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敵陣訪問

「ねぇ、サラさん今日のおつかい・・・」


「はい!はいはいはい!俺が行きます!」


「今日もルークが行ってくれるのか?」


「俺、今日も従姉妹の件で大聖堂行かなきゃなんで、ついでに行ってきます!」


「そうか…んじゃ頼んだよ?」



ありがとう、ルークさん・・・!

訝しげなブラウン先生に見えないように私にサムズアップするルークさん。


私が大聖堂の前で規格外の治癒魔法を使う事件を起こしてから5日、ずっとお使いを代わってくれている。



「あ。ルーク、エマちゃん大丈夫そう?」


「大丈夫というか、なんというか、、、本人は元気ですよ。元気すぎるぐらいで」



扉越しですが叫び声が聞こえますとルークさんが言うと、ブラウン先生がエマちゃんらしいと返していた。



「あのー、なかなか聞けなかったんですけど、従姉妹さん何かあったんですか?」


「サラさん聞いた事ない?炎の天使、エマ・フリードマン」


「炎の天使?」


「ルークの従姉妹でね、大聖堂で勤務してるんだけど、国内一の火魔法の使い手でその容姿からは想像出来ない威力の魔法を使うんだよ」


「へぇー!すごいですね!」


「やめて下さいよー。炎の天使ってやつ、エマ嫌ってるんですから!」


(二つ名を嫌がる気持ちわかる...)

「エマさん、何かあったんですか?」


「あー。いやさ。エマ、昔から好奇心が強くてよく実験をするんだけど、魔力が多いからか、あいつの術式が適当なのか、たまにやり過ぎちゃってさ?この前、大聖堂の塔をひとつ吹っ飛ばしたんだって」


「・・・え?」


「前々から小さい事故を何度か起こしてるのもあって、今回は教会から大目玉をくらったんだけど、そしたら魔力が多いのは私のせいじゃないって拗ねて部屋から出てこなくなったらしくてさ。火魔法は攻撃属性だし、災害とか有事の時には出動しないと行けないからいつまでも篭りっぱなしだと困るって事で従兄弟の俺が説得に駆り出されてるの。ったく、その辺の木や小屋を燃やすぐらいならもうなにも言われないのに、なんで石で出来た塔をふっとばすかなぁ、あいつ...」



勘弁してほしいと言わんばかりの声でルークさんが言う。


いや、木や小屋を燃やすのも大概だと思いますが?!

感覚の違いを感じつつサラはブラウン先生に話しかけた。



「ブラウン先生はいつからエマさんと面識が?」


「そうだねぇ。3年ぐらい前からルークを尋ねて何度かここに遊びに来ていて・・・あ、サラさん!君、17じゃなかった?」


「はい?そうですが・・・?」


「エマちゃんと同い年だよ!ねぇルーク!サラさん連れてってみたら?エマちゃん、同世代の子と接点ってなかなかないでしょ?サラさんと友達になればいいんじゃないかな?出てきてくれるかも!」



