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第3話 鬼のいない節分

申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。

「さっさと本当のこと言った方がいいよ」

 マリちゃんが指を鼻っ柱につきつけたのは、河合・代々木君ペアだった。

「ちぇっ! バレたか」

 と河合君がほくそ笑んで指を鳴らした。クラス中からブーイングが出たけど、「ただの冗談だよ! みんな覚えていたんだから文句ないだろ」

 とよくわからない理屈で話を終わらせてしまった。

 みんな納得できないけど、ここでこれ以上揉めて座席を決めることがモタモタしたらそれこそ先生が強制的にクジを行ってしまうことを恐れて、それ以上誰も何も言わなかった。


 でも、なんでそんなくだらないウソついたんだろうね?

 私は家に帰る途中、気になってマリちゃんに訊ねてみた。

 ていうかなんでわかったの? やっぱりそれが気になるんだけど。

「それぞれのペアが言ってることが全部本当だったとして、あてはめたら席が定まらなかった。他の子たちが嘘をついてるとしたら、さらにほかのペアも嘘を言ってることになるからね。唯一ウソをついていると仮定して他のペアがウソをつく必要がなかったのは河合君たちのペアだけだったから」

 もちろん、みんながウソをついていたらお手上げだったけどね。とマリちゃんは付け加えた。

 なるほどね。え? もちろんわかってるよ!?

 でも、なんでそんなくだらない……うぅん、危険なことをしたんだろうね? 一歩間違えたらクジだったのにさ!

「隣になりたかったんじゃない?」

 隣?……へ? だって席はペアだから最初から隣同士だよ?

「そうだね」マリちゃんがふっと微笑んだ。「そう、そんなこと意味ないんだけど。通路を挟んででも、隣になりたかったんじゃない?」

 え……あぁ! そういうこと!? え、じゃあなに、河合君は……どっちが好きなんだろ?

「まぁそういうことがバレないようにさっさと諦めたんじゃないかな?」

 確かに妙にそそくさと……あれはクジへの恐怖じゃなくて、自分の動機を知られたくないためだったのかぁ。

「あくまで推測だけどね。私には関係のないことだし。ただあれ以上こじらせようとしていたら、発表してあげていたかもね」

 そ、それは怖いなぁ。

 でも、ウシシシ! いいこと聞いた。これで河合君たちの弱みを――

「この話は二人だけの秘密だよ」

 と、いつにも増してマリちゃんの声が鋭い。

 私はうっとツバを飲み込んだ。

 わ、わかった! 人のぷらいばしーだもんね。

「気分のいいものじゃないしね。知ることも、知られることも」


『鬼はそと~!』『福はうち~!』

 スーパーではいっぱいのお豆が出入口に入ってすぐの所に山のように積まれている。世の中にはこんなにお豆があるのかと、いつもホントに驚きだよね。

 だって私たちの町のスーパーだけでもこんなにいっぱい……日本全国に今どれだけあるのかと思うとちょっと怖いよね。

 マリちゃんが今ここにいれば色々教えてくれるんだろうけど。

「年の数だけ食べる分と、お家にまく分と合わせて、これくらいでいいわね」

 とお母さんがノートくらいの大きさの袋を掴んだ。鬼のお面が付いてるやつだ。

 もうお父さんと二人40粒食べないとダメだから多くないとね。

「まだ39でいいわよ!」

 ――我が家では毎年豆まきをして鰯を食べるんだよ。

 今年は鰯を煮てるね。しょうがとお醤油の香りが2階にまで登ってきてる。

 もう18時を過ぎてる。そろそろ鬼が――いや、お父さんが帰ってくる頃だ。我が家の豆まきは本気だ。毎年じゃんけんで負けた人が鬼になるんだよ。

 去年は私だったけど、両親は一切手加減してくれなくて。

 でもそれはお父さんの、行事を大切にする考えを私もお母さんも賛成してるからだからね。一昨年のパパの時は、私も本気で投げてたもん。お母さんの投げた豆でお父さんの顔に赤い腫れができてたのはいい思い出。

 お母さんはジャンケン強いからもう何年も鬼になってないんだよね。

「普段から鬼みたいなもんだよ」とお父さんが言って大根で叩かれていたのもいい思い出。

 そろそろかな? と私は一階へと降りて行った。

 するとちょうど玄関の開く音がした。

 お父さんだ!

 私は一度キッチンへ立ち寄り、お母さんに声をかけ、豆を手にして玄関へ向かった。

 わっ!?

 お父さんはすでに準備万端だった。鬼のお面をつけてすでに待ち構えていた。お面は節分用の豆のおまけでついてるような紙のお面。わざとくしゃくしゃにした薄茶色い髪が乗る頭の上に見える、道路の街灯が光っているのがちょっと間抜けだ。

 ビニールのゴミ袋を赤く塗ってポンチョのようにしている。上半身だけの簡易な鬼だけど手は込んでる。ていうか外で誰かに観られたら流石に恥ずかしくない!? 

 袖をまくった両腕を挙げて、『ぐぉぉっ!』なんて声を出している。でもすごい迫力の声。

 あ、手に持ったスマホの画面を見た感じ、何か再生しているみたい。

 そこまで準備万端ならさっさと追い払わないと!

 鬼は外ー!

 お母さんと二人、さっそく豆をぶつけた。少し痛そうに身を縮めたけど、それくらいで終わってちゃぁ菱島家の節分とは言えないね。

 お父さんもノッてきた! ざっと廊下に上がってきて、こっちを追いかけてくる。

 私たちはそれぞれに逃げて、お父さんを見つけては豆をぶつけて、また逃げて……を繰り返した。

 そんな楽しい節分が、一瞬のうちに終わりを迎えた。


 ガチャ……。

 玄関のドアが開く音……?

