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私の仕事

姉の身支度を手伝ったあと、食堂に行くとすでに父と母が座ってコーヒーを飲んでいた。


弟のパーシーがみんなの朝食を取り分けている。

食事はパン以外は全て準備済みだ。

フレッドに届けて貰ったパンを添えて朝食は完成。

焼き立てのパンは朝食をよりおいしそうに見せてくれる。



「おはよう、サラ」


「サラ、毎朝ありがとうね。リリー?普段着の着替えぐらい自分でしなさいとママはいつも...」


「んんんー。はいはーい。」


「全然わかってないわね...サラ?これ以上リリーを甘やかしちゃダメよ」


「そうよね、ママ。ごめんなさい」


「サラが謝ることない。ルーシー?注意はリリーのみにしてね。サラは悪くない」


「サラ姉、紅茶とコーヒーどっちにする?」


「紅茶がいいわ。ありがとう、パーシー」



父、ディビッドは綺麗な顔で領地経営の才能はあるのだが、子爵としては全然ダメだ。ダメというか貴族っぽさがゼロなのだ。本人曰く、家族と一緒に生きていければそれでいいらしい。社交にも興味がなく社交シーズンもほぼ王都には出ない。子供の頃から薄々かんじてはいたが、それは子爵とはいえ貴族としてどうなのだろうか...


母、ルーシーは魔女だ。恐らくこの国の唯一の魔女だ。

もちろん家族だけの秘密。魔女は歳を重ねてもなかなか見た目が変わらないようで、子供が4人もいるのに今や年齢不詳の美女だ。20代後半でも通ると思う。父と並ぶとだいぶ歳の差を感じるようになったが、実際は母の方が相当歳上。ちなみに母には禁句。これ重要。


周りの事など何も気にせずにコーヒーを飲む姉・リリー。リリーは出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいてスタイル抜群、ブラウンのウェーブヘアーに緑の目が綺麗な社交界の華だ。父が社交に出ず、母も正体が露見する訳にはいかないので領地に引っ込んでる代わりにリリーが我が家の社交担当なのだ。ちなみに、リリーが着るドレスやアクセサリーは全て殿方からの貢物。夜会のたびに山程届く。その中からいくつか選んであとは売っている。ちゃっかり者の逞しい姉だ。殿方の間ではリリーに選ばれるドレスの賭け事まであるらしい。なんてことだ。


弟のパーシーは...控えめにいって天使だ。

10歳だが、可愛い顔で体が小さめ、線が細い。だから歳下に見られる事も多く、本人はすごく気にしている。私はそのままでいいと思っているが、最近「可愛い」というと拗ねてしまうようになったから可愛いと言いたいのに我慢している。寂しい。



「サラ、今日は孤児院に行く日だったか?」


「ええ、パパ。今日は読み書きを教えてくる」


「僕もサラ姉と一緒にいくー!!」


「ダメよ、パーシー。あなたは剣のお稽古でしょ。サラ、この後の家事はママがやるわ。だから気にせずに行ってちょうだい」


「ありがとう、ママ」



その時、ちょうどフレッドが来た。

玄関をノックして少し扉を開け、いつもの砕けた感じではなく、他所行きの畏まった声を出している。



「領主様、お邪魔します。サラの迎えに来ました」


「やぁフレッド。娘の護衛をいつもありがとう」


「今日もお願いね、フレッド」


「はい。領主様、奥様。確かに」


「フレッドの場合はサラの護衛ってよりも〜…」


「(小声)おい、リリー。余計な事言うな」


「フレッド、僕も連れて行って!!!」



家族とフレッドが話している間に私は準備をする。


孤児院での先生の仕事は半年前からだ。

父からの頼みで、彼らが施設を出ても生活に困らないように基本的な読み書きやマナーを教えている。


貧乏ではあるが、両親の方針で子爵令嬢としての教養やマナーは一応身につけているのだ。一応ね。



「みんな、行ってきます」


「「「行ってらっしゃい」」」


「サラ姉ぇー!!!早く帰ってきてね」


涙目の可愛い可愛いパーシーに後ろ髪をひかれつつ、私はフレッドともに丘をおり、孤児院に向かった。


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