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109 転移装置(十郎左 side)

 モナが消えた。目は離してはなかった。ドロップした金色の針を見て、間違いはないとほっとした様子だった。


 あいつらだ。あの魔術師が奇妙な魔術を放ったことは確認した。だから、モナをかばおうと手を差し出したところで記憶が途切れている。

 おかしい。まるで、ぷっつりと切り取られたかのように記憶がない。


「将よ。落ち着かれるがよい。恐らくアーテルの魔女であろう。時を操ると耳にしたことがあるぞ」


 アーテルの魔女?時を操るだと!


「将。お主は姫に結界を施したのであろう?滅多なことでは姫は傷つかぬ。それにノアールもついておる。フォッフォッフォッ」


 シンセイも俺に落ち着くように言ってはいるが、相当怒っているようだ。短い付き合いだが、あの笑い方をするときは相当頭にきているときだとわかった。


「それにほれ。事情を知っていそうなのを見つけたであるぞ」


 そう言ってシンセイは姿を消し、再び目の前に現れた。確か、あのリアンという者の仲間の女だったな。


「おい、モナを何処にやった」


「ひっ!」


「将よ。そのように恐ろしげな顔で問うても答えてはくれぬぞ。のぅ。娘子よ。姫はどこぞに連れて行かれたのか、教えてくれぬか?くれぬのなら、その綺麗に塗られた赤い爪を引き抜いてやろうぞ」


「い、いやー!」


 シンセイも大概だろう。女がガタガタ震えている。


「ルルドよ!」


 女は叫ぶように答えた。


「なぜ、モナを連れて行った。もう、モナは必要ないだろう?」


「ヒッ!言っておくでありますが、これはルナが言っておりましたことよ。私は詳しくは知らな···」


「さっさと言え!」


「将よ、殺気が漏れておるぞ」


 言い方がまどろっこしいからだ!さっさと言えばいい!


「生贄でありますのヒッ····」


 女はそれだけを言って気絶をした。シンセイ、人のことが言えないぐらい殺気がもれているが?


「これはこれは、由々しき事態であるのぅ」


「ああ、これはぶっ殺すしかないな」


 俺とシンセイは同時に歩き出す。奥にある転移装置のところにだ。


 フォッフォッフォッとシンセイの笑いが先程から止まらない。



 転移装置。軽くだが、モナから説明は受けていた。




「え?転移装置に興味があるのですか?」


「興味というより、その金の針如きで動くのかという疑問だ」


 そう、ただ疑問だった。針があるだけで転移装置が動くのかという疑問。

 そんな疑問にモナは笑って答えた。


「そんなわけないですよ。ただ、ここの転移装置に足りない物が指針の針ということだけです。場所を示す針と次の転移が出来る時間を示す針」


「連続して転移ができない?」


「できませんよ。転移するために必要な魔力を溜めるために時間が必要ですから」


「ああ、その時間か」


「別の大陸ではその魔力を溜める魔石が必要だというところもありますからね」




 そう、問題が転移に必要な魔力だというのなら、魔石に俺の魔力をブチ込めばいい。


「それで、将よ。あと時間は如何ほどあるか?」


 時間?何のだ?

 

「時間とは?」


「姫の力で押さえつけられていた。お主の闇のことじゃ」


 ああ、そうかと思い出し、ステータスを開く。最近はそんなことを思うこともなかった。これも全てモナのおかげだ。


 ·····


「残り時間は0だ」


「それは急がねばならぬぞ」


 時が止まっていたという割には俺のLUKが-10000000に戻っていた。外を繋ぐ大きな扉の方からミシミシと音が響いてきた。何かが入って来ようとしているのだろう。


 転移装置の台の上に立つ。目の前には二つの円盤に金色の針が付いていた。一つは円盤に地名が書かれており、針はある一点を差していた。その名はルルド。やはりルルドに行ったことには間違いはないようだ。

 もう一つは赤と緑に分けられた円盤があり今は赤い色の所に針があった。これが恐らく時刻を示すものなのだろう。


 足元をみると人の頭部程の大きさの石が埋め込まれていた。かなり大きな魔石だ。これに魔力を溜めればいいのか。


 足元に向かって魔力を注いでいく。すると、赤と緑の円盤の針が動いた。やはりこれでいいのだろう。


 扉の方からの音が大きくなってきた。バキバキと破壊される音が響いてきた。


「わ、私も連れて行って欲しいであります!ここに居たら死んでしまうであります!」


 気絶していた女が扉からの音の大きさに目を覚ましたのだろう。そう言って、女は転移装置の台の上に乗ろうとしていた。


 死んでしまう?モナを生贄にしようとしているのにか?


「フォッフォッフォッ。それは娘子の都合であって、吾らの都合ではないのぅ」


「あ、でも。私このままだと死んでしまう」


 女は涙ながらに訴えるが、俺から言わせれば、だから?と問いたい。


『テンイデキマス。テンイシマスカ?』


 その無機質な声と共に扉が破壊された音が聞こえた。扉があったところから顔をのぞかせたモノはドラゴンだった。恐らく地竜だろう。


「あ。た、助けて」


 女は地竜を見て助けてと言ってきたが、何故、俺がお前を助けなければならない。と思ったが、ここが無事でなければ戻って来れないなと、ふと頭に過ぎった。それは困ったことになるだろう。


 俺は女の所に行く。すると女はほっとした表情になり手を差し出してきた。

 なんだ?俺がその手を取るとでも?モナとも手を繋いだこともないのに?


 女の手を蹴り上げ、転移台から離す。そして、刀に手を添え、ドラゴンに向かって抜き放つ。ドラゴン如きが邪魔をするな。


 崩れ落ちるドラゴンを視界に収めながら、俺とシンセイはルルドに向けて転移をした。


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