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マリナの話  作者: 白州
2/9

見舞い

なにであろうか。病院を後にする。リオンと手を繋いで。

「宿どこ?」

首を横に振る。

「え?昨日からどこ泊まったの?」

「機構の、教会?」

「あぁ、どうする?」

「……リオンは、どこに」

「宿、一人部屋だし、一緒に泊まるなら取り直そうか」

「……」

「まぁ、僕眠たくないし、いいけどなんでも」

「……」

なんと言えばいいのか。

「ニィは」

ニィはではないのか。

「イオが?」

「……ニィは、一緒に居てくれた」

「……まぁ、いいけど」

「リオンは、リオン?」

「まぁ、僕は僕だけど」

「……そう」

「一緒に居たいなら、居たいって言ったら良いよ」

「…………そう」

そう、なのか。

「手を繋ぎたいなら、繋ぎたいって」

「……」

「どうかしたいか、見つけたら、言えば良いよ。それは君の自由だし」

「…………そう」

「うん、あとはこっちが勝手に決めるよ。言うだけタダだね」

「……」

よく分からない。言えば叶うと思う方が間違いなのだろう。けれど、少し寂しく思う。叶わない事が。それでいて怖い、言って叶わない事か、呆れられて、見捨てられるか。

ニィは何も。何も。関係ないのに、居てくれていた。関係もないのに、面倒を。財産を掛けてくれていて、育ててくれていた。ちゃんと。

ちゃんと。宿に着いて、鍵を開けて中に入る。キッチンとか水回りの付いたワンルーム。

「適当に使って。宿慣れはしてるよね?」

「…………」

「マリナ?疲れてる、かな?昨日からあれだし。あーどうしよう。食べるの近所のパン屋に行く?買ってくるけど、嫌いな物とか、食べられない物ってある?」

「……」

「適当にしてて、買ってくる」

出て行こうとするリオンの服の裾を摑まえる。

「うん、なんだろ。一緒に行く?」

「……」

頷く。

「口に出してくれる方が良いんだけど」

「……我儘、勝手になる」

「そうだとどうなの?」

「…………嫌われる」

「あぁ、そう。嫌なの?」

「……怖い、ニィが居ないとどうにもならない。ならない、けど、どうして意地汚く生きたいか分からない」

「マリナって、イオの事好き?」

「……」

「あー、嫌いでもなんとも思ってなかったりでも、他に居なかったんだろうけど。孤児の施設もあるものだけど」

「ニィを賞金稼ぎにした」

「あぁ、うん」

「恩でずっと送金している」

「うん、マメだね」

「嫌ってた」

「……うん」

「他を知らない事、人を殺してでも生きる事」

「うん」

「生きる事に、どうして執着してしまうのか」

「……そっか、うん。……僕は……ちゃんと真っ当に生きないと駄目って、言ったでしょ、死んだ人の分まで生きなさいって、お師匠様が言ったって。そうしないと僕は人を巻き込んで死ぬらしいよ。生まれる迄に人を死なせて、死ぬ時に迄人を巻き込んで死んでちゃ、最悪だよね」