ブラウン先生は満足そうに頷きながら私達をみたが私とルークさんは固まった。


大聖堂に行くなんて敵陣に突っ込むようなものだ。


この前のやらかしといい、今1番近寄っちゃならない場所なのにブラウン先生の面倒見の良さが私達にとって裏目に出まくっている状況に2人とも動揺が隠しきれない。



「いいいいいいやぁ、どうですかね?エマは人見知りだし、余計出てこないかも…」


「そそそそそそそうですよ!それにそんな実力のある方とお友達なんて私恐れ多くて」


「大丈夫、大丈夫!!サラさんならきっと仲良くなれるよ!今日は外来少ないし、2人でいってらっしゃい!」



有無を言わさずに放り出された私たちは顔を見合わせて長いため息をついた。



「ど、どうしましょう...」


「これは行くしかないだろうな」


「ですよね...」



まぁ、なんとかなるかなと遠い目をしているとルークさんが何か思い付いた様な顔をした。



「サラ!ちょっと俺の部屋までいこう」


「え、ちょ、どうしました!?」



腕を掴まれてグイグイと引っ張られる。

あっという間にルークさんの寮の部屋の前まで来た。 



「ちょっと待ってて!!」



そう言って部屋に入ったルークさん。

廊下で待つ間ガタガタと音がして、出てきた時には両手いっぱいに荷物を抱えていた。



「はい、外套」


「え?自分のありますよ?」


「バカ。それじゃ変装にならないだろ!」


「変装!その手がありましたね!!」


「この魔道具、髪色を変えられるんだ。使うか?」


「いいんですか!?お願いします!」


「色は俺と同じ赤毛でいこう。それなら親族設定とかできるだろうし」



ルークさんは魔道具を使って私のベージュの髪を赤毛に変えた。髪色を変えるのは初めてでどうなるのかワクワクしているとルークさんがポカンとした顔でこちらを見ている。



「どうかしました?」


「いや、、、なんでもない」


「??あ、私髪色変えたの初めてなんです!赤毛、似合いますか?」



クルッと回ってそう聞くとルークさんは目を逸らし、広げていた荷物を慌ただしく片付けて部屋に放り投げ、行くぞと言った。


私は早歩きで進むルークさんについて行くので精一杯だ。







「ヤバいヤバい、マジで可愛い...ってか何で俺、親族設定なんてしたんだ...いっそ婚約者とか...あぁでもそれだと赤毛姿が...」


「ルークさん?何か言いました?ってか歩くの早いです!!」




ルークさんがピタッと止まる。

急なことに勢い余って私はルークさんに後ろからぶつかってしまった。



「いたっ!あ、ごめんなさいっ!!」


「ごめん!顔打った!?大丈夫か?」




「・・・・ルークさん?廊下でなにやってるんですか?」



フェリアがたまたま向かいから大量の書類を抱えながら歩いてきた。


私達といえば、ルークさんが私の顔に傷がないか確認する為に両手で頬を挟んでいる状態だ。


「え?もしかして、サラ?何で赤毛?ってか2人ってそういう関係!?いつから!?」


「「ちちちちがうっ!!!」」



今しがたぶつかったからこうなってる件と、ルークさんの従姉妹に会いにこれから大聖堂に行く話と、訳あって変装している旨をフェリアに話すととりあえず納得してくれた。



「だから!違うからね!」


「はいはい、わかりましたよー・・・ってか訳あり変装は王太子対策でしょ?」


「王太子?」


「今、王太子って言ったか!?大聖堂に来るのか!?今日!」




「え、えぇ。今日ご訪問の予定ですよ?時間までは知らないですが...」


「やっぱり今日はやめよう。病棟戻るぞ」


「えぇ!?でもブラウン先生が行けって・・・」


「お前まさか王太子の噂も知らないのか?」


「お、王太子の噂…?」




ルークさんは私を苦虫を噛み潰したような顔をしてみたかと思えば、フェリアに向き直って言った。


「フェリアぁぁ!サラを見つけ出してスカウトしてくれた事にはめちゃくちゃ感謝してる!感謝しているけど!この世の中に無関心すぎるのマジでどうにかしたい!」


「ルークさん奇遇ですね。私もそう思いました。今」


「はは・・・すみません・・・」



2人が説明してくれた事をまとめると、王太子のオスカーは現在25歳でイケメンだが大の女好きで後宮に30人程側室を囲っているらしい。行く先々で綺麗な女性を口説いては王宮に持ち帰ってくるそうだ。目をつけられたら最後とまで言われている。だからこそお世継ぎはもう十分すぎるほどいるが、まだまだ足りないと側室をもっと増やすつもりらしく、王太子の指示で後宮を広げる工事は絶え間なく続いており、財政を圧迫しているとか。


「ちなみに、セントラル病院はオスカー王太子様を出入り禁止にしているわ。一度、表敬訪問されたときに根こそぎ女性を後宮にいれようとして院長がキレたの」


「王太子を出禁・・・根こそぎ後宮・・・」


「な!めちゃくちゃ危ないやつなんだ!だから今日はやめよう!」


「でも、、、王太子様の好みは綺麗な女性ですよね?私ごときじゃ目に止まったりしませんよ」


「・・・フェリアぁぁぁ!」


「ルークさん。心中お察ししますが、社交界の華であるお姉さんのせいで自覚ゼロなんで何言ってもダメですよ」



ルークさんは諦めたようにため息をついてから私の頭をわしっと掴んで髪をこれでもかとぐちゃぐちゃにした。



「わわっ!何するんですか!?」


「よし。それでこのメガネかけて。フードかぶって。その姿崩すなよ!!」


「・・・??」


「とりあえずお許しが出たんじゃない?気をつけていってらっしゃい」


「そうね...んじゃまたね、フェリア」



フェリアに見送られて大聖堂に向かった。


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