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《ステータスロック》


前を歩く少女に着いて行くかたちになりつつも、私は[デッドレコード]に色々な事を聞こうと試みていた。聞きたいことは山のようにある。そうだな……まずはMPとHPがない理由かな。




[その権限は[ステータスロックD]によりロックされています。]



私の質問に相変わらず無機質な声が事務作業のように答えた。どうやら今の私にはなにかが足りてないため答えられない、そんな感じだった。[ステータスロックD]……Dランクになったら教えてもらえるってことでいいんだよな恐らくは。



考えてもしかたねぇ次だ次。Hexagramについて教えてくれや。



[その権限は[ステータスロックD]によりロックされています。]



またか……と私は肩透かしされたような気分に頭を抱えていた。根本的な解決に至っていない返答に戸惑わされ、全く同じ文章で半ば適当にあしらわれたんじゃないかとも思える。謎の声さんよぉ……私を部下だか手下だかなんかにしたいんでしょ?だったら教えてくれよ……いや、教えてくださいお願いしますなんでもしま……すなんて言ってないよ?



「¡Vamos, vamos! ¡Síganme!」



少女が私の手を握って急かしてくる。何て言ってるかは聞き取れないけど、着いてこいとか早くしろという意味合いなのは間違いないね。すっかり警戒心解いちゃって知らないよ?お姉さん一応人間殺せって言われてるんだよね……まあ強制じゃないけどさ。



[《少女》のステータスを算出した結果、《頭突き》で確定3発です。(手加減などによるダメージの大幅な変動は含まれません)]


……だから聞いてないってば!一応脅す材料にはなるってだけで同じ人間を殺せるわけないだろ。出来ることならもう一度人間としての人生を歩みたい。さっきみたいに人類の敵みたいな仕打ちされるの結構辛いんだよね……。



とりあえず進化してみるしかないかなぁ……。《スカルボーン》か《魔術書(ソーサルブック)》だったっけ?お使い感覚でちゃちゃっと集めてきてやるよ。



───



「¡Eres un imbécil! ¿Cómo te atreves a traer a los no muertos a nuestro pueblo?」


「¡Estos no-muertos son dulces! ¡Me has salvado la vida!」


さて、あれから暫く歩いたところでどうやら彼女の住む村へとたどり着いてしまったらしい。案の定親とおぼしき男性と少女の大喧嘩が勃発していたのだ。その騒ぎを聞き付けて村の人達がざわめき集まってくる。状況は言わずもがな最悪だ……私だけでめ早いところ退散するべきかな。



「¡Asqueroso bastardo! ¡Estás muerto!」


聞き慣れない言語で汚ならしく罵りながら、村人の一人が石を投げてきた。ぶつかった衝撃がダイレクトに骨に響くため、これが結構痛いのだ。あがっ!?やめっ……あぁ痛え!!



「¡No lo hagas! ¡Podemos hablar de ello!」



少女も私を庇って投石を食らっていた。必死に弁明してくれてはいるが、彼らが聞き入れてくれる様子は一切見えない。やってることが悪魔払いというか魔女狩りのそれなんだよなぁ……。確かに動く死体を連れてきたってだけでかなりヤバイやつだし、村人たちのやってることが正しいのは百も承知だ。



少女の弁明を無下にするようで申し訳ないのだが、ここはいっそこの場から消えたほうがいいはずだ。




ガァン!!



……とその場から踵を返そうとしたとき、背中を思い切り殴られるような痛みと衝撃が襲った。



「¡Estás muerto! ¡Los no muertos!」



後ろを振り向くと、ひょろい男が汚ならしく唾を飛ばして罵声を浴びせながら、農具らしき鈍器で私の背中を殴っていたようだった。この野郎……どうやら死にたいらしいな。





私は私怨を込め、手に持つ斧で振り向き様に男の頭を斬るように殴った。そのまま力ずくで押し倒すように組み伏せ、その不快感募る憎たらしい顔を殴りつける。これは私のぶん!これも私のぶん!私の頭!背中!心!三位一体幕の内!まっくのうち!まっくのうち!まっくのうち!!



「¡No hagas eso!」



少女が私の腕をつかんで制止をかけるのも気にせず、男の声が聞こえなくなるまで殴り続けていた。



「El diablo.........」



その様子を見ていたらしい村人がディアボロと言った。ディアボロスってやつかな。名前そのものに聞き覚えはあるが、明確になんの種族だったかは覚えてないな。けど悪くない響きだとは思う。



「¡Eh! ¡Tienes que ser un sacrificio responsable!」



村人に首根っこを掴まれた少女が、泣き顔になりながらこちらをじっと見ていた。私を責めているような目ではない。あれは駄々をこねる子供のものではなく、なにかを決心ような目だった。村人二人がかりで身体を押さえつけられ、まるで私に捧げる生け贄か罪人のような姿になっていた。




ふとよぎった考えを巡らせる。私が《ディアボロス》だとすれば、これは生け贄ではないかということ。少女を差し出すから村を助けてくれということだろうか。現に彼らは私を恐れ、先程まで飛ばしていた石がすっかり止んでいた。



「・・・。」



少女がすぐ目の前まで大人二人がかりで組み伏せられた状態でこちらを見ていた。その目は涙こそ流していたものの、何故か穏やかでとても静かなものだった。まるで自分の境遇を呪うことなく受け止めているかのようだ。




ここで諦めて帰るのは確かに簡単だ。だが中途半端に残された少女はどうなるんだ。アンデッドを連れてきた反逆者とでも言われ、死ぬより辛い目に遭うか、別の何かの生け贄にでもされるのだろうか。



だったら……




私はぎゅっと目を瞑り、自分の手に持つ石斧を力いっぱい振り下ろした。












[ 《ゾンビ》の進化条件を達成しました。]


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