「……」

「普通の死に方探して、術考えないと。……えーっと、妙に落ち込む話するのお腹減っているからかな?ごめんね、帰りに市場に寄らなかったから、一緒に行こっか」

「……そうする」

頷く。

「必要ない荷物置いてって良いけど。背中の一つ?」

そういえば。

「ニィの荷物」

「あぁ、そういや、そっか、出すの忘れてた」

リオンが腰に付けている革のポシェットから、石を取り出し、何かしたのか。ドサっと荷物が落ちる。ニィの革のトランクである。

「必要な物があったら取り出せるかな?」

鍵がかかっていないのを、確かめている。

「まぁ、いいや。行こっか」

「……ん」

なにであろうか。リオンについて部屋を出る。鍵を締めるリオンを見ながら不思議に思う。

「荷物まとめるの、術?」

「封印術の系統?かな。売り物の術具にも似た物はあるよ。マリナもいるなら、作ろうか。カサが減るし、軽くなるし」

「……、ニィ運んだの」

「あぁ、体重を封印術で重みを封じて」

歩き出すのについて行く。

「なんか、凄い」

「初歩的な術だけど」

「……そう」

階段を降りる。

「知らない人の方が多いいかな。術師は大体隠すのが、一般的。術師は何かを隠す嫌われ者だからね」

「隠す?」

「術って言うのは奥の手かな?一般的に広まっているものはそれとして、術師に取って術は生きる術で、それを容易く人に見せたり教えたりしないから」

「……」

「マリナに隠してもしょうがないでしょ?」

そうなのだろうか。

「使えないだろうし」

「……成る程?」

「簡単に使える術具は幾らでも、あれだけど、術師以外の人に隠すとしたら、それって敵じゃない?敵ってのがよく分からないけど」

「捕まらないし、殺されないから?」

「そーだね、なんか。対立するのって、面倒そう。これはこっちの都合だけど」

「ん」

しかし、どうするのだろう。

「リオンに賞金掛けてどうしたかった?」

建物を出て、右へ。

「さぁ、霊力源が欲しいか、地獄に閉じ込めたいか」

「霊力源?」

「霊石って消費物だし。僕は内から生まれ続ける霊力を消費し続けないといけない」

「……それは、需要と供給の合致?」

「そうとも取れるかな?だけど僕は誰かに利用され続けるのはごめん被りたい。だって誰かの都合が良い事は、誰かにとって都合の悪い事の可能性が高い。だったら僕は僕の都合でありたい。自分の力の使い方を人に任せて、その相手の所為にしていたら救い様も無い」

「……よく分からない」

「僕は僕が生きる為に、自らから生まれ続ける力を自分の為に消費する。それだけ」

「……今は」

「消費し続けているし、封じ続けている」

「……よく分からない」

「だろうね。分かられちゃ目立ち過ぎる」

「……」

「目立たなくする結界系術も使用中」

「……」

「攻撃全て防ぐ結界術も使用中」

「……リオンって死なない?」

「病気や、なんやかやは防げないかな」

「病気」

「感染症にはかからない。弱ると術使えなくなるし、霊力暴走して死んじゃうかも」

「……」

建物に入って、テーブルへ。

「何頼む?」

「……」

「同じのでいっか」

頷いておく。リオンは店員さんにセットを二つ頼む。

「なんの話してたっけ」

「……術」

「そうそ、そして此処でそういう話していても、誰の頭にも残らない系の結界術の発動中」

「……」

「雑音として捉えて、内容は残らない。僕が僕の意思で持って相手に言葉を言わなきゃ、まるで気にされない。そして会話している君の言葉も。僕以外の人に向けて掛ければ問題ないよ」

「……それ、ニィといる時」

「ちゃんと会話出来る仕様にしてた」

「……」

「因みに言うと、結界術って霊力消費量と術の強さが比例しやすいから、霊力強いと強いのが張れたり、永続的に出来たり。例外はつきものだけど、結界展開し続けるには霊力が湯水のごとく溢れかえる体質か、霊石を使用交換し続けないとね」

「……霊石」

何か聞いた気がするけれど。

「地獄は、結界じゃ?」

「そう結界、精霊王と言われる精霊の上級種を閉じ込めた霊石の柱を作って半永久的に、島を丸っと一つ閉じ込めた、結界術。封印にも近いけど。似てるから身につけやすい」

「……」

「あぁ、ありがとう」

料理を持って来た店員さんに礼をリオンは言う、前に置かれるのに頭を下げて離れるのを見送る。野菜と肉のサンドされたパンと、スープ。サラダと何か揚げた添え物。

「いただきまぁす、と」

リオンはスープから口にする。

「いただきます」

「それで、地獄の結界は火霊、水霊、木霊、土霊。この四柱って言われているけど、金霊があった方がバランスは良くて。だけど金霊が人に協力した例はないから、難しいし、空霊、風霊とも言われるそっち当てたかな。どうだろう。こっちはこっちで気紛れで、人に協力する事はあっても永続的に封じられるなんていう契約しないと思うんだよね。家系で代々って事もないし」