「ただいまー!」

 え……? お父さんの声?

 私たちはリビングから身を乗り出し玄関に立つお父さんを覗き込んだ。

「いやぁ。ごめんごめん。道路が混んでてさぁ……どうしたんだ二人とも。そんな間の抜けた顔をして……」

 いやああああああ!?

「え? なになに!? どうした!?」


 それからすぐに通報して警察が駆けつけてくれた。

 泥棒に成りすました鬼……じゃなくて、鬼に成りすました泥棒!

「いや、大胆な犯行でしたね」

 駆けつけてくれた刑事さんたちもどこか笑うのを我慢しているように見えた。

 お母さんはショックというより、悔しいのか恥かしいのか顔を赤くして下を向いている。

 ご近所の方がいっぱい集まっているから無理もない。もう、見世物じゃないのに……。でも私も逆の立場だったら……お隣が警察を呼んで、パトカーが来てたら……見に行っちゃうよね。

 今は家の中を警察の人が調べているので私たちは外で順番に話を聞かれていた。でもぶっちゃけると、豆まきに夢中で大したこと覚えてないんだよね。お父さんに至っては犯人を見てないから話すことがないって言ってた。

 私はぼうぜんと辺りを眺めていると1つの知らせが飛び込んできた。

「安田刑事、この付近で3名の不審者を見つけまして、同行していただいております」

 と警官さんが駆けつけた。

 私たちは目撃者としてその人たちを見ることになった。

 周囲の野次馬に見つからないように家の裏に通されて、タブレット内に保存された写真を提示された。

 一人目はメガネをかけた男性。年は大学生くらいだろうか。暗めの茶髪で整った印象はない。手にはコンビニ帰りのようなビニール袋を持っている。お父さんよりは背が高いかな? 猫背な感じもあってちょっとだらしない感じ。そのビニールに透けて見えるのは鬼のお面!

「この人のお面!」

 とお母さんも驚いていたが、

「残念ですが、この後の二人も同じものを持ってます」

 と刑事さんに言われた。むしろ、不振と言うか、鬼のお面を持っていたから捕らえられたみたい。私たちが準備していたお面と一緒だったから印象深かったけど、要するにどこでも手に入るお面だったってことだし、今日そのお面を持っていたとしても、全く不審ではないのだ。

 二人目は、女性だった。黒髪の自然なショートヘアの女性で、小ぶりだが金色のピアスがこの女性に勝ち気な印象を与える特徴だった。大きなトートバッグを肩から提げている。この人はお父さんと同じくらいの身長だ。

 三人目は、また男性だ。さっきの人よりは年上だと思う。もう夜だというのに整った黒い髪は、この人が清潔な人だって印象を与えてくれる。目立つのは少し大きいリュックくらいかな。キャンプにでも行くみたい。このおじさんの頭部から上にはみ出て……ってほど大きくはないけどね。背筋はシャキッとしているけど、お父さんより背は低い。

「犯人の容姿とか覚えてますか?」

 改めて尋ねられたけど……う~ん……。変装でほとんどわからなかったし。あ、でもお父さんより背が低かったよ!……多分。

「え、ホント?」と言ったのはお母さんだ。「お父さんより低いとは思わなかったけど」

「う~ん……」

 刑事さんも頭を悩ませるような答えしかでてこない。

「3人には署で待ってもらってるんです。申し訳ないですが、一緒に来てもらえますか?」

 私たち家族は乗車するために再度表へと移動してきた。車を持ってくるまで待っていてくれという指示のもと、家の前で待っていると、ここで、もう一つ朗報が入ってくる。

 あ……! マリちゃん!?

「どうしたの? たまたま近くを通ったら騒々しくて来てみたけど」

 マリちゃんの後ろにはマリちゃんのおじいちゃんがいた。どうやら二人でおでかけしていたみたい。

 私は、すがる思いでマリちゃんに話してみた。本当は簡単に、特に不審な人3人のことは話しちゃダメなのかもしれないけど、まぁマリちゃんになら大丈夫だよね?


 マリちゃんは特に相槌を打つこともなく、私の話をじっと黙って聞いてくれた。

 私が話し終えると、マリちゃんは特に驚きもせず、

「服装は?」

 へ?

「3人の服装。どんな格好をしていたの?」

 えっと……一人目のメガネの人は、確かリクルートスーツだったと思う。でもサンダルだったかな? クロッ●スみたいな。

 二人目の人もパンツスーツ姿だったかな? コートも手に持ってたけど。靴はパンプスだったと思う。ヒールほど高くはなかった。

 三人目のおじさんは普通の革靴だったよ。この人もスーツだったけど。時間帯的にも仕事帰りの人が多いし。

 スーツの色はそれぞれバラバラだったけど、お父さんとは違う色。でも私もお母さんも覚えてないから意味ない……。

「ふーん。なるほど。ちなみに、もし覚えていたら教えて欲しいことがあるけど……」

 マリちゃんが前髪を指先で払った。

「それよりこの後警察に行くんだよね? だったらこの人のここを覗いてみて」


 マリちゃんが聞きたかったことはなにかな? そして指摘した場所ってどこだと思う?

 私はえぇ!? ってなったよ……。どうすれば自然と覗けるかな……。

 ちなみにお父さんは髪は短くて黒いよ。特にセットしてるわけじゃないけど。

隔週日曜日更新していきたいと思います!

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。

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