126 神の祝福(挿絵あり)
今日はリリーの結婚式。無事今年のお米の収穫を終え、収穫祭と結婚式を同時に開催するのだ。秋晴れの晴天の中、人々が食べ物を持ち寄り、リリーとキールの結婚式を祝う。
あれからメリーローズを連れて村に戻り、まずはフェリオさんにリアンの事を話した。
色々問題があったが、我が子の事だ。神妙な顔をしてリアンの母親のトゥーリさんとリアンの弟のルードには自分から話すと言ってくれた。
家に戻って母さんと父さんにも今回の事を報告した。二人はリアンの話は残念だと言っていたが、新たな守護者の話になると
「『アーテルの魔女』ですって!ちょっと相談に行ってくる」
と、毎度ながら何を相談しに行っているのか、わからない母さんが家を慌て出ていった。
ルナの言葉で気になったセイトの事を父さんに聞いてみると、メリーローズの方が詳しく教えてくれた。流石300年生きた魔女。
「今の聖人になって150年ぐらいになるのぅ」
は?150年?セイトは人じゃなくって長命な種族?
「まぁ。そう言えばそうじゃのぅ。守護者を持つ者は神の威を持つものじゃ。ただ人ではなかろう。その前の聖人は二人の守護者がおったから300年を生きたと言っておったか」
ん?
「今の聖人は守護者は一人じゃからあと50年ほどかのぅ」
なんだかおかしな事をメリーローズが言っている。
「それって、守護者によって生きる年数が変わって来ているってこと?」
「そうじゃ」
「じゃ!私は?」
「お主の生命と侍じゃろ?老兵に魔女じゃ。ドラゴンは何年生きるのかのぅ?」
え?それって千年単位?それは魂も歪むよ。私がうなだれている横でジュウロウザは『ずっと一緒にいられるな』なんて言っているが、それは母さんも慌てて相談しに行くよ!
なんてことがあったが、今ではそれも受け入れることにした。この村を見守っていけるならそれもいいかと。下手をするとエルドラードに絶滅させられるからね!
村では花嫁しか着ないドレスを着たリリーがキールに手を引かれ皆の前に出てきた。ドレスの色は好きな色を選ぶ事ができるのだけど、私がリリーにドレスは白でとゴリ押しをしたおかげで、少しふっくらした天使が私の前に現れた。
素晴らしい!トゥーリさん!最高!
フェリオさんからリアンの話を聞いたトゥーリさんは落ち込んでいたけど、今日は元気な姿を見せてくれた。
「リアンは神様の元に行ったのね」
トゥーリさんが少し寂しそうに話しかけてきたけど、私はかける言葉が見つからなかった。あんなリアンでもトゥーリさんの前ではいい子だったのだ。
この村では神への誓いというものはしない。ただ、村の人にお披露目をするというだけ。
ああ、英雄とエルフの姫様の祠には挨拶には行くけど。英雄の元があのエルドラードだとわかると頭をさげたくないなぁ。
「モナ」
キールに連れられたリリーが私の前にやってきた。キールは天使なリリーの側にいてとてもご機嫌だ。リアン殺害宣言をした同一人物だとは思われない。
「モナ。ありがとう。私が生きているのはモナのおかげ、そして、この新しい命が生まれるのもモナのおかげ」
そう言って、リリーは少しふっくらしたお腹を撫ぜる。
「ありがとう」
「私はリリーが幸せになってくれることが一番だからね。キールわかってると思うけど私のリリーを不幸にしたら許さないからね!」
「わかってる。モナ」
デレデレの顔で言われてもなぁ。そして、二人は私の足元にしゃがみ込んだ。いや、英雄とエルフの姫様に礼を取る姿勢になった。
リリー!お腹が!
「我らのこの生命は全て姫様のために」
あ゛?!
「私は姫って名前じゃないけど?それ、嫌いだって知っているよね?」
私が二人に低い声で言うと、二人して苦笑いをして私を見た。
「やっぱり、モナよね」
「やっぱ、モナだな」
「何が!」
「いいのよ」
「いいんだ」
二人して何がいいのだ!リリーとキールが立ち上がって声を揃えて言った。
「「モナがいいってこと」」
意味がわからないし!二人はクスクスと笑いながら、他の人の挨拶に行く。その二人の背中を見ながら、ふとモナの事が頭に浮かんだ。
ゲームのモナはリアンの言葉を信じながら、リリーの。そして、ソフィーの結婚式を見ていたのだろう。それに重ねたのは誰だったのか。モナに結婚をしようと言ったリアンだったのか。それとも会いたくて会いたくて仕方がなかった常闇の君か。
まぁ。私はモナではないから、彼女の心情なんてわからないけどね。
「モナ」
ジュウロウザに声を掛けられ隣にいるジュウロウザを仰ぎ見る。
「何?」
「春の収穫祭は俺たちの結婚式をしよう」
「ふぇ?」
「なんだか羨ましそうに二人を見ていただろう?」
「羨ましいっていうか。二人が幸せそうで良かったなって、それから、モナであった彼女は幾度この場に立ち会ったのだろうと。今は彼女も幸せだったらいいなって思っていたの」
「きっと幸せだろう。俺もモナを幸せにするから」
そう言ってジュウロウザは微笑んでくれた。ふふ、なら私もジュウロウザを幸せにしてあげよう。
「じゃ、私は和国に連れて行ってあげる。転移で行けば直ぐだよ」
そう言って私はジュウロウザに口付けをする。そう、マップスキルと転移スキルを用いれば和国に行ける。ゲームでは飛行船で和国に入れたもの。こっそり入国すれば良いのだ。
それで、ジュウロウザの故郷に行って本物のサクラを一緒に見よう。ジュウロウザがくれた五弁の花の髪飾りを着けて。
そう思っていると、空から何かが降ってきた。白い雪?花びら?いや、これは私の記憶の奥底にある風景。桜の花びらが空から舞い降りてきている。
『やっぱり萌ちゃんだよねぇ。魔王を討伐してくれる気になったんだね。門出を祝って君の好きな花を贈ってあげるよ。守護者も増えたから完璧だよね』
そんな声と共に降ってきた。村のみんなが何が起こったのかと空を見上げている。
「クソエルドラード!誰が魔王の討伐なんてするものか!降りてきて殴らせろ!」
そうして、私が魔王の討伐に行くのは別の話。
めでたしめでたし····って、幼児ステータスから脱却していないのに魔王討伐って、全くめでたくなーい!
数ある小説の中からこの作品を読んでいただきましてありがとうございました。
この作品を読んで読者様に楽しんでいただけているのであれば、嬉しいかぎりです。
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誤字脱字報告をしてくださいました読者様、ありがとうございます。大変申し訳なく。
いつもの倍投稿をでしたので、いつもより誤字脱字が多いと思います。チェックしていますが、すみません目が節穴で。
本当にここまで読んでいただきましてありがとうございました。
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誤字脱字だらけの面白くない駄文評価なら、駄文で申し訳なく。
挿絵【モナ・マーテル】
「ジュウロウザ、大好きだよ」
挿絵【鬼頭 十郎左】
「モナ。愛している」
(モナの緑目のイラストはツイッターの宣伝カードで描いています)
追伸
別のサイトで番外編か魔王編をと読者様からお声をいただきましたので、続きを書こうかとは思ってはいるのですが、小説家になろう様の読者様からの要望があれば、こちらも続きを載せさせていただきます。
白雲的にはきれいに着地できたので、このままでも良いかと····。
続きと言っても第1部で一旦閉じた『乙女ゲームの世界の話』の続きをこれから書くのでまだまだ先になりますが、それでもよろしければ····