104 い、いつ落下するの!
先程、私が名を名乗ったように、名を名乗れば通常運行として使えるはずだ。どういう仕組みかはわからないが、声に交じる魔質を測りエルフ族の末裔と判断したのだろう。
ガーディアンは外敵に転移装置を使わせて転移させないようにするために存在していると思われる。
ゲームではガーディアンを倒すのにすごく苦労したのだ。それが戦わなくても···ん?ちょっと待て、名を名乗る?
なんか挑発のコマンドで勇者が怪しい文言を口にしていたような····確か····
『やあやあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそはリアン・マーテルなり!』
どこの歌舞伎役者だよ!源平合戦か!と、つっこんだ記憶が思い出されてきた。
しかし、名乗ってはいる。名乗ってはいるが挑発だ。ガーディアンが2体もいる場で誰が挑発を使うんだ!
うん。考えなかったことにしよう。どうせ、ガーディアンと戦うのはリアンたちだ。
扉が開いた先には、丸く壁に囲まれた空間があった。その床には冬の神殿で見たエレベーターの紋様が描かれている。
え?まさかこれも急降下するのだろうか。
先に黒いオプションを頭の上に乗せたシンセイが陣が描かれていた床の上に立ち、それに続きジュウロウザも陣の上にたった。
思わず体が固なる。
『トビラ・トジマス』
フリーホール第二弾だろうか。この待ち時間が途轍もなく嫌だ。
·····
·····
い、いつ落下するの!
『トウチャク。トビラ・ヒラキマス』
な、なんだって!いつ落下した?私、気絶していた?それとも不具合で扉が閉じて開いただけで、移動してないってオチ?
扉が開いた先は先程と全く異なる空間だった。薄暗く岩肌がむき出しの壁が目の前に広がっている。
うん。移動している。あれか!冬の神殿の方のエレベーターがおかしかったのか!それはそうだよね。あれは心臓に悪すぎる。
シンセイが警戒をしながらエレベーターの外に出た。
「何も居らぬぞ」
その言葉を聞いたジュウロウザが続いてエレベーターの空間から出ていく。すると背後からプッシューという音がし、振り返ると、ただの岩壁になっていた。
え?これ帰りわかる?
慌ててマップを開くと····く、黒い。今いる所しか地図に表れていない。ダンジョンだからか!地図をタップしてみても何も変わらない。代わりに別の表記が表れた。
【この場で転移は使えません】
なんだって!ダンジョンだからか!
「モナ、何かあったのか?」
「え?ちょっと気になって地図を開いたのですけど、ダンジョンだからなのか、今居る地点しか地図に表記されていなくて、転移も使えないと出ただけですので、たいしたことではないです」
私がそう言うとジュウロウザは何かを考える素振りをみせ、その後に私に手をかざした。
「結界は使えているから神の加護が使えないということではないようだ」
ジュウロウザは【星結界スキル】を私に使ったようだ。何かに包まれた感覚になったけど、目には何も見えない。
私のマップスキルが使えないのはダンジョンを自分の力で攻略しろという事なのだろう。言っておくけど自力って私には無理だからね!
「地図が使えなくても問題ないですよ。もう、転移装置がある扉が見えていますから」
私が指し示した方には上にあった建物と同じ白い石でできた、天井まである扉が固く閉ざされ存在していた。
その扉は淡く仄かに光を放っている。
私が示した方にシンセイを先頭にして進んでいく。ダンジョンというわりには、ここはエトマのダンジョンと違って空気が淀んでいない。
はぁ、よかった。あのなんだかよくわからない臭いって鼻の奥に残るんだよね。
扉の前に到着した私は大きな扉を見上げる。この扉の中に入ると2体のストーンゴーレムから攻撃を受けることになる。それもかなり巨大なゴーレム。
そのゴーレムの額にある石を壊せばいいのだけど、かなり高い位置にあるので、足を攻撃して倒れたとこに額を攻撃するということを繰り返して倒していくのだ。
しかし、何度も言うが私は戦えないのでレアアイテム要員として控えるのみ。
っていうか、リアンたちまだ来ていないのか?いつ来るんだろう。
「姫、テントの中で待つというのはいかがか?」
シンセイがそう提案してくれた。
それがいいかも。ここで突っ立っていてもしかたがないからね。
私がうなずき、外套の下にある鞄を表に出すと、シンセイが『失礼いたす』と言って私の横掛している鞄を開け、テントを出した。
いや、私を下ろしてよ。いつも言っているけど、何で外だとベルーイの上か、ジュウロウザに抱えられているままなの!そして、そのままテントの中に直行。過保護も大概だよね!
血を吐かれるのはもうごめんだって?
あれの元凶はリアンでしょうが!!