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私の人生

「サラ、あなた、王都に行きなさい。治癒魔法師として働くのよ」




母は部屋に入るなり言った。




「ちょっと待って、ママ!やっぱり、サラを犠牲に支援を得るの!?そんなのダメよ!教会って激務なんでしょ!?サラに何かあったら...」


「教会勤務になんてさせないわよ、病院勤務一択よ。領の事はデイビッドがなんとかするわ。これはサラのためよ」




何言ってるの?と、リリーの不安を散らすように母はさも当たり前のように言った。




「え、でも、、、私の魔力量だと、、」


「そうね、サラの魔力量そのままじゃ教会行きね。でも、それなら“調整すればいい”のよ」


「「・・・調整?」」



訳がわからないとばかりの声をあげると私達の顔を見て母が呆れた声を出した。




「あなた達?自分達の母親が誰か忘れてるんじゃないでしょうね?」



「・・・あっ」




そうだ。私達は“魔女”の娘だ。


両親がどう出会い、貴族だった父と魔女の母がなぜ結婚したのかはいつも誤魔化されてしまうが、母が異国出身の魔女であるのは確かだ。


母の部屋には魔道具が溢れんばかりにある。


異国では魔道具の使用は普通だったそうだが、この国では普通ではないのであまり使わない。


稀に魔道具マニアがいるぐらいだ。




「この指輪、これをはめたまま魔法を使えば指輪の石が魔力を吸収して抑えてくれるわ。やってごらん?」




母は私の指に指輪を嵌めた。

はめた直後は少しゆるかったのに、数秒でぴったりサイズに変わった。おそるべし魔道具。


私は治癒魔法を発動した。




「ホントだ!いつもよりすごく弱い!!」


「「え?」」


「ん?」


「・・・ダメね、もう一つ追加しましょ」


「サラあなた...えぇぇぇ...」


「え?姉さん?ママ?なに?」


「サラ、これも着けて。ネックレス。これも指輪と原理は一緒。2つ同時に着けてやってみて?」



私はもう一度治癒魔法を発動した。



「うん、これなら大丈夫ね」


「すごーい!弱くなってる!」


「でもこれ弱すぎない?こんなんじゃ治癒魔法師になれないんじゃ・・・」


「いや、これでいいわ。これでもギリじゃないかしら、、、念のためもうひとつ、、、」


「でも、ママ。なんでサラに王都で治癒魔法師として働けなんて言ったの?」





「サラにもっと自分の価値をわかってもらいたいからよ」




母は私に自身の価値を知れと言った。




「・・・価値?」


「そうよ、あなたには誰にも負けない価値がある」


「でも...私は・・・」


「あー、もう。それよ、それ。どうせリリーみたいに綺麗じゃないしとか、セオドアのように頭良くないしとか、パーシーみたいに可愛くないしとか思ってるんでしょ?」


「パーシーに可愛いは禁句」


「あ、そうだった。内緒ね?」


「えっと...でもそれは本当だし」


「サラ。あなた自分が思ってるより綺麗よ。身内贔屓ではなくね。それにその治癒魔法。恐らくこの国で1番よ」


「えええ!?そんなこと・・・」


「魔力量、前は人の5倍ぐらいだったのにねぇ。今もっとあるわよ。指輪もネックレスもそれぞれ半減させる効果があるものだから、、、ざっとだけど、7、8倍ぐらいはあるんじゃない?」



うそ...そんなにあるの?



「さすがにまずいから、道具に頼らずともセーブするやり方も覚えましょ。セーブするのは普段の勤務中ね。あと勤務する病院はセントラル病院を第一希望にしなさいね」


「セ、、、セントラル病院!?1番人気の病院じゃない!無理よ、そんな」


「やってみなきゃわかんないじゃない!それにー」


「「それに?」」


「あそこは美形が多いっ!院長を筆頭にね。きっと顔採用よ!恋愛するならやっぱり美形よ!」


「・・・え?」


「だって、あなた恋愛した事ないでしょ?せっかく王都で働くなら、美形と恋愛でもしてきなさいな。それに世の中広いのよ!色んな人と話したり関わったりして世界を広げなさい。あ、リリーもサラの様子見がてら相手を見繕って来たらいいわ。あの侯爵家の誰かなんてやめときなさい」


「ママ本気!?」


「あなたがフレッドが好きで結婚したいなら止めないけど、そうじゃないでよくわからないまま巻き込まれているだけなら、違う選択肢があってもいいじゃない?だってあなたまだ17よ?恋愛したってバチ当たんないわよ」


「そんな、、、そんな好き勝手してもいいのかな...」


「好き勝手?何言ってるの?デイビッドと私は社交界の水面下の化かし合いが面倒だから社交に出てないし、セオドアだって次期子爵としてただ後継者教育を受けていればいいのにやってみたいって言って王都で全然違う仕事してるじゃない?リリーだって情報収集や人心掌握術が趣味だから社交担当をしてるのよ?パーシーの事もセオドアの補佐に縛るつもりはないわ。やりたい事があればやればいいのよ」


自由を制限する貴族の考え方って好きじゃないのよね〜いまだに慣れないわ〜と母は言う。



・・・知らなかった。

父と母は面倒だから社交に出ていなかったの?

兄も姉も自分で決めて動いていたなんて。



私は何に囚われていたんだろうか?


母の話を聞いて、恋愛はともかく、自分の世界を広げてみたくなった。


やってみよう。これは私の人生だ。



「私、、、やってみる。治癒魔法師」


「そうよ!向かないと思ったらすぐ帰ってくればいいしね。あなたの家はここなんだから」



母はそう言ってニカッと笑った。


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