「……リオンはそれと同等の結界を張れる?」

「……かもね。僕が結界で守ろうと思えば幾らでも守れるかもしれない」

「……」

「出会った人全て、結界術を施して、永続的に……。する気もないけど」

「……それは」

それは。

「助けてたくもないとか、関係なく。僕は助けない事の方が多いいのに、目の前で撃たれると、助けちゃった。目が合ったからかな。そんな事、珍しいし。見捨てるのは確かに普通だし、普段通りなのにね。確かに親切しちゃった。でもそれが僕ではないから、信じちゃ駄目だよ、その一面だけ信じていたら手痛い目に合うよ」

「……、人の所為に、したくないからと」

「言ったね、そんな事。でも、それは、……僕に賞金が掛けられたのは父親の所為だと思っているし、生きているのはお師匠様の所為で、だけど僕がそうさせる力を持ってしまっていて。……どうしようもない事考えちゃうから、嫌だなって。力の使い方の理想を探して迷子かも」

「……そう」

「食事の時に話す話じゃないかな。冷めちゃうし、食べるのに集中する?」

「……ん」

「うん」

食べ進める食事は普通に美味しかったと思う。



部屋に帰って、歯を磨いて床に着く。リオンは眠たくないらしく、ソファに座って本を読んでいた。その姿を視界に入れつつ眠りに着こうとするが、目を閉じればリオンが居るのか居ないのか分からなくなった。成る程。ニィでも気配はあった。仕事中は知らないけれど。なのにリオンはまるでない。これが結界術と言うやつなのか。じーっと見ていた、見ていたかった。けれど、昨日より弛んだ気が、起こしておいてはくれなかった。

「……」

目を開けて、カーテンの引かれた窓は仄かに光る。もう、日が昇って……ソファにリオンが居なくて、身を起こして、部屋を見回してもいない。ニィの荷物も自分の荷物もあるけれど、リオンのはなくて、気配が……っ。紐のブーツを軽く引っ掛けて、外へ続こうとする扉を開けて、身が震える。コートはいるか。どこだ。備え付けのクローゼットを開けて、あれ、と思う。昨日から、リオンの気配はない。……うん。身を翻して、水回りのある扉を開く。

「……」

「……」

目が合った。紫の……右目?ビックと、瞠目した目に、扉を閉じる。

「ごめんなさい」

ごんっと、額を扉に当てて目を閉じる。

「ごめんなさい」

緑の目であったのに。明るい緑だった。それは左目。

扉が開く、右目に眼帯をした。そういえば、服は着ていなかっただろうか。首を傾げる。今は白いゆるっとしたシャツに、ゆるいズボン。スリッパである。

「ごめん」

「良いんだけど、よくないけど。あー見た?」

「性別の分かる物は何も」

「……うん。それは良かった。うん、でもそっちじゃなくて、……。目は忘れて」

「……綺麗だった」

そう、とても。

「霊石だよ。霊獣の瞳。霊獣の瞳の霊力で僕の霊力は封じられている。この霊石は霊力の受領もする。そういう術を掛けている。封印しながら、そして封印術に霊力の消費をし、普通の人には必要ない様な、霊力許容の高い霊石を必要とした」

「……霊獣」

「うん、知らない人の方が多いのかな。世界の霊力量最大値と言われる、霊石に宿って獣と為して、体はその霊石であり、血肉の通わないそれでありながら、石に戻る事はない。瞳のままでありながら、馬鹿げた霊力値の霊石。それに封じられなければいけない僕の霊力値は、恐れて賞金を掛けるに値するみたいだね」

「……分からない」

「まっ、気にしないで」

「……ん」

何をだ。うん。

「スープ作ったけど、食べる?あとなんちゃってキッシュ焼いた。食べる?っていうか食べて。僕霊力消費の仕方に頭使い過ぎて、糖分とかカロリー消費激しくて、甘重のがメインでさ。普通の食事食べてばっかりで、あれだね。ちょっと疲れて来たかも」

「甘重」

「キャンディばっかで賄おうか」

「……」

それは重いのだろうか。偏食家?

