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寝起きの戦い
ピピピピッ ピピピピッ
いつもこの目覚まし音で朝を迎える。目は開かない。開く力がない。
ピピピピッ ピピピピッ
いや、開く必要すら無い。目覚まし時計の位置は把握している。右から2番目の解除ボタンもピンポイントで押せる。……ここだ。
ピピピッ
よし、止まった。
さて……、起きなきゃな……。でも今日は少し肌寒いな……。もう少し籠っていたいな…………。
ーーーーーーすぅ。
……はっ! いけないいけない、ちょっと寝落ちかけていたようだ。
少しくらいダラダラしていたって大丈夫だが、さすがに寝落ちてしまうのは危険だ。
あぁそうさ。起きなきゃいけないけど目を瞑っているという、このギリギリを攻める時間が至福なのだ。
寝たいとは思っていても、寝落ちてしまう訳にはいかない……。
もう少し……、もう少しだけ……したら起きよう…………。
ーーーーーーすぅ。
…………! いや、寝てない寝てない。ちょっと意識が遠のいていただけだ。
とはいえ、そろそろ起きないといけない…………いや、改札口までダッシュすれば、通勤時間を5分は縮められる。
つまり、俺は後5分寝ていられる。
よし、そうと決まればもう少しゴロゴロしていよう。
なに、起きてからテキパキ行動すればいいだけだ。
ここで寝落ちたりしなければ…………。
ーーーーーーすぅ。
そして今日も、電車内で息を切らしながら自分を恨む。