変化する関係性
「ちょっと、、、フレッド!!ねぇってば!」
フレッドは強く手を握ったまま私を見向きもせずに通りを進んでいく。大きさが明らかに違う手は握りつぶされてしまうようだった。
「っつ...い、痛いよ!」
「あっ、、ごめん!サラ」
やっと離された手は少し赤みを帯びていた。
「考え事をしてて、、その、ごめん。」
「ううん。さっきは助け舟出してくれてありがとう。」
「・・・仕事、断ってよかったのか?」
「うん。教会勤務は絶対に嫌だもの」
「教会勤務?病院勤務の話だったろ?」
「今まで言ってなかったんだけど、私、魔力量多めみたいなんだよね。だから魔法協会に登録したら教会勤務になる可能性があって教会勤務は拒否権がないから避けたくて」
フレッドに自身の魔力量の事を初めて話した。
頷きながら私の思いを最後まで聞いてくれた。
「それであんな顔してたのか」
「あんな顔って...考えてたのよ。あれでも」
「とりあえず笑顔で嫌がってるのはわかったからああしたけど、あれで良かったんだな」
「うん、どう断ろうかって思ってたから本当に助かった」
私はふとローズおばあちゃんと院長先生との最後のやり取りを思い出す。
「仕事の話を回避できたのは嬉しいけど、私、フレッドのお嫁さんで妊娠中になっちゃったね。どうしよっかな」
ハハっと私は自虐的に笑った。
次に会うとき、どんな顔して会えばいいんだろう?
下手な事をいって、また治癒魔法師の話がぶり返さないようにしなくちゃ、、、
うーんと唸る私を見たフレッドが言った。
「言い訳を考えてるのか?」
「そうよ?次に会うときまでに2人が納得できるものを考えなきゃ。まずは勘違いを訂正して」
「・・・しなくて良い」
「え?なに?」
「訂正しなくていい。本当にすればいいだろう」
ん?なんて?なんて言った?
今日の私の耳はおかしいのだろうか。
「えっと、、、それは?どういう」
「領主様との約束までもう少しなんだ」
「え?パパ?なんでパパ?」
「サラ」
フレッドの手が私の頬に触れ、顔が近づく。
口付けをされていることに気付いたのは数秒たってからだった。
「え?」
「本当に気付いてないの?俺の気持ち。リリーも、パーシーだって気付いてるのに」
「ふ、フレッド?なにして、、、え?、、、」
「予約だ。領主様との約束があるから今すぐは結婚出来ないけど覚えといてほしい」
「予約?」
完全に頭がパンクした。何が起こっているの?
幼馴染のフレッドにキスされて?
今すぐ結婚はできないけど予約された?
・・・フレッドって私のこと好きだったの?
ってか結婚?
フレッドと私、結婚するの?
あまりの展開にオロオロしている私をフレッドが後ろから抱きしめた。
「ひゃっ、なに!?」
「正面だともう一度キスしそうだから」
「私なにがなんだかわかってないんだけど」
「こっちも今すぐに本当にしたいけど、さすがに結婚後だな」
フレッドが後ろから私のお腹を触った。
「ひゃ!!!!」
「ここも予約。覚えといて」
フレッドは私の頭にキスを落として、帰るぞといい、乗り合いの馬車乗り場に向かってしまった。
私はただ小走りで着いていくしかなかった。