28.ミオの災難
私は、ギルドの一室で寝起きをしている。
それはね、私が冒険者になりたいのと……ボブさんとダンさんの養女の件があるから。
ボブさんとリリーさんはAランクの冒険者、ダンさんはSランクの冒険者で今まで誰にも負けた事がない最強の男と言われている。
この気配! 私はとっさに『透明化』インビジブル! 『隠密』ステルス! 『フライ』誰かとぶつかるといけないので空中で様子見していた。
バアアァァァーーーーンッ!!
やっぱり来た。あのクソブタ……大きい領主が登場と共に、あの魔獣泥棒オヤジまで一緒って……なんか最悪だわ。
これを【ストーカー】と呼ぶのよ!
「おい、あの女を出せ! あの女は売上金を持ち逃げしたんだ。早く連れてこい! お前達、あの女を探せ!」 部屋を一室づつ見て回り、ギルド内全部を探し尽くしたが居なかった。
「ミオはオレの親族であり嫁だが? 」 ギルマスのアーサーさんは、運命なのか偶然なのか分からないが、髪はブラウンで目は淡い紫……私と一緒だった。
「嘘をつくな! アイツはオレが盗賊に襲われて、連れて行かれた娘だ!!」 フーフー言いながら鼻息が荒く、背後にいた闇商人が「あのガキも髪がブラウンで目が淡い紫です」と言われた途端に「オレの娘ではなくても、養女にしてやろう!」 領主は言ったが、アーサーさんは凄く怖い顔で「オレの嫁に触れてみろ、ただじゃおかないからな!!」地を這うような低い声で言うと、領主と闇商人達は逃げ帰った。
「ミオ、もう大丈夫だぞ」
私は下に降り、目を泳がせながら……何を言って良いのか分からず、2人で沈黙状態だった。
「お二人さんは、お見合い中の男女か?」 振り返って見ると、クリスさんがニヤニヤしながら見ていた。
クリスさんだけではなく、ギルド内の皆さんが全員見ていた!
「ぎゃぁっ!」 私は女の子らしくない悲鳴をあげた後、恥ずかしいよ〜〜! と言いながら、両手で顔を覆った。
「ミオ……『ぎゃぁっ!』って悲鳴は……昔も今も変わらないな……まぁ、悲鳴は人それぞれだよな……」 アーサーさんの髪色と瞳の色は稀有らしいので、初めて私と会った時は言わなかったのだとか、今は領主や闇商人が絡みだし、状況が一変しているから私を守る為に『嫁』と言ったんだとか。
「もう嫁って事で教会と国王に申請して来いよ」 「そうだ、そうだ! こんな子どこ探したって居ないぞ」
「ギルマスもいい歳なんだからさ、新婚を経験しとけよ」 言いたい放題言われてるアーサーさん……笑える。
ダンさんとバズさんのように【ビッグベアー】な大きな体とムキムキ筋肉……私としては筋肉ムキムキは強そうで好きなんだけどね。
そうだ、今まで忘れてたけど、ギルドカード!
「アーサーさん、私のギルドカードは?」 アーサーさんは私を見て「おぉ、そうだったな……アイリス、ミオのギルドカードを発行してやってくれ」行って来い! と言って私の背中を押した。
「ギルドカードに保護者の欄は無いの?」 はははっ! 俺が後ろ盾になってやるから安心しろ。との事なので、私は頷いてから、アイリスさんの所へ行った。
「お前達、依頼がまだあるんじゃなかったか? 早く行けよ! アイリス、ダンの所に出てくる。
何かあれば知らせてくれ!」 と言って他の冒険者さん達とギルドを出て行った。
誰もいなくなって静かになったけど、誰が聞いてるか分からないから慎重に話さないとね。
「ギルドカードを発行するのに小銀貨5枚必要です。あと、ミオは未成年ですから保護者……ギルマスが保証人なので大丈夫ですね」
「アイリスさん、私……(金貨・中金貨・大金貨・白金貨・大白金貨しか無いんですけど……)」 私は途中から小声でヒソヒソ話した。
なので、金貨5枚でお願いします。残りは、ドアの修繕費に回して下さい! とお願いした。
エミリーさんがギルドへ入ろうとしたが、酔っ払いもギルドへ入ろうとしたのを見て、急いでジャスティスの拠点まで知らせに行った。
バタンッ!!
誰か来たのかな?
後ろを見ると、背後で……酔っ払い? 昼前から飲むって最悪だなぁ。
「…………!!」 最悪、目が合った……アイリスさんを見ると青い顔して「今、頼りになる冒険者とギルマスは少し前にジャスティスの拠点に行ったの……あっ!」 んっ? 後ろを振り向くと、さっきの酔っ払いがアイリスさんと私の肩を抱き込み、私達を上から下まで値踏みをするように見ていた。
この女はどれくらいの価値があるのか? みたいな目で見て来た。
アイリスさんが「やめて!」 と言って突き飛ばした。
ダアァーーン!! 男が私の肩も抱いていたので、私も倒れてしまった……だが、倒れ方が良くなかった。
私が男の下で仰向けに倒れ、男は私の胸に顔を埋めていた。
私は気持ち悪くて「いやぁ〜〜〜〜っ! やだやだっ! キャアアァァァーーーーッ!! んんっーーっ!」
私は男に口を押さえられ、首筋を舐められた。
震える手で男を押し退けようとしたが男の力には勝てなかった。
男は私の頬を殴り、小型ナイフで服を切り裂き、床に後頭部を叩きつけられ流血し目の前が真っ白になった。
男は再び私の頬を何度も何度も叩き、動けなくなった私を見ながらニヤリとしている。
私は怖くて震えていた……その姿に興奮したのか、ますますエスカレートし太ももを触った瞬間……「ガハァッ!」 男が壁に向かって吹っ飛んだ!
ダンさんが息を切らせながら、男を蹴り飛ばしていた。
「ミオ……大丈夫か? 止血しねえと!!」 ダンさんはアイリスさんに綺麗な布と傷薬を持って来させ、応急処置をしている時に、ゼクスさん・アーサーさん・バズさん・ルシアさんが走ってギルドへ入って来た。
私の髪は乱れ、服は切り裂かれていた! ルシアさんがダンさんに代わって手当てをしてくれた。ルシアさんは私を抱きしめ「もう大丈夫よ!」 震えが止まらない私を見て、アーサーさんが「アイリス、ルシア……ミオの事を頼む」 震えて声にならない私を気づかってくれた。
「ダン! 落ち着け。ゼクス、お前もだ! 今はミオがいる、この状況をアイリスに聞いてから……落とし前つけようぜ!」 アーサーさんもブチギレ寸前だが、ミオの前だからと怒りを抑えている。
酔っ払いは「女を寄越せ!」 と叫んで騒ぎ回り、ギルド内を荒らしていた。
誤字や脱字がありましたら、すみません。
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