食だよね。



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