表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/126

110 常闇の君

 混乱が収まってきて、冷静になってきた。私、馬鹿だ。犠牲って何!私は普通にゲームでは通ってきたし!


 実はこの先の部屋に石の置物があるのだ。そちらの部屋からこちらの部屋には行けるけど、帰りが帰れないという状態になってしまうので、ここに石の置物を置いて行くというのが、ゲームの進め方だ。

 だけど、転移の間からはそんな置物はないので、ゲームをしていた誰かがここで仲間に別れを告げるを選択して、仲間を置いて先に進んだことをネットにあげていたのだろう。

 それをルナが勘違いをして私をここに置いて行ったと。で、ネットでは生贄だと叩かれていたので、そこもルナが勘違いする要因の一つとなったのだろうな。


 はぁ。帰るか。私は立ち上がろうとするが、先程の恐怖と安堵感でプルプルして足が上手く動かない。え?これは困る。


「ぷー!」


 ノアールが一鳴きして、私の腕から転げ落ちた。え?私の腕も限界だった?

 べちゃりと地面に落ちたノアールを拾おうとすると、ノアールが光に包まれた。


 何が起こった!


 光が収まると、大型犬程の大きさの四足歩行のドラゴンがいた。


「ノアール?」


「ぷーぷー」


 あ、その変な鳴き声はノアールだ。ノアールは自分の背を私に向けてぷーぷーと言ってくる。私に乗れと?


 まぁ、まともに歩けなさそうなので、遠慮なくノアールの背中に腰を下ろす。うん。なんだかベルーイが小さくなったみたいだ。


 あ、私が四角い台から降りたために扉が閉まった。まぁ、向こうからは入れるからいいよね。


「帰ろうか」


 私はノアールに言って、もと来た道を戻るように首を撫でた。う、うん。鱗だね。


 もと来た道を戻っている。だけど、なんだろう?心の奥がざわざわとざわめいているような。大切な何かを探しているような焦り?不安?いや、やっと見つけた安堵? 


 私の心が私で無いようなぐちゃぐちゃな感じがする。下を向くとぼとぼとと涙がこぼれいる。


 おかしい。これは何かおかしいと冷静な私と、見つけた見つけたと喜ぶ私がいる。お前は誰だ!と言っても私だ。


 はぁ。困った。


 帰りたい自分と、あちらに行きたいと言う自分がいる。


 あちらは駄目だという自分と、行かなければならないという自分がいる。



 ああー!!!

 わかったよ。行けばいいよね!


「ノアール。あっちの曲がり角を曲がってくれない?」


「ぷ?」


「うん。ちょっと、寄り道。」



 薄暗い道。すべての床と壁が黒い。ただ、淡く漂う光が空中に漂っているから暗闇ではない。そんな、道に入って行く。


 このダンジョンの魔物は、とても強い。それも闇属性だ。光の魔術があって初めて対抗できる。あとは、力技のゴリ押しだ。ここの推奨レベルは60。それも他の大陸で勇者の光を手に入れてからの方がいい。


 サブイベント【常闇の君】


 サブイベントだから別に攻略する必要はない。ただ、ここには聖剣エスパーダがあるのだ。


 『死して尚、封印せざる神のなれの果』を倒せば得られる。ただ、相手は神だ。再び眠りにつくだけで、神殺しになるわけではない。


 そう、私は『死して尚、封印せざる神のなれの果』が封じられた場所に向かっている。


 サブイベントの名でもある【常闇の君】。その『死して尚、封印せざる神のなれの果』の残滓のことだ。ダンジョン内でさまよっている残滓。何かを探しているのか、封じた神を呪ってさまよっているのかわからないが、攻撃は受けるのに【常闇の君】には攻撃が通らない。だから、逃げの一択なのだ。


 で、その【常闇の君】が私の後に付いてきているんだけど·····無言で何も音を立てず付いてくるって、ホラー映画ですか!


 横目でチラチラ見てみるけど、普通にイケメンなんだけど!!ゲームじゃ黒い影だったけど、現物は青白い肌に黒いダボッとした衣服を引きずるように纏い、床につく程の長い黒髪が蠢いているが、顔に生気がないだけで、イケメンだ。



 と、扉の前までそのまま来てしまった。ノアールはプルプル震えながら頑張って歩いてくれた。私が重くてごめんね。しかし、ノアールに首を振られた。

 え?付いてきた存在の方が嫌だったと。

 ああ、ホラーだもんね。


 目の間には金色の扉がある。黒い世界に光が差すように金色の扉だ。

 この扉は闇待月が無いと開かない。


 月。


 私は私を見下ろす常闇の君を見上げる。生気のない金色の目が私を見ている。月か。


 はぁ。しかし、私はここに来てどうしたかったのか自分でもわからないのだけど?どうすればいい?


 私は私を見下ろす常闇の君に話しかける。


「ねぇ。私に何か用でもあるの?」


 ····


 答えてくれるわけはないか。これはただの残滓だ。本体はこの扉の向こうに封じられている。


 ガチャッ


 異様に耳に響いた。何かの鍵が外れる音。ま、まさか!!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