「でも子供にそれさせるのもね。用意するし、と邪魔だったね。ごめん」

避けた先の扉は水回り。まぁ、口をゆすいで、顔でも洗うかと、リオンと入れ違いに入った。

リオンの作ってくれた料理は美味しかった。昨日食べたものよりずっと。失礼か、これは。

「美味しい」

「そう、良かった」

そんな訳ででもなく、昼頃から病院に向かった。

「こんにちは」

「……こんにちは」

「こんにちは、と」

ノックして入った先にいるのはニィで、ベッドを起こして座っていた。穏やかな様子で。

「はい、こんにちは」

「なんで、いるのさ」

クロロさんが挨拶してきて、リオンは訝る様に言った。

「どうしてって、御守りに?」

「それぐらいするし」

「おや、結界術を?」

「病院の人は入れないと困るから、敵意サーチ付きにしちゃったけど、ピンポイントで拒絶したいものもあるもんだね」

「そこまで嫌われる覚えもないんだけど。良い条件出したでしょ」

「そっちが勝手に賞金掛けたんじゃん」

「……確かに」

クロロさんは妙に納得した様な表情でもあるけれど。

「君に害意が無いと証明しろと強要するのはこっちの勝手ではある。普通、悪い事をしなければ、そんな難儀なもの掛けられない。例え君の親が罪深かろうと、君が強大な力を秘めていようと。それは問題視されるべきではないし、君が全くもって、痕跡を残さない生き方をしていようと、それは君の自由であって然るべきなのだけれど、人というのは疑心暗鬼に陥りやすいらしい。君の父親を殺した機構である。君が隠れて生きるには何か企てているのではないか、君がその力を使って何かをすれば、機構は壊れる」

「過大評価。あと隠れているのはそっちが探すのが先じゃない?そっちこそ僕の霊力で何をしたかったの?」

「さぁ?そろそろガタが来ていると言われる地獄の結界の交換とか?地獄の抹消とか?私もその辺り知らないけれど」

「法務課でしょ」

「掛けたのは軍でなく、機構本体の審議会であるから」

「ガタとか抹消はスルーか?」

ニィの問いにリオンは首を傾げて、クロロさんは首を竦める。

「私の知る範疇ではないから、すまないね」

「結界術は劣化しやすいし、何か島丸ごと結界で封じたぐらいだから、当時の機構ではどうにもならないモノが中にあるのかなぁと」

「封印術でなく?」

「そうだね。封印術の方が劣化はし難いかも。だけど色々制約出てくるし、その範疇に収まらなかったんじゃない?」

「どういう範疇だ?」

「んー、島丸ごとってなると、霊力値結界より食うかな。その地の霊力使えるなら結界術の方が楽かも。対人だとそれを上回る能力相手にあったらどうにもならないし。その辺り精霊王とかの協力でどうにかし易いのは結界かも」

「かも、なのか」

「僕なら結界術と封印術の併用するし。そもそも敵対したくないし。封印術って相手の了承あるとやり易いんだよね。それが脅しにしても、うんと言わせれば言い訳。それが僕は僕にしかしないから、なんというのかな。自分でどうにか出来ないモノに手を出したいと思わない」

