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微笑みの衝撃

「おはよう、アレックス....って、どうした!?」


「ん?あぁレオか」


「目のクマひどいぞ。頭もボッサボサだし」



昨日の彼女が気になりすぎて一睡も出来ず、今朝もろくに身なりを整えずにそのまま家を出てきてしまった。


そのまま答えるのは気恥ずかしく、どう答えようか考えていると、団員から話しかけられた。



「団長、大丈夫ですか?昨日、家の用事で休暇でしたよね?飲み過ぎとかですか?酔ったとこなんて見たことないけど」


「お父上と飲み比べでもしました?」


「2人で店の酒全部飲んだんですか?」


「お前達、俺らをなんだと思ってるんだ。・・・昨日ベンが怪我したんだ」


「えぇ!?ベンが!?」

「大丈夫ですか!?」

「もしかして生死の境を!?」

「ずっと看病されてたとか!?」



ベンは父上がたまに訓練場に連れてくることもあり、団員達からとても可愛がられている。まずい。無用な心配をかけてしまった。



「いや、大丈夫だ」


「「「良かった・・・」」」


「ベン、どうして怪我したの?またいたずら?」



レオは幼い頃からベンと遊んでいるので、ベンの性格をよく知っている。ベンは昔から興味があるものに一直線でいたずらが何より好きだ。そしてやり過ぎて怪我をすることが多々あったからレオの予想はもっともだ。



「今回はいたずらじゃない。昨日、使うはずだった馬車をひく馬が何故か急に暴れ出して、ベンは母上を庇って蹴られたんだ」


「えぇ!?」

「馬に蹴られた!?」

「それ大怪我じゃないですか!」

「下手したら死んじゃいますよ...」



ざわざわする団員と眉間に皺を寄せるレオ。


確かに馬に蹴られて助かるなんて奇跡だ。

でもその奇跡は起きた。

通りすがりの彼女によって。



「心配をかけてしまってすまない。治してもらったから本当にもう元気なんだ」



頭の中でまた彼女の笑顔を思い出す。

アレックスは無意識に小さく微笑んでいた。






『ええええええええええ!!!』



そのアレックスの顔を見て団員達の間に衝撃が走る。

流石のレオも驚きの表情だ。



団員達はアイコンタクトで会話を始めた。


『い、今、団長、笑った?』

『見た!見た見た!』

『ベンが助かって嬉しかったからじゃ?』

『いやいや、あの顔それだけじゃないでしょ!!』



レオが団員の空気を汲んで、アレックスに聞いた。



「あー・・・昨日大聖堂に行ったのか?」



『ナイス!副長!!』

『このまま深掘りして!』

『副長しか聞けないから!』



「あぁ。でも大聖堂の治癒魔法師では治らなくてな」


「え?じゃあ誰が?」


「教会の外で声をかけてくれた治癒魔法師だ」


「...こんなことをアレックスに聞くのは気がひけるけど、詐欺とか大丈夫だった?登録証みた?」  



魔法を使って働く人間は登録証の携帯は義務だ。


登録証制度が出来ても、詐欺は完全になくなった訳ではない。実際、治癒魔法師に限らず、偽の登録証を使った詐欺は未だにある。よって、騎士団員は全員、偽の登録証を見抜く術を身につけているのだ。



「登録証、、、そうだよな。必ず携帯だもんな。あの時、見せて貰えば・・・あ、金は盗られてないぞ。むしろお礼は受け取ってもらえなかったんだ」



「え!?治癒魔法タダっすか!?」


「逆に怖い!!」



団員たちから声が上がる。

その反応はもっともだ。



「なんで受け取ってもらえなかったの?」


「それがわからないんだ。治療が終わって、ベンが元気になったらすごく慌てた様子で立ち去ってしまって・・・」


「んー…となると無登録の治癒魔法師かな?だって教会で治らなかったものを治しちゃったんでしょ?凄腕なのは確かだろうけど、普段から詐欺をしていて仕掛けようとした相手がスペンサー家って途中で気付いて逃げたって線は?」


「それは、、、あるかもしれないが、でも」


「ん?何か引っかかるのか?」





「・・・どうしても悪い人間に思えないんだ。昨日から彼女が頭から離れなくてどうしようもない」



部屋の中に再び衝撃が走る。





『え?これ団長?だよね?』

『そっくりさん。絶対そっくりさん』

『彼女って、、、女性?』

『それってそれって!!』



「団長!!もしかして一目惚れっすか!?」



ジョージが堪えきれずに誰もが思っていて口に出せなかった爆弾を投下した。



今度はアレックスが固まってしまった。

瞬きすらせずに微動だにしない。



「アレックス君?ちょっと部屋を移動しようか」



見かねたレオがアレックスを引っ張って部屋を出る。団員達の空気は先ほどまでとはうってかわり、朗らかだ。



『『団長に春!!あの団長に春!!』』


--------------


「アレックス、、、改めて聞くが、さっきジョージが言ってたように彼女に一目惚れしたの?」


「それは、、、わからない。一目惚れってのがどういうものかもよくわからない。気になって仕方がないのは事実だが彼女が何者なのかわからないし、そもそも名前すら…」


「そうだな。そうだよな。お前はそういう奴だ」



レオは長いため息をつく。



「俺は純粋にお前の味方でいたいと思ってるよ?子供の頃からの親友だ。でも万が一、今回の件が犯罪絡みならそれは見過ごせないし、彼女を庇うわけにもいかない。騎士団員として、それはわかるな?」


「あぁ・・・・わかってる」


「まぁ、そう不安そうな顔をするな。犯罪絡みだと決まったわけじゃないだろう?」


「そうなんだが、もしそうだった時、俺は自分がちゃんと役目を全うできるかわからない。こんなことを思うのは初めてでどうしたらいいか...」


「大丈夫。お前ならできるさ。それに、魔法協会が躍起になって潰そうとしている犯罪組織だってそろそろ解体できるって話だ。治癒魔法師の売買をしていたって話だから、もしかしたら彼女はその組織の被害者って線もあるかもしれない」


「たしかにそうだな。あの時も組織の人間を見つけたから逃げたのかも...」


「全く無関係のただのお人好しな独身の治癒魔法師かもしれないけどな」



レオはアレックスにむかって冗談を飛ばす。



「それは都合良すぎないか?」


「世の中何があったって不思議じゃないんだ。ベンが今日、仔犬に逆戻りするかもしれないし、空から星が降るかもしれないし、ジョージに恋人ができるかも!」


「ジョージに恋人はそこまでじゃないだろ」



アレックスは声を上げて笑った。


レオは久々にみる友人の屈託のない笑顔に、彼女が犯罪絡みではない事を願わずにはいられなかった。



「で?その彼女探すの?」


「ああ」


「探すあては?」


「探すあて、ではないかもしれないが、母上が社交界の伝手から情報を集めている。あと、父上と父上の影が各方面を探ってくれて・・・」


「ちょ、ちょっと待て!!え?スペンサー家総出なの?」



アレックスは昨日の出来事を話し始めた。


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