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23 もうヤバイです

 お弁当の方に視線を向ければ、私が2つを食べている間に6つ入っていたサンドイッチが無くなっていた。6つじゃ足りなかったのか。

 仕方がなく、私の2つを分けてあげた。


 食べ終わった頃に最後の一人が乗って来た。浅葱色の外套を羽織った人物が慌てて客車に乗り込んできて、転けた。


 その時フードが外れ、青い髪がこぼれ落ちた。そして、猫耳が!

 ああ、どう見ても盗賊のニニャだ。盗賊のくせにドジっ子。何もないところでよく転ぶ。獣人の癖にその身体能力が何もいかせていないのだ。

 何故ここにいるのだろう?


 そして、おでこを擦りながらムクリと起きたニニャは奥に入っていき、大量の荷物を持った人物の方に向かって行った。そこで、何かお小言を貰っていた。

 どうやら、一番奥の人物と連れ合いだったようだ。


「おう。やっと揃ったか」


 ガタイのいい冒険者風の男性がニニャの後ろから入って来て、入口付近に座っている私たちに視線を向ける。


「お前たちか、トリーアから乗ってきたヤツは。俺はこの馬車の護衛を任されている『エスターテ』のリーダのサナトスだ。よろしくな」


「ああ」


 私の代わりにジュウロウザが答えた。実は客車に入る前にジュウロウザから言われたのだ。人前ではフードを深くかぶる事と人とは話さない事を約束された。

 理由を聞けば、私が世間知らずだからと言われたのだ。

 う、言われれば今までも村の人以外のとの対応はリアンがしてくれていた。私はそんなに世間知らずなのだろうか。


 そして、馬車は動き出し、トリーアの町を出発をした。






 嘗めていた。私はこの世界の道路事情を完璧に嘗めていた。整備されているはずの道の凸凹が酷い。日本のアスファルト舗装とまではいかないまでも、それなりに整備がされていると思っていた。


 いや、確かに村からトリーアの町までは舗装がされていない道なき道を行き来しているけど、人の歩く速度で荷馬車を走らせるから問題がなかったわけで、馬?角が3本生えた馬。その馬が引く速度はリザードとは比べ物にならず、速い。速いということは、振動も酷いのだ。穴ぼこがあろうが、突き出た石があろうがお構いなしに駆けて行く。


 この客車にスプリングは効いていないのか!お尻が割れそうだ。いや、割れているけど。お尻の下に衣類が入ったカバンを敷いているけど、あまり意味が無い気がする。


 それよりも、問題は私の目に映っているものだ。私のHPが徐々に減っているのだ。特に突き上げる振動があるとHPが2も減っている。たかが“2p”減ったと思っているかもしれないが、もともとHP30しかないのだ。

 そして、今現在HP19になってしまった。


 これ以上は流石にやばい、トリーアの町を出て30分足らずで、この有り様だ。予定では3時間運行して、騎獣の休息の為30分休憩してから、後2時間運行して本日宿泊の街に着く予定なのだが、その前に私が死にそうだ。


 馬車を降りる?いや、私が王都まで自力で歩けるとは思えない。

 ぐっ。

 絶対に今、宙に浮いたよね。なんでこれで皆平気な顔をしているわけ?



 ああ、とうとうHPが半分の15になってしまった。ばぁちゃんが作った体力回復薬飲む?いや、これ如きで飲むなんて勿体無い。うー。こんな事で私の命の危機が訪れるなんて!


 私は隣のジュウロウザの腕を掴んで、横を仰ぎ見て、小声で話しかける。


「キトウさん。もうヤバイです」


「モナ殿。何かあったのか?」


 なぜか驚いた表情をしたジュウロウザが私を見た。


「この馬車。私の体力を削って来るんです。もう、HP10しか残ってないです」


「え?」


 目を丸くするジュウロウザ。そうだよね。普通は馬車に乗っただけで、死にかけないよね。

 背に腹は代えられない。ばぁちゃんが作った体力回復薬を腰に付けているカバンから取り出したところで、ジュウロウザから声を掛けられた。


「モナ殿。失礼する」


 すると体が浮き、着地した。うん、いや、確かに振動衝撃は緩和されたよ。でもね。私の精神的負担がかなり掛かってくるのだけど?


 ええ、今の私はジュウロウザの膝の上にいます。子供の様に抱えられています。


 くっ!しかし、HPが8にまで下がってしまった私には選択肢はないのだろう。本当にないのか?

 取り敢えず、ばぁちゃんの体力回復薬を飲む。これは私専用に作ってくれたものだ。それは、普通の体力回復薬ではキツ過ぎるらしい。だから、ばぁちゃんから外で買った物は絶対に飲まないように言われているのだ。


 ただ、この薬の難点は非常に眠くなるということだ。もう、まぶたが半分落ち掛けている。


「キトウさん。少し寝ます」


 そう言って私の意識は眠りの海に沈んで行った。



補足

 モナがシルワリザードは振動が少ないと思っていますが、それはリアンがなるべく平坦な場所を選んで進んで行ったからであって、道路事情の問題でも馬の問題でもありません。リアンの優しさですが、全くモナに伝わっていなかった。


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