表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

変化する関係性2

サラ視点→リリー視点→フレッド視点です。

私は今、自分の部屋の窓辺に座っている。

どうやって帰ってきたのか全然覚えていない。


フレッドも話しかけてこなかったと思う。


はっきり言われた訳ではないが、フレッドは私に好意を持っていたようだ。


いつからだったんだろうか。

全然気付かなかったというか、、、思いもよらなかった。


私は貴族でフレッドは平民だが、昔ほど貴族と平民の結婚は珍しい話ではない。とくに私は兄妹の3番目だし、女だし、何かない限り家は継がないし、子爵である父が了承すれば可能だろう。


フレッドの言っていたパパとの約束の内容はわからないけど、きっと私との結婚に絡むことなのだろう。


その約束が果たされたら結婚は確実。

だから「予約」。


漠然と、いつかは誰かと結婚するんだろうと思っていた。


17なのに婚約者がおらず肩身が狭いと思っていたくせに、婚約でもなく幼馴染と結婚というこの状況についていけない。さらに、、、全然嬉しくない自分がいる。


何より、顔も知らない誰かとの政略結婚は想像できるのに、フレッドとの結婚は全然想像できないという異常事態だ。


むしろ周りをどんどん埋められていって身動きがとれなくなるような、そんな恐怖すら感じていた。



私、どうすればいいんだろう。


孤児院から帰ってきて、いつもと違う私の様子に、家族はすごく心配してたがそっとしておいてくれた。


今はその気持ちに甘えたい。



-----


夜。

領主邸の建つ、丘の中腹。


星がよく見えるそこに仰向けで寝転んでいる人影を確認し、リリーは近づいていった。



「あんたでしょ?私の可愛いサラにあんな顔させてるの」


「・・・すまん」


「何したのよ」


「キスした」


「サラの気持ちは確認したの?」


「・・・していない」


「どうして気持ちも確かめずにそんなことしたのよ?」


「・・・」


「サラを幸せにしたくて、あなたが仕事を頑張ってたことは知ってるけど、本人同士の気持ちも育てなきゃダメよって私何度も何度も言ったわよね?サラの幸せも条件なら、本人を置いてけぼりにしないでって」


「・・・そうだったな」


「言葉にしなきゃ。伝えなきゃ。ただ一緒にいるだけじゃ、恋人にはなれないのよ」


「・・・身に染みてる」


「私は、、、サラの味方よ」


「ああ。わかってる」



リリーは抜け殻のようなフレッドを置いて家に戻った。


-----ー


俺はなんて馬鹿なことをしたんだろう。


あんなに準備してきたのに。



幼い頃からサラの事が好きだった。


最初はサラの兄、セオドアと仲良くなった。

俺はよく領主邸に遊びに行っていた。


ある日、セオドアから妹だとリリーとサラを紹介された。その頃のサラはリリーの後ろをちょこまかとついていくような子だった。


よく笑い、家族が大好きで、負けず嫌いで、人前で泣くことに抵抗があるようなそんな女の子だった。



好意を自覚したのはもういつだったかわからない。

彼女の笑顔が何より好きだった。



3年前。

領主様に将来サラと結婚をさせて欲しいとお願いした。


俺たちが付き合っている訳ではない事を知っていた領主様に最初はやんわり断られた。


でも断られても諦めずに何度も通ってお願いしたら「家の事業を領地の中で1番にすること」「サラのことを貴族に嫁ぐより幸せにすること」を条件に認めると言われた時は本当に本当に嬉しかった。


すぐに親父に掛け合って、経営を引き継いだ。

突然で驚かれたけど『サラと結婚したいから』と言ったら、サラを気に入っている両親は大喜びだった。


それから俺は経営の猛勉強をして、スポンサーを探し、必死に事業を大きくした。


今度一番大きなパン工場が出来る。他の領地にも販路を拡げるためだ。稼働し、軌道に乗れば、漸くうちのパン屋はワトソン領一の事業になる。



あと少しだった。

本当にあと少しのところでサラにもたらされた仕事の紹介。


よりによって人気の病院勤務の治癒魔法師だ。

サラがこの話を受けて病院勤務を始めてしまったら、すぐに縁談が持ち込まれるだろう。


それが高位の貴族だったら?


俺は平民だ。

太刀打ちできない。



サラがいなくなってしまうかもしれない。



そんな気がして焦っていた時のローズばあさんの勘違い。



思わず「そうだ」と言ってしまった。


必死に堪えてきた気持ちは、一度溢れたら止められなかった。


勢いでキスまでしてしまった。


領主様との約束をチラつかせ、予約なんてまどろっこしい言葉まで使って半ば強制的にサラを自分の側に囲い込もうとした。



その行動は間違いだ。

ちゃんと好きになってもらう努力をするべきだった。

リリーに散々言われていたのに。


帰り道の馬車の中のサラは浮かれてなんてなかった。


リリーの言う通り「置いてけぼり」を食らったような顔をしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