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111 モナである私と彼女

 扉が内側から開く。ギギギギという蝶番が軋む音が耳によく響く。


 ど、どういうこと!ここには鍵がないと入れないはず!私は闇待月なんて持っていない!

 なら、どうして開いた!


 常闇の君がその開いた扉の隙間から中に入っていく。


 だ、誰が開けた!元々鍵が掛かっていなかったというオチか!

 そ、それはそれで恐ろしい!


 扉が完全に開いた。その先は真っ暗で何も見えない。


「プゥ~」


 ノアールの怯えた鳴き声が聞こえる。私はあそこに招かれているのだろう。ここに来てばぁちゃんの言葉が降ってきたのだ。


『モナ。神はいつもモナの事を見ておる。忘れるでない』


 きっと鍵を開けたのは封じた神なのだろう。ノアールから私は降りる。


「プッ!」


「ノアール。ここで待っていてくれるかな?私は呼ばれているみたいだから」


 ノアールは必死に首を横に振って私の横にピタリと寄ってきた。これは何が何でも一緒に行くと言うことだろうか。こんなに震えているのに、無理しなくてもいいのに。 


 ノアールが離れる様子がないので、そのまま私は扉の先の光が届かない暗闇に入ることにした。はぁ、待っていてくれていいのに。



 中は何も見えない程真っ暗な闇に包まれている。だけど、どこに行けばいいのかはわかる。ただ、まっすぐに進めばいい。



 私は暗闇の中で足を止める。ここが目的地?


 ぽっと明かりが一つ灯った。もう一つ。もう一つと私を囲むように火の明かりが灯っていく。


 そして、私の前には先程の常闇の君が立っていた。いや、恐らく本体だ。ゲームでは醜悪な物体X的な姿だったが、これが本来の姿なのだろう。


「こんにちは」


 取り敢えず話しかけてみる。


 ·····


 返答がない!何しにここに呼んだんだ!用があるならさっさと言え!と、いうために私は口を開く。


「エルドラードは意地悪ね」


 は?いや。私はそんなことを言いたいわけじゃない!


「貴方をこんな所に封じ込めてしまうなんて」


 なに?この感情は?悲しみ、絶望、喜び、愛おしい。コレは私の感情では無い!誰だ!


「ふふふ。あまり怒らないで、少しだけ私に時間をちょうだいね。モナ()


 私でない私がそう言った。意味がわからないが、少し黙っておこう。


「ありがとう。ここにいる私は欠片でしかないから、何もできないわ。そう、何も」


 悲しみの感情が伝わってきた。何もできないか。


「貴方に謝りたかったの。ただ、その一言を言うために随分時間が掛かってしまったわ。何度も何度も転生するけれど、欠片である私は貴方の居場所すらわからず、一言を言うことが叶わなかったの。ごめんなさい。私が愚かだったわ」


 愚かと私は言った。目の前の常闇の君に向かって。ただ、その謝られた常闇の君は微動だにせず、私を見ている。


モナ()に感謝を。私にはこの場所がわからなかった。私ではここに来ることは適わなかった。ふふふ。これで、私の(うれ)いもなくなったわ。私の意思も世界の一部に還ることになるわね」


 ん?私が世界の一部に還る?じゃ、私は?


「ああ、大丈夫。モナ()モナ()の未来を歩めばいいわ。それに私は必要ないでしょ?」


 その言葉に常闇の君が動いた。私の腕を掴んだ。そして、私を突き放す。

 私の中から何かがズルリと抜けた気がした。


 私はそのまま外の方に体が引っ張られていく。そして、私の目には常闇の君に抱かれている私が映った。


 ああ、なんだ常闇の君も彼女のことが好きだったんじゃないか。

 転生を繰り返す程、常闇の君が好きだった(彼女)。謝りたかったと言っていても、心の中は会いたかった。愛おしい。側にいたい。という感情に満たされていた。

 常闇の君もさまよって、彼女のことを探していたのだろう。


 この世界を創造した神。ルギアとクレア。その名が刻まれたものは夏の神殿の【世界の書】しか存在しない。


 【世界の書】それは世界の成り立ちを記されたもの。

 創造主ルギア神と女神クレア神が世界を創り上げたことから記されていた。平和が世界を満たしていたが、ある時世界に亀裂が走り闇が溢れ出してきた。

 創造主ルギア神は世界の溢れた闇を己の内側に取り込み、闇に支配され、世界を壊し始めた。その闇に支配されたルギア神を主神エルドラードが封じ、女神クレアが亀裂を修復するために世界の一部となった。

 そう【世界の書】には記されていた。

 最後に“ルギア神を封じるために同じく名も封じることとした。この書以外の全てを破棄する”と。



 私とノアールは金の扉から放り出された。そして、再びガシャンと鍵がかかる音が重く響く。


 はぁ。とため息が出やた。なんで私の中に女神なんかがいるんだ!

 あり得ないだろ!


 パンパンパンパンパン


 何?近くで手を叩かれる音が聞こえる。私とノアールしか居ないはずの封印の間の前でだ。


 首を音がするほうに向ける。

 そこには、私と同じミルクティー色の髪に常闇の君と同じ金色の目をした人物が立っていた。



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