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第1話 不愉快な自販機

申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。

 小学6年生になるマリちゃんは、どこにでもいる小学生だと一年前までは思っていた。

 普段のマリちゃんは、気付けばクラスでの背は低めになっていた大人しい子だ。

 えっと、つまり、みんなが成長早すぎるんだよねぇ!

 え!?……そりゃまぁ、私の方がマリちゃんより背は高いけど……。まぁそんなことはどうでも良くて!

 マリちゃんはあまり自分からお話をしてくれることは相変わらず少ない。休み時間は相変わらず本を読んでることが多いし。

 だけど、最近は私や、他のお友達が話しかけてくることも多く、するとマリちゃんは本を読む手をやめて、みんなのお話をしっかり聞いてくれるのだ。

 2学期も半ばをすぎた頃から、私が彼女のことを「マリちゃん」と呼んでいることがクラスにもしっかりと浸透したみたいで、気が付けばみんながそう呼んでいる。

 私は、なんとなく悪いことをしたかも、という、心苦しさを感じてしまい、それとなく聞いてみることにした。

 私が声をかけると、マリちゃんはきちんと、読んでる本についてる紫色の紐の栞をはさみ、ぱたんと綺麗な音を立てて本を閉じてくれた。

 そして私に顔を向けて「どうしたの?」と訊き返してくれた。マリちゃんが顔を動かすと、黒い髪がさらさらと繊細な音を立てて舞うのが私は羨ましかった。シャンプー何使ってるのかな? っていうのは今度訊くとして。

 私が付けたあだ名でみんなが呼んでいることは嫌じゃないか気になったことを伝えると、マリちゃんは素早く瞬きを2回程して……。

 少し間を置くと、

「大丈夫だよ」

 とだけ言って、また本に戻ってしまった。

 マリちゃんの後ろで、赤いリボンに結ばれた毛先が左右に小さく揺れる。後頭部のやや上あたりで結ばれたリボンは羽根を休める蝶のよう。

 私がほっと胸を心でも体でも撫で下ろしていると、

「サキちゃんが気にすることは一つもないから」

 と、まるで本にお話するようにぽつりとそう言ってくれた。

 マリちゃん……どうやら私の考えを見抜いてるんだね……大人な対応、カッコイイ……。

 あはは……自分がすっごい恥かしくなってきた。

 あと、私の方が名前で呼ばれることに照れてるね!


 今日は授業の後は委員会も何もなかったので、マリちゃんと二人で帰っていた。今日はマリちゃんが図書館に寄って帰る日なので少し遠回り。学校の帰りにコンビニとかお店に寄り道すると怒られるけど、図書館なら大丈夫だよね?

 少しくらいの遠回りは問題なかった。なにせこの時期は、来月の2月にある修学旅行のお話でもちきりだ。来週にはバスの席を決めたり、夜の部屋だとか自由時間の班決めなんかもあるんだよね。

 もちろん、私はマリちゃんと一緒に決まってるけどね。ていうか、もうその前提で話を進めてるけど。

 え? マリちゃんが嫌がったらどうするのかって?

 残念……マリちゃんに拒否権は無いんだよねぇ。

「サキちゃん、私窓側でもいい?」

 ほらね。もうマリちゃんは私の隣、はい決定!

 ――なんて二人で話していると、ふとマリちゃんが足を止めた。

 その視線の先には、自動販売機が見えた。

 あれ? こんな所に置かれてたんだね。冬休みの間に設置されたのかな?

「かもね」と言って再び歩き出した。

 マリちゃんも知らなかったみたいだ。まぁ図書館に行く日以外はこの道は使わないし、道はいっぱいあるからここを通るのは実質去年の秋以来かも。

 紺色の機体がでんと道の端に立っている。近づいて行くにつれて、『Sontoq』と、側面に白い文字が縦に書かれているのがわかった。

 二人の中学生の男の子が楽し気におしゃべりしながら商品を眺めている。

 やがて手前の男の子がお金を投入した。

 あ、500円玉。私500円玉好きなんだよね。

 ねぇマリちゃん知ってた? 『0』の中に『500円』って書かれてるの。

「あれは凄いよね」

 あ、やっぱり知ってたんだね。まぁそうだよね。

「表にも裏にも『NIPPON』って小さく彫られてるの気付いてた?」

 へ? ウソ!? 知らなかった……帰って見てみる!

 マリちゃんの方が500円好きだったみたいだね。ちょっと悔しいかな。

 なんて思っているとちょうど男の子二人のそばに差し掛かった。

「くぅ~!」先に買っていた男の子があの人みたいな声を出している。「やっぱ寒い冬はあったか~い缶コーヒーに限るぜ! そう思うだろアキツ!」

「確かにな。ほら、さっさとどけろよたけやん」

 アキツと呼ばれていた男の子がボタンを押した。同じ缶コーヒーみたいだ。

 ていうか、やっぱりみんな寒い時期はあったか~い飲み物がいいんだね。売り切れがぽつりぽつりと目立つ。少し白んだボタンの向こう側からかすかに売切を主張していた。

「次はオレがジエイになる番だぞ」

 アキツさんはたけやんさんを押しのけるようにして取り出し口の蓋を少し開けてから、もぞもぞと手を動かしてから缶コーヒーを取り出した。

 いいなぁ~。私もあったか~いココア飲みたいなぁ。

 なんて思いながら、男の子たちの背後を三歩過ぎ去った時だった。

「えぇ!? ウソ!?」

 アキツさんの声が轟く。

「うっせーな。なんだよ」

「なんだかオレの缶コーヒーぬるくね!?」

「はぁ? んなわけ……」少し沈黙。「ホントだ! ていうか冷た~くね!?」

「はぁ!? 最悪だし!」

「はっは! ダッセー!」

「うっせーな! 別にダサくないだろ!」

「うん、ダサくない」

 マリちゃん!? いつの間に!?

「その缶コーヒー、飲むの待った方がいいですよ」



 さて、マリちゃんは一体どっちの男の子に言ったんだろう?

 一体何が気になったのかな?

一先ず次回は3週目の日曜日更新していきたいと思います!

以降は毎月1日はマリちゃんの日です。(予定です)

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。

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