「……そうか」

「君は正しいんだろうねぇ」

リオンの言葉になんとも言い難い様な笑みをクロロさんは浮かべていた。

「リオンは父親の事で賞金を掛けられるのに、同等の親ではならない?」

疑問を口にすれば、クロロさんに首を傾げて困った様に笑まれた。

「君は人を殺さない事を証明しただろう?それに同等というだけで、それでは無く、罪人でもないからね」

「……それで、証明にはなる?」

クリセラの事。

「育ちが問題と」

「育てる者は大切と分かったよ。君はそう利用されたと思っても私を恨みもしないし。しかし元々強い子かもしれない。血がどうであろうと、育ちがどうであろうと、どうでも良く、全てを受け流してしまう様な」

「……」

なにであろうか。

「ただそうだね。あの子が気を許した子が、優しい子であって欲しいと思ってしまったんだ。イオが良い子であってそんな子に惹かれるなら、やっぱりあの子は殺したくて殺している訳でもないと。親の願望かな。望むままに殺していても愛せたら良いんだけど」

「……」

「また会ったら優しくしてあげて欲しい」

「……」

「君の普通で良い」

「……ん」

「それ、僕が会ったら面倒臭くない?」

リオンが首を傾げる。クロロさんの子のクリセラが最初に殺した賞金首はリオンの父親で。

「恨んでいないならそう言ってあげて欲しい」

「顔も知らない人の事で恨みやしないけど、それって自分の思い入れで自分の事責めてるって事でしょ。それは僕にどうしようもなくない?」

「まぁ……そうかな」

「あと、マリナにも理想を押し付けないでね」

「……すまない」

リオンの言葉に、こちらに謝られるのだけれど、よく分からないものが、そうだったのかと思わなくもない。理想か理想でないのか。この人が人を殺したり殺さなかったりする中で、クロロさんは人が人を殺さない事を望んでいて、そうでなければと願っている。

