幼馴染の爆弾発言
この仕事を受けたら、魔法協会への登録は免れない。
魔力量を測定したら一発アウト。
教会勤務まっしぐらだ。
「ロ、ローズおばあちゃんは?こんな良い話、私には勿体無いよ。おばあちゃんだって治癒魔法使えるじゃない?まだまだ元気だしさ」
治癒魔法師に年齢制限はない。
ようやく捻り出した話をローズおばあちゃんに振るが見事に玉砕した。
「私の治癒魔法なんて、擦り傷や切傷を1日5人治せたらいいもんさ。骨折をあんなに早く治せるあんたの足元にも及ばないし、私が行ったら孫に大人しくしてろって叱られるさ」
あああ、、、墓穴だった。
だって治癒魔法で骨折を治すのに時間がかかるなんて、全然知らなかったんだもの。
治癒魔法は家にあった本で覚えた。師がいるわけでもなく、他の治癒魔師と交流もとってこなかった私は加減がわかっていなかったのだ。
ものの3分ほどで骨折を治したときのおばあちゃんの驚愕した顔は今でも忘れない。
頭を使え!回避しろ!何か良い断り文句を!
....と、頭の中をグルグルしていた私はきっと酷い顔をしていたんだと思う。
ローズおばあちゃんと院長先生に不思議そうに見つめられる中、フレッドが突然口を開いた。
「ローズばあさん。サラは仕事を探してないんだ。だから断る。ごめんよ。」
ド、、、ドストレートに断った。
そうか。ストレートに断る手があったね。
考え付かなかったよ。
「そうなのかい?でもあんた、まだ婚約者もいないんだろ?病院に勤務すれば嫁の貰い手も探しやすくなるよ?お給金もいいし、休みもしっかりしていて、サラの腕なら間違いなく雇ってもらえるのにいいのかい?」
嫁の貰い手!!高いお給金!!
たしかに病院勤務の治癒魔法師は人気職ゆえにモテる。
リリーほどの申し込みはこないだろうが、縁談には困らないだろう。婚約者のいない針の筵から脱出できる。
この誘惑には負けそう。
負けそうだけど、
でもそれは【病院勤務ならば】だ!
教会勤務確定の私には関係ない。
「うん。ごめんね、おばあちゃん。いい話だとは思うんだけど自信がないし・・・」
「推薦状の心配なら大丈夫よ?私がしっかり書くわ」
「院長先生もすみません...もったいないお話なのに」
ローズおばあちゃん、推薦状まで考えてくれていたんだ。
だから院長先生も同席だったのね。
仕事の紹介の際、教会職員の推薦状があると有利なのだ。
無くても問題ないが、あるに越した事はない。
私が教会勤務を避けたいってワガママをいっているだけのに、本当に申し訳ない。
あ、まずい。罪悪感で泣きそう。
早くこの場を立ち去りたい。
そう思っているとフレッドが私の手を握って椅子から引き上げた。
「ひゃっ」
「仕事は断るよ。ローズばあさんも院長先生も申し訳ないが話をおさめてくれ」
私が泣きそうなの察したであろうフレッドが話を切り上げてくれた。ありがとう、この場で泣かずに済みそう。
ホッとしていると、ローズおばあちゃんが突然とんでもない発言をして涙なんて跡形もなく引っ込んでしまった。
「もしかしてあんた達結婚するのかい?」
「「え?」」
「だって、サラの仕事の話なのにフレッドがそんなに止めるなんておかしいだろう?」
「そうねぇ。だってこんな良い話なのにね。サラの様子も普段と違って何か隠しているようだし・・・」
「あ、あの。それは・・・」
「サラ、もしかして妊娠でもしたのかい?」
「まぁまぁまぁそれなら納得ね。身重じゃ無理しないほうがいいものね」
ちょっと待って。
何故そんな話になったの!?
結婚!?フレッドと!?
ってか妊娠って!!!!
訂正しなきゃ、違うって言わなきゃ!
「ちがっ・・・・・」
「そうだよ」
フレッドが更にとんでもないことを言った。
え?
今、そうだよって言った?
「まぁー!!やっぱりそうなのね!おめでとう!」
「そういう事は早く言いなさいな。無理に勧めて悪かったね」
「俺たち失礼してもいいかな?」
「ええ、もちろん。また今度話を聞かせてね」
私は何がなんだかわからないまま、温かい目で見つめる2人を残し、フレッドに手を繋がれたまま孤児院を出た。
ロ:ローズおばあちゃん、イ:イザベラ院長
ロ:「フレッドはサラに想いを伝えてないのかい?」
イ:「そうなのよ。サラ、大困惑してたわね」
ロ:「これを機に伝えられるかねぇ」
イ:「あら?お仕事の依頼はカマかけだったの?」
ロ:「孫からの依頼は本当さ。サラが興味あるようなら紹介したよ。でも無理に勧めたかった訳じゃない」
イ:「病院勤務なんてしたら、サラは美人だから縁談なんてすぐに決まってしまうだろうしね。にしても、フレッドの顔、面白かったわー!同席をお願いして良かったー!」
実は勘違いなどしておらず、からかっただけの2人なのでした。