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治癒魔法師としての第一歩

「採用!採用、採用、採用っ!!寮の入寮についてはこの書類ね。勤務かについては各診療科での研修後に決定するわ。ワトソンさん!よろしくね!!」


「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」




セントラル病院での勤務が決まった。


ここまで怒涛の展開だった。






病院勤務の治癒魔法師を目指すと決めてすぐに、母と姉さんと一緒に父に話をしに行った。


私達が話している間に、セオドア兄さんとトムさんにそれはそれはこってりと絞られた父はほぼ抜け殻状態だったが、サラの人生だから好きなようにしていいと言ってくれた。


どうやらトムさんが兄さんに今回の経緯を火事現場から家に戻る道中に話をしていたらしく(勝手に!とは思ったけど...)、兄はトムさんの話と、漏れ聞こえてきた私達の話を合わせて状況を把握し、理詰めに理詰めを重ねた口撃を父にしたらしい。


ちなみにトムさんは剣を抜いて垂直に床に突き刺し、立っていたとか。怖すぎる。


火事の被害は思っていたよりひどくはなく、建物の建替えは必要だが領の貯蓄を全て放出するほどのものではなかった。それに領民の協力も大きかった。消火活動が迅速に行われたのもそうだが、領民の同士で支援の輪が広がっていて、火事が起こった当日から野宿をする人もなく生活に困る人も出なかった。


父は被害に遭った人達に謝って回っていたが「領主様は悪くない」と皆が口を揃えて言ったらしい。

本当に領民から人徳が厚い父だ。


フレッドの元へは父と兄が揃って出向き、フレッドのご両親同席の上、結婚の話は一旦白紙にして欲しいと頼んだそうだ。フレッドは顔面蒼白だったらしいだが、スミスご夫妻は理解してくれ、約束を反故にした慰謝料も受け取らなかったらしい。


その後、父と兄を通じてフレッドから会いたいと言われ、私は家の前の丘でフレッドに会った。


声が届くか届かないかぐらいの距離から兄さんが見ている。どこにいるかわからないがトムさんも見ているらしい。


大丈夫だと言ったが2人とも聞かなかった。



「サラ。会ってくれてありがとう」


「ううん、私の方こそ。あの、、、ごめんなさい。ずっとフレッドの気持ちに気付かなくて」



気まずい沈黙が続く。

フレッドは振り絞るような声で私に聞いた。



「・・・もし俺が色々手回しをする前に告白をしていたら。恋人になって欲しいって言っていたら、何か変わっていた?」



聞かれるだろうなと思っていた。


だから私は自分の素直な気持ちを伝えた。



「・・・意識はしたかもしれないわ。でもわからない。フレッドが恋人って想像できなくて」



そうか...と、フレッドは遠くを見た。



「どんな手を使ってでも、サラを俺のそばに留めておきたかった。でもそうじゃないよな。サラの気持ちが1番でその他はどうだってよかったんだ」



フレッドは悲しそうな笑顔で言った。



「王都に行くのは俺から逃げるためか?」


「違う!そんなんじゃない」



私はフレッドの目をまっすぐに見据え、覚悟を決め、出来るだけの笑顔を作り、言った。



「私、今まで狭い世界にいた。周りがちゃんと見えてなかったのが今回の事でよくわかった。だから、自分の世界を広げに行くの!」



そう言うとフレッドは俯いてしまい表情はわからなかったが、俯いたまま「わかった。気をつけて行けよ」と言われ、私はフレッドと別れた。



それからは母のスパルタ魔法指導を受け、魔力をセーブしながら施術するやり方をなんとか身につけ、王都行きの準備をした。


仕事の推薦状は母と共に院長先生に改めてお願いしに行った。ローズおばあちゃんにも同席して貰っていたため、先日の誤解について釈明したが何故か2人とも複雑そうな顔をしていた。


それから4人で談笑していると、ローズおばあちゃんからのお仕事の紹介の話がなんとセントラル病院だった事がわかり、これ幸いと母がお孫さんに話をしてもらえるよう手筈を整えていた。こういうところちゃっかりしている。


そしてとうとう魔法協会への登録の日。


王都まではトムさんについてきてもらった。

指輪もネックレスもちゃんと着けている。

それを何度も確認して待合室で呼ばれるのを待った。



「緊張してるのか?」


「もうめちゃくちゃ。ほんと吐きそう・・・」


『サラ・ワトソンさーん!』



呼ばれた。

トムさんはいってらっしゃいと言ってくれた。



『サラ・ワトソンさんですね?』


「はい」


『では、こちらに個人情報のご記入を。その後登録カード用の写真撮影と魔力測定を行います。登録証ができるまで1時間ほどかかりますのでその間に仕事紹介情報を見るなら2階に上がってください』



書類の記入をし、写真撮影を済ませ、いざ、魔力測定へ。水晶玉に両手を添えて魔法を発動すると水晶玉に適性と魔力量が浮かび上がる仕組みのようだ。



『治癒魔法師希望ですね?では、こちらに手を添えて魔法を発動してください』


「・・・はい!」



水晶玉から真っ白な光が溢れる。

協会の人が目を見張る。


まずい、失敗した!?


『治癒魔法適性有、魔力量は基準値上限ギリギリですね・・・残念ながら基準値超えではないので、教会勤務ではなく病院勤務として登録します』



・・・・やった!やった!!!!


私はホッとして今までの疲れがどっと出てしまいヘナヘナと座り込んでしまった。協会の人は私が教会勤務になれずに残念がっていると思ったらしく、病院勤務も悪くないですよと励ましてくれた。


ごめんなさい。無事に誤魔化すことが出来て嬉しすぎて力が抜けました、なんて言えない。


トムさんの元に戻り、登録の完了と病院勤務になった件を報告して仕事の情報を得るために2階に上がった。


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