「機構は嫌い?」

殺させているも同然の組織の気がして。

「好き嫌いでは……けれど私には正義というものが分からなくてね。正しいというよりも、良い組織になってくれたらと思うよ」

「正しいは良くない?」

「それはそうではないと思うけど。リオンに賞金が掛けられるのは正しくないと正せるものの様に思うけれど、それが良いのか悪いのか分からない」

「……良いと思うからしたいのでは?」

「そうだね。だけれど、私の主観だから、誰かの都合を踏みにじるのは、私にとっての良くない機構とやっている事は同じだ」

「……そう」

それはまた。

「矛盾してない?正義が分からないとか言いながら、僕の賞金は正しくないからって、正すの?」

「矛盾を抱えているなら、私も随分と人らしくなったと思う」

「えー」

「条件を出しているだろう?必要もないのに」

「……そーだね」

笑んだクロロさんに、リオンは力なく息をついた。

「さて、私はお暇しようかな」

「えー、本当に何しに来たのさ」

「イオ君とマリナ君の様子を見に来たんだ。回復は順調そうであるし、マリナ君も昨日より顔色が良さそうで何よりであるんじゃないかな」

「あぁ……そう」

リオンは静かに言って息を落とす。

「では、また」

出て行くクロロさんを見送り、リオンは窓辺の椅子に腰掛ける。

「なんなんだろ。あれは」

「さぁ」

「まぁ、だろうけど」

リオンは息を落とす。

「苦手?」

「苦手と言うか、なんと言うのか。んー、多分、捕まるならあの人かもなって言うのかも。危機感?警戒心って言うのが煽られるの、二人目かも」

「二人目?」

「一人目は見ず知らずの通りすがりの人で顔も覚えてないけど、なんか気になって付けたら、バレて目が合った」

「へぇ」

「術師でもなんでもなかったし、A級でもなかったけどあれはイオより強くて、フーリィ大将より強い」

「フーリィ?」

「……」

「うん、さっきまで居た」

「クロロさん」

「うん制服黒いけど、他に二人あの色の制服居るよね?確かに一般に多いいのグレイで目立つけどさ」

「髪黒い、目も黒がち、それと名前そんなに短かった?」

「フリティラリア、略してフーリィ。駄目?」

「……そう」

「なんでもいいけど、あの人イオに名乗らなかったの?」

「あぁ、仕事上の知り合いだと聞いていました」

「それはそうだろうけど」

リオンはなんとも言えない様子で、呆れているのかもしれない。

「リオン?」

「あぁ、うん、そうだね。あの人が君らと敵対する理由もないんだから警戒しろって方が無理なんだろうけど」

「……リオンそういうの興味ないのでは」

「ないけど、なんだろ。やっぱりムカつくのかな。掛けるも外すも向こう次第、勝手に決められて決定権がない」

「……条件、破る?」

「その理由もないんだよ」

「……そう」

積極的に拒絶するものでもないらしい。

「まぁ、いいや。外すにしても目立たない様にして欲しいものだけど」

「目立つ?」

「その特異性で、名前に印象を持たれるのは面倒。よくなくなくも無い名前だし、名前だけでは大丈夫だと思うんだけど。悪目立ちしたくないんだよね」

「……」

「言わなかった?例え僕から賞金が取れても、絶大な霊力源を欲しがる人は幾らでもいるんだよ。もうなんかいないものとして扱って欲しいわけ。研究虚しく死んだとか、架空の賞金首的な?機構が仮想敵作りたがったでも良いから。アホみたいな霊力持った僕は居ない事になりたいなぁと思う」

「……リオンは居る」

「そう実在するクセして、幻想の中で一人歩きさせて、蔑ろにされたい」

「……そう」

よく分からないけれど。

「取れたら取れたで、機構の認識範疇外の者となるのでは?」

「是非、その方向で表向きは公表されて欲しいものだねぇ」

「……ん」

それはつまりなにであるのか。実在する人物ではなかったという事?幻想上の生物?リオンは居るけど居ないも同然になりたいと。

「目が合った人が居ると言っていたが、実在するだろう。あと師匠か」

「お師匠様は死んでるし、一人が居たと言った所でね。よっぽどの発言権が無いと、居ないも同然じゃない?」

「機構はそこまで発言権が?」

「どうだろ。ある程度の信用はあるのかもね。信じていない、疑っている割に、惑わされる。それでいってもやっぱり、賞金取り消しは微妙」

「そこに居るのを、フーリィと言う人が証明するからか」

「そうゆこと。賞金首のクセして、賞金稼ぎを危害を加えないって、立証されたって言われたら、僕が居るって事だもん。賞金が掛かって無くても、僕の霊力利用する為に僕を探す人は居なくならないだろうし。その霊力利用して逃げ回れば良いっちゃ良いんだけど」

「では、どうしてここに居るんだ?」

「……」

「望むものが手に入らない所か不利になり得て、元々縁もない通りすがり。どうしてここに居るんだ?」

「……居て欲しくない?」

「それはまるで思わないが」

「マリナは?」

「……居て……」

居ないと不安になる。けれどそれがリオンの望むものべき事でないなら。どうなのだろうか。

「そんな訳で居る」

「ん?」

それは、望んでしまうから?一人は不安で堪らなく、探すから?

「ごめんなさい」

「あぁ、違う。……僕に居ても良いよって言ってくれる人なんて、まぁほぼほぼ居なくて。……友達と一緒に居ても良さそうだったんだけど、僕と居ると面倒になりそうだから、……君達には面倒掛からないみたいだし、良かったよ」

「……リオンには掛かるが」

「そうかもね。だけど、殊更今までと変わる訳でもないから、大丈夫だよ」

「……そうか」

「リオンも、一人は不安で胸が詰まる?」

「……ん、どうだろ。慣れてはいるし、仕方なくもあるから」

「仕方ない?」

「術師っていうのは、嫌われる者で、疑われる者で、それが普通だから」

「よく分からない」

「うん。ただ僕のお師匠様は、街で疫病が流行った時に、疑われて殺されて、誰も罪に問われなかった。それが普通だから。そんなものだよ」

それが普通?

