表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/126

114 同じ想い

 向かってくる剣を私はただ見つめるしかなかった。私にこの攻撃に対抗するすべはない。

 ただ一つ。ジュウロウザが施してくれた星結界にかけるしかない。私が、受け止めないとノアールが傷ついてしまう。それだけは避けなければならない。



 その時、風が吹き抜けた。

 私の眼の前には振り下ろされるはずの剣を受け止めるモノが見える。


「モナ。遅くなってしまってすまない」


 ジュウロウザだ。ジュウロウザが来てくれた。

 リアンはジュウロウザの刀に押され、そのまま後ろにぶっ飛ばされた。そして、リアンが飛ばされた先には、白髪の老人が立っている。


「姫。守護者であるにも関わらず、またしても姫を危険に晒してしまった不甲斐ない老兵に、この者のとどめを与える(めい)をいただけませぬか?」


 シンセイ。再会早々に物騒なことを言わないで欲しい。私はそんな命令は言わないよ。


「リアンは勇者ですから、魔王を討伐してもらわないと困ります」


「では、腕の一本を」


「はぁ、駄目です」


 ルナルナ狂になってしまったリアンもリアンだけど、直ぐに殺そうとしないで欲しい。命は一つしかないのだから。


 ため息を吐いていると、体がふわりを浮いて私はジュウロウザに抱えられていた。


「怪我はないか?モナ」


 ジュウロウザの言葉に、ぽろりと目から涙がこぼれた。ぽろぽろと涙が止めどなく溢れ出てくる。

 私が泣いてしまったことで、ジュウロウザがオロオロしだす。


 私の心の中は先程のモナ(彼女)と同じ想いで溢れていた。


 会いたかった。

 側にいたい。

 愛おしい。


 なんだ。私、ジュウロウザのこと好きなんだ。私はジュウロウザの首に縋り付く。


「怖かったー!すっごく怖かった!こんな闇属性の魔物がいるダンジョンに連れて来られるし、常闇の君が現れるし!リアンに心臓に剣を突き立てられるし!「は?」リアンに私が生きているからいけないんだって、また殺されそうになるし「やっぱり殺そう」すっごく怖かったの!」


 私はジュウロウザに泣きついた。けど、ジュウロウザ、リアンを殺さないで欲しい。



 少し、落ち着いた。こんなに泣くだなんてじぃちゃんに行くなと引き止めたとき以来だ。こんなダンジョンの中でいつまでもいるわけにはいかない。


 しかし、なんで私は私の感情がわからなかったんだ?あまりにも心臓がドキドキするから、一時は病気かと疑ってばぁちゃんに相談してしまったじゃないか。今思えばすごく恥ずかしい。

 前世は20数年生きた経験があるのに自分の感情がわからないっておかしすぎだ!


「それで怪我はないのだな?」


 ジュウロウザが私の涙を拭いながら聞いてきた。


「ジュウロウザの結界のおかげで怪我はないよ」


「そうか、良かった。それでアレはどうするんだ?」


 ジュウロウザが視線だけでリアンを指し示した。そのリアンはというと、ルナにすがりついて泣いていた。ルナの何がリアンを依存させることになったのかはわからないが、大切ならルナの言葉だけを信じず情報収集をしとけよ。なら、こんなことにはならなかっただろうに。


 ジュウロウザに下ろすように言うが、首を横に振られてしまった。


「リアンのところに行きたいの」


「何故だ」


 何故って言われても、リアンにこんなところでつまずいて欲しくない。こんなところでつまずいてしまったら、私が16年かけてリアンをシバいてきた意味がないじゃないか!私のほうが怪我をすることが多かったけど。


「勇者は魔王を倒してもらわないと困るので」


「そうか。そうだよな。彼は神に選ばれた勇者だからな」


 ジュウロウザは納得してくれたのか、私を抱えたままリアンの側に行ってくれた。


「リアン。ルナを生き返らせたい?」


 私の言葉にリアンが反応し、ルナの亡骸にすがっていたリアンが顔を上げた。


「ルナは生き返るのか?」


「それはリアンの答え次第」


「何だ!モナ!俺は何を答えればいい!」


 リアンが立ち上がって詰め寄ってきた。ふぉ!血だらけで、動かない人の半分を持って近づかないで欲しい。できれば、ルナはその場に置いて欲しい。何がとは言わないけど、はみ出しているから!


「取り敢えず、ルナはそこに置いて欲しい」


「こんな冷たい床にか!」


「冷たかろうが置け!どちらにしろ置いてもらわないとなんともできない」


 私がそう言うと、リアンは渋々、暗いダンジョンの床にルナの遺骸を置いた。


「リアン。ルナはリアンの知らないことを沢山知っているかもしれない。けれど、そんなことは当たり前、村とその周辺しか行き来しないリアンに比べ、ルナの方が知識があるのは必然でしょ?だけど、その知識も人伝えだったりして、間違えもある。それはリアンが情報を集めて精査しなければならなかった」


 確かにルナはゲームでの知識はあった。でもそれは、ネットの情報も混じっていた。ネットの世界は嘘も混じっている。それが本当かどうかは自分で見極め無ければならない世界だ。鵜呑みにはしてはならない。


「私は言ったよね。そのレベルでは無理だと。最低レベル45にしないとロズワードは無理だと。ガーディアンと戦う体力がない時点で引き返すべきだった。ねぇ。何で進もうと決めたの?」


「···ルナが行こうと言ったから。大丈夫だと」


「このダンジョンに来たこともないルナの言葉を信じたんだね。私から言わせれば、この結果は予想できたよ。だってここのダンジョンの推奨レベルは60だもの」


 私の言葉にリアンが目を見開く。やっぱり知らなかったんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