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102 マーテル

「あのそれでキトウさんが必要でないという話になるのですか?護衛の依頼はプルム村に帰ってきた時点で完了しているのではないのですか?」


 そもそも、あれは父さんとフェリオさんが私のクズステータスを心配して村と王都の往復の護衛の依頼だったはず。それが星貨5枚で依頼したと父さんから聞き出したのだ。あまりにもジュウロウザに旅費を支払ってもらったので確認したのだった。


「その後はシオン伯父さんに頼まれたのですよね」


 母さんからその後にシオン伯父さんのポケットマネーでジュウロウザに星貨10枚が追加で支払われたと聞いた。


 個人間の取引だ。他者の介入はされない。だから、交渉の決裂が入るとすれば、ジュウロウザとシオン伯父さんの間でのこと。それも、シュエーレン連峰から帰ってきたことで完了している。


「契約上は全て完了しているので、依頼破棄はできないですよ」


「え?先程のことは?」


 先程?ああ、ルナに言った事か!


「フェリオさんから『リューゲンが守護者なのは有名だからいいけど、ジューローザが守護者ってことは内緒だよー』と言われたので、外向きには護衛の依頼で行こうって決めましたよね?」


 だからルナに存在しない依頼の解約はできないし、依頼者が提示した4倍の解約金もルナに支払う能力はない。


「そもそも、あのリアンのパーティーメンバーに金がかかっているので、最初の依頼解約金すら払えないのは、わかってました。守護者であるキトウさんを外してダンジョンには潜りませんよ」


 恐らくとか多分という言葉ではなく、絶対にあのメンバーとダンジョン潜ることは無い。

 一番の理由はリアンだが、メンバーにも問題がある。


 あの胃袋ブラックホールの女剣士ルアンダだ。そのルアンダの食料確保だけでも無理がある。彼らは拡張機能が施された鞄を持っているように思えなかった。だから、常に食べ続けないルアンダは食料調達難しいダンジョンではかなり厳しいだろう。


 踊り子シュリーヌは回復も戦闘攻撃もできる万能型だが防御力が全く無く、直ぐに戦闘不能となる。回復がルナのみだとかなり厳しい。


 本当になんでこの二人をメンバーに加えたのだろう。見た目だろうか。


「そうだったな。表向きという事だった。てっきりモナ殿に捨てられるのかと」


 いや、だから拾ってないし。

 ジュウロウザの機嫌も戻ったので、シンセイを呼びに行くために、止めていた足を動かそうとすれば、ジュウロウザに抱き寄せられた。


「あの?」


 ただ、無言で抱きしめられた。これは私はどう対応すればいいのだろう。

 ·····お昼ご飯。

 シンセイー!戻ってきてこの状況をなんとかしてー!くっ。こんな時に仁の意というものは反応しないのか!


「キトウさん、おひr「十郎左だ」·····」


 え?いや、名前は知っておりますよ。


「あの者はリアンと呼ぶのだから、名前で呼んでくれてもいいだろう?」


 あ、そういうこと。別に構わないけど、突然どうしたのだろう。


「ジュウロウザさん「十郎左だ」····」


 えっとこれはどういうこと?発音が悪いということだろうか?


「あの?何が駄目です?言い方ですか?発音ですか?」


「駄目ではない。だが、守護者という立場は神人(カミト)より下だ。だから敬称は必要はない」


 まぁ、そうなんだけど、私は人の上に立つような人じゃない。上とか下とか決めるのは好きではない。


「守護者だからといって私より下って変だと思います。そうですね···」


 守護者とその対象者とはどういう存在なのだろうか。よくわからない。でも、シンセイもジュウロウザも以前から居たように村によく馴染んでいた。うん。そう。


「仲間というものを私はよく知りませんので、家族という言葉が一番しっくりくると思うのです。十郎左はどう思いますか?」


 村人の血をたどると英雄アドラと奇跡の姫ルトゥーナに行き着く。ということは、村というものは大きな家族だ。氏など意味をなさない。

 ルトゥーナ・マーテル。村で生まれた子供にはマーテルの名を頂く。奇跡の姫の子だという名だ。全てがルトゥーナの子だと。


 しかし、今度はきちんと発音してみたけど、どうだ!

 ニコリとジュウロウザに笑ってみせると、少し驚いたような表情をして、そのあと優しい笑顔を返された。


「そうだな。モナ」


 はう!

 心臓を鷲掴みされた上に、口から飛び出して来そうな衝動に襲われた。いや、頭に星が飛んでいる?100mを全力疾走したときの衝動?自分で自分の言っていることがわからない。

 私、壊れている?


___________


その頃の秦清


「姫から救助要請に答えて戻ってきてみたものの、これはのぅ」


 秦清の目には十郎左に抱きしめられながら、ニコリと笑ったまま固まっているモナの姿が映っている。


「何やら姫は混乱しておるのぅ。しかし、年寄が出しゃばれば将に怒られそうじゃ。どうしたものか」


 秦清は頭の上に乗っかっている黒い幼竜に話しかけるが、幼竜からは『ぷーぷー』という寝息だけが漏れ出ていた。



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