「よく分からない」

「うん、関わりが無いのは良い事だよ」

「変えなくても良い事?」

「自分の都合の良い形に変えたいって、それはどうだろ。それはまた誰かの不都合になるかもしれない。誰かが誰かの為にするならそれはそれかもしれないけど、僕は僕の為に誰かに犠牲をしいたくはもうないし、良いよこのままでも」

「……」

それは、おかしいと思ったなら、変えないと、なのであろうか。

「それも含めて、フーリィという人が苦手なのか?」

「それ引っ張るね。どうだろ。でも自分の為でも何かしたい事が出来たならそれはそれで人らしさなんじゃないの?」

「人らしいのは良い事か?」

「さぁ、でも、あの人じゃない所があるし、気にかかるとか?」

「人じゃない?」

「霊獣の子だから」

「……霊獣の?」

「霊獣って基本石なんだけど、なんだったっけ、昔話だし定かではないけど、昔霊獣に捧げられた少女に霊獣が惚れて、少女の精神を残して融合したんだって。少女は霊獣の力を宿し、人を心底嫌っていた。因みに霊獣って白と黒で対らしいけど、どちらかは定かでない。対の霊獣を見た者がいないから少女は黒髪であるらしいし、白い霊獣の霊石を埋め込まれた僕は白髪であるし、想像するだにあれだけど。それはいいとして、少女は、女性と言おうか、彼女は数百年の時の中である一人の青年に恋をした。それで産まれたのがフーリィさん。あとは人の都合。その霊獣たる彼女を大人しくさせる為に子供を盗み、子供を地獄の門に縛り付けて管理させている。そのフーリィ大将はおおよそ人の気に触れる機会もなかっただろうけど、恋をして子供を奪われた。奪ったのは機構ではなく、機構に虐げられた研究者。機構がその研究を支援していたにも関わらず、素知らぬふりで断罪した。それに自分も加担したそれが機構にとっての正しさであったから。けれど、それによって愛した人の子を人殺しにしてしまった。それなりの衝撃だったんでしょ。他にもっと良い方法はなかったのかって。正しさだけでもなく、実験での犠牲を止めて、それでいて、何かって、答えの出ない、出た所でどうしようもない所で、迷ってるんじゃない。思考放棄をやめて」

「……」

「ごめん長かったね」

「地獄の門に、というのは」

「ん、そこ、えぇっと。地獄は分かる?」

「悪い事をしていると死んだら行き着く」

「うん、今までどう聞いていたのか。日常記憶あって、そこすっ飛んでるの?」

「……」

「仕事換算なのかな。地獄は島丸ごと封じられた牢獄だよ。地獄の門はそこに通じる門。地獄に送るにはフーリィさんの許可みたいのが必要でね、開けて送りつけるっていうか、そういう術があって、送るみたい」

「地獄はどういう所なんだ?」

「さぁ、鬼が出るって話のあった島だったらしいけど、送られた人は返って来ないし、分かんないね」

「……そうか」

「うん」

そんなものなのか。

「機構に虐げられた研究者なのか」

「そういう表現も出来るけど、……まぁ、そうでもないとも言えるし。人死んでも実験続けたし、自業自得は自業自得だけど。その研究表沙汰にしたのは、お師匠様で。普通に捕まえて、普通に処罰されれば良いと。だけど僕が産まれるまで、それを出来なかった。そして僕を父親の元から攫って、研究で犠牲になった子供がいると匿名で訴え、機構を動かした。機構が自浄すれば良いと思っていたんだろうけど。思ったより機構が狡いみたいで、研究を取り上げる為に、一人、というかその研究所だけを悪者にした。だけど、子供に犠牲を強いる実験をしたのも事実だし、仕方ないんだよ。目の前で子供が死んでいくのを見ていたのは、それを続けたのは、機構じゃなく、僕の父親で間違いはないから。そうだね。虐げられたなんて言い方間違ってるよ」

