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18 名前で呼べるほど仲がいいのね


「おまたせしました。いつもと同じ料金になります。これでよろしかったら、サインをお願いします」


 受付の女性は10万G(ガル)と書かれた用紙を提示してきたので、サインをする。

 そして、書いた依頼用紙を女性に差し出す。


「水路工事と水車の作成ですか?それもプルム村に所縁(ゆかり)のある人物指定で?·····あのー?成功報酬が書かれていないのですが?」


「出来高報酬で」


 そう言って私は魔石の革袋を女性の前に差し出す。女性は袋の中身を覗き込んで顔色を変えた。はっきり言えば総額1000万ぐらいの価値がある良質な魔石が袋いっぱいに入っているのだ。


「報酬は私が金額を記入しサインしたものをギルドが代わりに支払う。余ったものはキルドが手数料として受け取る。どうでしょうか?」


「も、もちろんそれで構いません。本当にこれを全てこちらで引き取って宜しいのでしょうか?」


 それはそうだろう。これだけの良質な魔石なら使いようはいくらでもある。しかし、村にあっても水を汲み上げる水車ぐらいでしか使い道がないのだ。


「ええ、いいですよ。それから、いつもどおり家族の冒険者に手紙や小包を届けてもらいたいのです」


 ジュウロウザに袋の方を出すように言って、カウンターの上においてもらう。家族に宛てた手紙や小包が20個ほど並べられた。


「あの、マーテル様の物は直接お渡しになられますか?」


「は?」


 意味がわからず女性を見るとある一点を指していた。振り向くと·····


「ぎゃ──────!!」


 私はジュウロウザを盾にして隠れる。


「モナちゃん酷いな」


「来るな!近寄るな!声をかけるな!」


 私の背後に立っていたのはゲームの青年姿のキラキラリアンだった。いや、正確にはリアンの父親のフェリオさんだ。リアンではないがその姿が瓜二つなのだ。

 私はこのフェリオさんを見て、この世界はゲームの世界なのではと気付かされたのだ。


「僕はリアンじゃないよ?」


「わかってる。フェリオさんだってわかっているけど、無理ー!!」


 肌の粟立ちが酷い。蕁麻疹並にブツブツだ。心づもりのない不意打ちは駄目だと思う。それに今はリアン対策を何も持っていない!私の心の平穏の為に必要不可欠な物だ。


「モナちゃん。フェリオが落ち込んじゃっているわよ」


 その声にジュウロウザの影から顔を出す。ミルクティー色の髪をポニーテールにし、新緑の瞳が私を困ったように見ている美人の女性は私の母親のシアだ。


「なんで母さんがここにいるの?」


「モナ。父さんもいるぞ」


 私が疑問を口にすると、母さんの横からクマが寄ってきた。いや、私の父親のテオだ。金髪に青い目の偉丈夫といえば聞こえはいいが、筋肉ムキムキのおっさんだ。それに大盾を背負っているので圧迫感が人一倍感じてしまう。


「いや、母さんがいれば、父さんがいるのはわかっている。で、もう少しフェリオさんを遠ざけてくれない?」


 クマがキラキライケメンを遠ざけてくれたことで、私がジュウロウザの影から出る。

 そして、私が作ったミサンガが入った箱とソフィーの手紙とばぁちゃんの傷薬が入った箱を母さんに片手で手渡した。

 もちろん、もう片方はジュウロウザの着物を掴んでいる。避難場所は確保して置かなければいけない。


「で、なんでここにいるの?一ヶ月前は海がある国にいるって手紙に書いてあったけど?」


「その前にモナちゃん。彼氏を紹介して!」


 何故、母さんが嬉しそうにそんな事を聞いて来るんだ?


「彼氏じゃないし。キトウ・ジュウロウザさん。私とルードを魔物から助けてもらったんだけど、キトウさん、母さんにステータス見せてもいいかな?」


「ああ、構わない」


「え?モナちゃん。名前で呼べるほど仲がいいのに彼氏じゃないの?」


 母さんは何を言っているのだろう。


「キトウは家名でしょ?違うの?」


 私はジュウロウザに尋ねる。ステータスでも鬼頭十郎左だったし、間違いはないはず。


「確かに鬼頭は家名だが、大陸にきてから十郎左の方で呼ばれる事が多いな」


「あら?そうだったの?勘違いしてごめんなさいね」


 あれ?もしかして私やらかした?ジュウロウザ呼びが普通だったの!


「じゃ、ステータスを視ればいいのね」


 母さんの瞳の色が新緑の色から金色に変わる。母さんは鷹の目という目を持っている。私ほどではないが、相手の基本ステータスぐらいは看破することができる。

 因みに母さんの武器はその目を使って攻撃出来る弓だ。もちろん私には弓の才能も全く無い。矢を放てば何故か後ろに飛んでいくのだ。


 母さんがステータスを視たことを確認すると私はジュウロウザから離れる。すると凄い勢いでLUKがマイナスに下がって行くのだ。


「え?······あ。······ち、チョット待って!」


 母さんはLUKが−1000を超えた時点でうろたえ出した。


「も、モナちゃん!と、止まらないの?これ止まらないの?」


 母さんが慌て出したことで、クマ····父さんが何があったのかとこちらに来た。それにつられてフェリオさんもこっちに!


 ひっ!


 私はジュウロウザの影に再び隠れる。するとLUKの−8252で止まり、数値は0に向かって行く。それに母さんからホッとため息が聞こえた。母さん甘いよ。これ−100万までいくから。


「ってな感じなので、くっついてるの!フェリオさんストップ!」

 


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