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令嬢という立場

孤児院までは乗合の馬車を使う。

丘を下りてすぐのフレッドの実家の近くで馬車に乗るのがいつものルートだ。



「サラちゃん!今日も孤児院かい?」


「おじさま!ええ、今日は読み書きを教えに行くの」



馬車を待っている間に、フレッドのお父さんに声をかけられた。



「やっぱりサラちゃんのとこだったか。あんなに慌てて仕事の指示を出して出て行くから何事かと思ったぞ」


「親父うるさい。顔もうるさい」



ニヤニヤと笑っているおじさまを不思議がっているとフレッドに後ろから耳を塞がれた。



「...え?なに?どうしたの?」


「サラはもう聞かなくていい」



耳を塞がれてしまえば諦めるしかないが気になる。



「(過保護なのに、本当にヘタレだな。我が息子ながら心配だよ。どこで育て方間違ったかなー)」


「(ほんとにうるさい。ほっといて)」


「(いい加減ちゃんと気持ちを伝えないとダメだぞ?)」


「(わかってるよ)」



気になるけどやっぱり聞こえないなぁーと思っていたら、到着した馬車に私は耳を塞がれたまま押し込まれた。


行者に孤児院で降りる旨をフレッドが伝えて、私たちは向かい合わせで座った。



「ねぇ、さっきおじさまと何話してたの?気になるんだけど」


「...うちのパン屋の帳簿について」


「絶対嘘。帳簿の管理はフレッドしかしてないじゃない」



元々評判のいいパン屋だが、数年前から経営はフレッドが継いでいる。おじさまは経営から離れてパン職人として彼に雇われてる立場らしい。経営者がフレッドに代わってから、取引先を増やしていたるところにパンを卸すようになった。


今度、大きな工場も作るらしい。

味はもちろんのこと規模も今や領内一のパン屋だ。



「フレッドに経営の才能があったなんていまだに信じられないよ」


「言っとけ」


「もっと商売を広げるの?」


「ああ。まだ足りないからな」


「足りない?」


「・・・欲しいものがあるんだ」


「へぇー初耳。なにが欲しいの?」


「言わない」


「ケチ!」



教えてくれないフレッドにちょっとイラッとする。

当の本人は頬杖をつきながら窓の外を眺めている。

フレッドは言わないと言ったらどれだけ聞いてもお願いしても言わない人だ。


『残念なイケメン』


そんな言葉があるがフレッドはまさにそれだ。

身長は高く、顔も程々に整っている。

そして経営者ときたら平民でも好条件だ。


だが、、、とても無愛想なのだ。


しかも自己完結型の無愛想だからタチが悪い。

恐らく本人の頭の中では色々と考えているのだろうが、その考え事の一部分しか周りに話さない。


町の女性からよく「カッコいいのに何を考えているかわからない」と言われているのを耳にする。本人はさほど気にしてないようだが、フレッドもそろそろ身を固める年齢だ。気にした方がいいと思う。



「そういうのやめた方がいいよ。お嫁さん来てくれないよ」


「...それ、お前が言うの?」



痛いところを突かれた。

飛んで火に入る夏の虫だった。


次女とはいえ子爵令嬢である私にもまだ『婚約者』がいないのだ。


この国では貴族の子女なら18〜20歳で結婚するのが普通だ。婚約者は15歳ぐらいから決まっている場合が多い。


私だって一応貴族。

そして17歳。

出遅れてる感は否めない。



「しょうがないじゃない。姉さんの婚約がまとまってないんだから」



姉 リリーの婚約者候補は二転三転している。


慎ましい生活をしている我が家としては、贅沢は望まないので同じ子爵家クラスの無難な家で探していたのだが、リリーが社交界で有名になるにつれ立候補がどんどんどんどん増えていっているのだ。


候補者の中で最も権力があるのはなんと「侯爵家」らしい。


でもその家の次男と三男がどちらがリリーを妻にするかで揉めているそうだ。そこに既婚の長男が自身も離縁して参戦したいと言っているとかいないとか。


・・・頭が痛い。

そこに嫁いで姉が幸せになると思えない。



「リリーは男性限定の人間関係クラッシャーだからな」


「姉さん本人はそんな気ないのにね。気の毒よね」



父の意向で姉の婚約が決まったら私の縁談をまとめようと決まっていたが、あまりにも姉の相手が決まらないので私の方を先に決めようかと父がこの前に零していた。



「でもパパが私の縁談の方がすぐまとまりそうだから進めようかなってボソッと言ってたから、きっとすぐ決まるわよ」


「・・・え!?」



フレッドが馬車の中なのに立ち上がろうとしてガタッと揺れる。行者さんが驚いている。



「ちょっと!!危ない」


「すまん!サラ、大丈夫か?」



フレッドの大きな手が私の腕を掴む。



「大丈夫よ。あはっ!にしても動揺しすぎじゃない?私に先越されるのがそんなに嫌なの?」



あまりのフレッドの焦りっぷりに私は笑ってしまった。

そんな私を彼は困ったような顔でみている。



「お二人さん。着いたよ、孤児院だ。」


「ありがとうございます」



行者さんに目的地の孤児院に到着を知らされ、私達は馬車をおりた。

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