「……あぁ、いや……どうとも」

「虐げられ続けているのはフーリィ大将だよ。大将なんて冠していてもね。彼は自分の霊力を自由に使えたりしない。それが子供の頃からだと、自分の能力も何も知らないだろうね。ただ門を開け閉めする為の霊力源でしかない。……僕はそうもなりたくなくて、逃げ回って、人と関われないのかもしれない。人質なんてなりたくもなければ、いらないでしょ、そんな重荷」

「……」

「人二人ぐらい守れる気でいるけど、どうだろ。イオに下手な手出しをしないと思うのもあるよ。賞金稼ぎのA級って有名人だし、そのよく分からない連れにも手を出さないんじゃない?」

「よく分からない?」

ニィが瞬いてこちらを見た。

「フーリィさんのどうにか出来る裁量の範疇?」

「何の事だ」

「ニィが、……で、引き取った」

「途中だいぶと飛んだ気がするが、……。妹でもなんでもない、と」

「……」

「そう思ってたんだ、似てないけど」

「兄妹なら、似てなくもなるだろう?」

「色味はあれじゃない?猫じゃあるまいし、黒々とした黒髪にルビーみたいな赤みの強い目のマリナと、モンブランクリームの茶色とオリーブグリーンの目のイオじゃ、結構違う」

「歳も離れているし、半分か、施設で、とか?」

「それは、なくもなさそうだけど。聞こうよ、分からない事は、記憶ないんだし」

「記憶が無いのを理由に妹を忘れても良いのか」

「一緒に旅をしていた子を忘れるのは、妹じゃ無くても駄目だと思うけど」

「……すまない」

リオンのこれにだいぶと申し訳無さそうにされて、どうしようかと……。

「雪の中血が流れているのに置いてった、ごめんなさい」

「えっと、……」

「ショック過ぎたんでしょ。はい、お互い様って事ね」

「……」

「……」

「で、イオの分からない事は?」

「……何が分からないか、分からない」

「まぁ、病院の個室居たらそうかな。リハビリとかいるの?」

「腹の筋肉がうんたらかんたらと、肌?痛いか突っ張る?かもで、必要だろうと」

「いつから?」

「……聞いていない」

「調子見つつかな?で」

「そういえば、マリナはどうして、俺と旅を?」

「……」

どうして?

「……服の裾……」

「ん?」

あの時、フーリィさんに打ち明けをされた時、どうしたいと聞かれたかもしれない、けどニィの服の裾を掴んで離せなかったから。

「旅したいからとか?一緒に居たいからとか?」

言ったリオンの方を見る。なんだろうその理由は。

「マリナ?」

なにか最近よく聞かれていないか?上手く答えられない。どう答えて良いのか分からない。

「兄妹だからって一緒に旅する理由にはならない事もあるよ」

「そんなものか」

「そういや僕って双子だったらしいんだけど、片割れがどうなったか分からないんだよね」

「妹がいるのか?」

「さぁ、多分そうだけど、双子で妹とか姉ってのもどう判断するのか分からない事ない?」

「確かに」

「女の子?」

「多分。音波の周波数的には?」

「音波」

「そこの判断の仕方よく分からない。興味の範疇外」

「ん」

姉か妹か。どちらにせよ、リオンの血縁であれば可愛いのか。……造形が似ているとは限らない、と。

「どっちにしろ、旅するには出会って、あとは、一緒にいたいからいるか、訳あり。訳ありっていう訳が聞きたいにしろ、もうそれじゃないんじゃない?」

「それじゃ、ない」

見られて瞬く。

「フーリィさんに言われた理由は解決したけど、……服の裾離さなかった、ごめんなさい」

「……そうか」

優しく笑んだニィに頭を撫でられた。

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