13 短時間の間に一体何が!
翌日も順調に進み、広大な麦畑を収穫を終えることができた。今晩は収穫祭だ。と言っても飲んで騒いで、子供は遅くまで起きててもいい日だ。
皆がジュウロウザに感謝の言葉を述べている。それはそうだろう、働き手の大人の男性は外の町に出稼ぎに行っており、老人と女子供だけでの収穫をするはずだったのだ。
私はそれを横目で見ながら、村長に話をする。この前手に入れた大きな魔石を持って。
「村長。ちょっといいですか?」
白髪の老人は私の姿を見て頬を緩ませる。
「お。モナ、ちょうど良かった。モナの彼氏にお礼を「彼氏じゃありませんから」」
変な勘違いをしないで欲しい。私は魔石を差し出して、用件を言う。
「これを代えに使って欲しい。そろそろ交換しなければならないでしょ?」
魔石を見た白髪の老人は目を見開き、笑いだした。
「ははは、流石モナだ。こんな上質な魔石を見つけて来るなんて、ありがたくもらっておくよ」
そう言って、村長は魔石を受け取った。
「それから、南側に用水路を引いていいかな?前から言っていたけど予算の算段がついたから、南側の水田を広げたいんだ」
「ああ、言っていたね。いいよ。モナのおかげで今年も麦の収穫は良かったからね」
よし、許可はもらえた。近い内に町に行って水路の工事の依頼をしよう。
「そうなると、水車も増やしてもらえるのか?」
ああ、そうかこの村に流れる川は小川の大きさしかなく雨が降らないと直ぐに干あがってしまう水量しかない。しかし、近くにある谷に流れる川の水量は膨大で、早々に枯れない水量はある。ということは、地下には膨大な水量があると言える。だから、地下水を汲み上げて農業用水にしているのだ。魔石を動力源にして水を汲み上げ、水路に流し込む。
もう一本用水路を増やすということは、水量が足りなくなるということだから、別のところから地下水を汲む必要があるといえる。
「いいよ。それも予算に入れておく」
これで、お米が好きなときに食べられるというのなら安いもの。
「モナの彼氏は「彼氏では、ありません」···いつまで、村にいてくれるのか?もう少しすると米の植え付けも大豆の種まきもあるだろ?」
人手がいると?しかし、今まで問題なくしてきたじゃないか。
「麦の収穫が終わるまでです」
「いや、そのもう少し「ないです」····はぁ」
なに?そのため息は。
私は村長に確認が取れたので、満足して踵を返す。そして、私はそのまま家に戻る。私にはやらねばならぬことがあるのだ。そう、ミサンガを作るという作業だ。
本当は両親に送る為に作ったのに、昨日と今日で全て使いきってしまった。
私の部屋に入り明かりを灯す。これも魔石を使ったランプだ。明かりの側で糸を編み込みミサンガを作る。両親が怪我なく無事でありますように、そう願いを込めながら編んでいく。
「······ちゃん」
あ、この色とこの色は合うかもしれない。
「·····ぇちゃん」
ふふふ、この色もいいかも。
「おねぇちゃん!」
ん?目の前には頬を膨らませたソフィーがいた。どうしたんだろう。外はまだ騒がしいから、村の人達は外で騒いでいると思うんだけど?
「ソフィー。どうしたの?」
「おねぇちゃん!直ぐにどっかに行っちゃったと思ったら家に戻っているし、ご飯食べたの?」
ああ、私がご飯を食べたが心配してくれたのか。
「食べたよ」
家にあったパンを作業しながらかじっていたから、空腹ではない。
「ソフィーも食べた?まだ、楽しんで来て良いんだよ。ルードもまだいるんでしょ?」
すると肉の塊を差し出された。その先を視線で追うと、ルードがお皿を持って立っている。
「いるけどさぁ。モナねぇちゃん、一言、言ってから戻ってよ。凄く探したんだよ」
あ、確かに誰にも言わずに戻ってきてしまった。
「ごめん。ごめん。父さんと母さんに渡すのを作っておきたかったんだ。ほら、全部使ってしまったし」
私は作りかけのミサンガを二人に見せる。すると、思ってもみない声が降ってきた。
「もしかして、ご両親に贈る物を俺が使ってしまったのか?」
何故かジュウロウザも私の部屋に····あー、私の目がどうかしてしまったのだろうか。頭痛が痛い。失礼。
目が疲れてしまったのかと目頭を指でグリグリと揉みほぐす。
この夜の祭りが始まるまでにLUK−10000に上げていたのだ。なのに私の目には、ゼロが六つに見える。この短時間の間に一体何が起こったというのだ!
「その前にキトウさん。その数値はどういうことですか?この二時間程で元に戻っているじゃないですか!」
「なぜだろうか?」
首を傾げながら私に聞くな!私の方が知りたいわ!
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