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115 奇跡

「このルルドはね、光魔術がないと進めないぐらい、闇属性の魔物がはびこるところ。攻撃が通じない常闇の君がいるし、せめてレベルが65あるなら力技のゴリ押しで行けるかもしれないってところかな?この情報はルナから出てきた?」


「いや」


「今のリアンなら私が嘘を言っていない事がわかるでしょ?きっと私を刺して置いていった先の部屋の三つ首の大きな番犬(ケルベロス)にやられたんでしょ?あれは時々地獄の門を開いてくるから瞬殺しないときついものね」


 ああ、あれはエンドレスかと思うぐらい大変だった。地獄の門が開くと地獄の幽鬼共がわらわらと出てきて肝心のケルベロスに攻撃が届かないという事態に陥るのだ。あれ、一時間ぐらい戦闘していたんじゃないのかな?2回目のときはLv.70まで上げて総攻撃で瞬殺したよ。


「ああ」


 リアンは何でわかるんだという顔をしている。レベル16のルナを連れている時点で無謀だったんだよ。 


「ここで本題。ルナを元通りには出来ると思う。だけど、ルナは両親を探すのを諦めようとはしないだろうね。だから、リアンはルナを連れてさっさとロズワードに戻るってことを約束(・・)してくれるかな?それで、ルナ以外の言葉もきちんと聞く」


「わかった。約束(・・)する。約束を破れば針を千本飲まないといけないんだったよね」


 あ、それは私が教えた脅し文句だから、本気にしないで欲しい。まぁ、リアンならいいか。


 ジュウロウザにルナの側に下ろすように言ったけど····駄目?ジュウロウザに抱えられたままルナに近づいた。

 はぁ。本当に下半身がない。恐らく、ケルベロスに半分持っていかれたのだろう。


 私はルナの体に手をかざす。


「この者に『極の逆転』の奇跡を与え給え」


 そう、終末を変えることができる『極の逆転』。世界の時を戻すという大それたことは流石にできないだろうから、ルナの時間を巻き戻す。1時間ほどでいいだろう。このダンジョンに来たぐらいの時間だ。


 するとどうだろう。本当に時間が巻き戻ったかのように衣服をきちんと纏った姿のルナがそこに横たわっていた。顔色も生気が戻って来ており、胸も上下に動いている。


 私の目でルナの状態を視てみると、スタミナがほとんど無い状態だが、外見的には問題はない。


 ただ、私のスタミナもごっそり持っていかれた。頭がクラクラする。


「ジュウロウザ。少し寝る」


 その言葉を残して私の意識は眠りの海に没していった。



十郎左side


 モナが奇跡を起こした。死んだ人を、それも体が半分なくなってしまった者を元の状態に戻し、生き返らせたのだ。


 眠ってしまったモナを見て、シンセイに視線を向ける。シンセイもわかったと首を縦に振って頷いた。


「おい、リアンだったか、その娘を連れて、来い。さっさとこのダンジョンから出るぞ」


 リアンはルナという娘にすがりついて泣いている。


 モナを殺そうとしたくせに。


 モナが殺すなというから生かしているが、本当ならこの場で殺しておいてもよかったのだ。ダンジョンで死んだ者はダンジョンに取り込まれてしまうので、ここで始末してしまうのが一番よかったのだ。


 リアンはルナを抱きかかえて大人しく付いて来ている。


 はぁ。本当にモナが無事で良かった。本当に守りの結界を施しておいて良かった。実は側にいるのだから必要はないと思っていたのだ。



 モナが連れ去られた後、転移をしてこちらのダンジョンに着き、モナを探しに行こうと転移の部屋から出たところで、先程いた幼い子供と剣士の女が飛び込んできたのだ。


「やばいのじゃ。あれは流石にやばいのじゃ」


 そんな事を言って幼い子供が震えている。剣士の女も歯の根が合わないのか、ガチガチと音をさせ震えていた。


「そこの魔女よ。姫の姿が見えぬがどうしたのか答えよ」


 シンセイがモナの行方を聞き出そうとする。


「ひめ?お主、龍玄か」


 答えたのは魔女とよばれた幼い子供の方だった。あれが『アーテルの魔女』か人は見た目ではないということか。


「答えよ」


 シンセイが幼い子供の姿をした魔女に近寄っていく。それも殺気を纏いながら。


「ひっ!と、途中で置いていったのじゃ!しかし、我らは先に進めず、戻ってきたのじゃが、帰り道には居なかったのじゃ」


 目を左右にせわしなく動かしながら、話している。本当と嘘を織り交ぜてながら話しているのだろう。

 どの辺りが嘘だ?


「フォッフォッフォッ。爪の赤い女子(おなご)が姫を生贄にしたと言っておったが?」


 さらにシンセイの殺気が増した。


「あ、あ、あ·····」


 と言葉を漏らして幼い子供は崩れ落ちた。シンセイ。殺気を出しすぎだ。隣の剣士も見ていると同じ様に意識を飛ばしていた。

 はぁ、使えない。


「フォッフォッフォッ。恐らく、魔女と剣士だけが逃げ戻って来たのであろうな。今まで、気配も何も感じなかった空間に突如として現れたことを思うに、刻の魔術をまたしても使ったのであろう。となると、そこまで刻はたっておらぬはず。こちらじゃ」


 そう言って、シンセイの姿がかき消えた。俺もシンセイの後に続く。謎の直感というものが働いたのだろう。


 そして、モナが何故かリアンというものに剣を向けられているという間一髪のところに助けに入ることができたのだが、まさかそれ以前にモナを殺そうとしていたとは、やはり今殺すべきではないのだろうか。



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