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第六話   手抜きっていうのも意外に大変なものだ。

アンケートが思った以上に集まらないのでもう少し延長したいと思います。

前回までのあらすじ。


今のところ要警戒が必要な人物たちに見られながら聖夜と勝負をする。


P.S ノインさんはからかうと真に受けすぎるので気をつけようと思った。





若干緊張しているように見えるように体を強張らせながら聖夜の振り下ろしを木剣で受ける。


剣を弾くと右胴に向かって木剣を放つが、聖夜は僅かに足を引いてそれをやり過ごして僕の右脇を狙って剣を放つ。


剣を振った勢いを殺さずにそのまま上体を屈めてかわすと、聖夜の右足が低くなった顔を目がけて突き出されてきたので木剣で逸らしてそのまま剣先を聖夜の顎目がけて突き上げる。


それを聖夜は顔を傾けてかわすと木剣を振り下ろした。


「よっと」


それを横に飛んでかわして右手で地面をつくとそこを軸に立ち上がる。


「はぁっ!」


聖夜の強烈な薙ぎ払いを左手を刀身に添えて受け止める。


「・・・・相変わらずの重い一撃で」


「そういうお前こそ相変わらず身軽だな」


受けた手から伝わる衝撃の痺れを確認しながら目の前で楽しそうに笑う聖夜に話しかけた。


聖夜とその周りの女の子絡みで喧嘩事に巻き込まれることも少なくはなく、そのときに僕の戦いぶりを見ている聖夜は学校での僕からは想像できない戦いぶりを見ても何ら動揺をしない。


聖夜が僕の戦い方を知っているように僕も聖夜の喧嘩を何度も見ているので戦い方を理解している。


「ぜぇいっ!」


聖夜が木剣を押してきたのでその力に逆らわずにサイドステップを踏んで無理せずにかわす。


「でやっ!」


聖夜が木剣を次々と繰り出して猛攻を仕掛けてくる。


聖夜の戦い方は持ち前の運動神経を存分にいかした力押しの戦い方。剣道を軽くかじったことはあるらしいけど喧嘩をしている回数のほうが圧倒的に多いためかさっきの蹴りのような攻撃が出てくることもある。

喧嘩で鍛え上げられた剣とはいえ、そこは天に愛されているように才能に恵まれている聖夜でありそこらへんの剣道家よりは強い。実際、前に全国に出たとかいう他学校の生徒に勝ってたし。


「よっ、っと、せっ」


対して今の僕の戦い方はのらりくらりと攻撃をかわして隙を見てはカウンターを打つ後の先の戦い方。まともに聖夜の攻撃を受けていいたら力では勝る聖夜に押し負けてしまうし基本的に鍛えているとはいえ、そんな馬鹿力でもないので攻撃は受けないでいる。


「ほっ」


かわしたときの勢いを利用したまま一回転をして左袈裟に木剣を振り下ろす。


「甘い!」


「わっ」


それを受け止めると聖夜はそれを思いっきり弾き飛ばしたので僕の体がおよぎ、すぐさまその隙を狙って聖夜が木剣を切り上げてきた。


「っと、・・・危ない、危ない」


バク転でそれをやりすごすと後ろに跳んで距離をとる。


さて、どうしたものかな?


この試合の目的である自分の今の身体能力の把握ならもう終わったんだよなぁ・・・・。元の世界より二倍から三倍ぐらい能力が向上しているのが分かって、この状態での慣らしもさっきまでのやりとりで済んだ。

 下手に実力を見せるわけにもいかないけど、下手な終わり方も出来ない。ほどほどの実力を見せつつ負けて、なおかつグレゴリオとリベリスに実力を見誤らせなくちゃならない。出来ればリデアさんの目も誤魔化したいところだけど、あの人は僕を疑ってるし、眼も肥えてるみたいだからそれは難しいだろうな・・・・。


そんなことを考えながらも聖夜から目を逸らさないでいるのだけど、何故か聖夜は攻撃してこないで手元を見ながらブツブツ言っている。何だろ・・・・?


「で、確か【我が従えしは炎!『炎撃ファイヤ』】!」


って、ええぇっ!?いきなり何してんのさ!?普通に魔法らしきものが発動してるじゃん!


驚きながらも炎の動きは単調なもので聖夜が突き出した木剣を持つ反対の手から真っ直ぐに尾を引きながら向かってくるだけだったので横に飛んで避けた。


・・・・うん、魔法だね。普通に燃えてるしね。


「うしっ。案外簡単に出来たな」


「いきなり何するんだよ?当たったらどうするつもり?」


「いや、お前ならよけられると思ったからな。アイシャに魔法を少しだけ教わってたから試してみたくてなったんだ」


事の元凶らしいノインさんに視線をやってみれば驚いた様子で聖夜を見ていた。


あの様子からして聖夜は簡単って言ったけど、多分そんなに簡単なことじゃないんだろう。それを簡単にやってのける辺り聖夜らしいといえば聖夜らしいんだけど、僕を実験台にしないでほしい。


「・・・・僕は魔法使えないんだけど?」


「別にいいだろ?動きは単調なんだしよ。ってわけで【我が従えしは炎!『炎撃ファイヤ』】!」


よくない!っていうか、今度は数が増えてる!?


射線上から走って逃れ十の炎をかわすと、今度は聖夜が接近してきて木剣を繰り出してきた。


「ちょ、待って。魔法はせこいって」


それをかわしながら聖夜に抗議をして反撃の一撃を放つ。


「それをかわしてから言っても説得力はないぜ」


それを軽々と聖夜は防ぐと斬りかえしてきたので、それをかわして右薙ぎに木剣を放つと聖夜がそれを片手で持った木剣で受け止める。


「【我が従えしは炎!『炎撃ファイヤ』】!」


「どわっ」


聖夜がもう片方の手を突き出したのを見て交わっている木剣を軸に半回転して後ろに回りこんでかわすと蹴りをお見舞いして突き放す。


「ぐっ・・・。十分に戦えてるじゃないか」


「いや、あんな炎を出されたら誰だって必死になるでしょう?」


木剣と違って当たったらただじゃすまないし。


「次いくぜ!【我が従えし」


これ以上長引くのも面倒だしそろそろ終わらせるか。


僕は木剣を二度振って左右からの斬り上げを行うが、当然離れている聖夜に木剣は届かない。けど、僕の攻撃は届く。


「はほ】ちっ!石か!」


木剣で弾いた石の一つが聖夜に向かっていき、それに気づいた聖夜は詠唱を中断して回避した。


石を放つと同時に走り出した僕に聖夜はもう一度、手を向けた。


「【我が従えしは】くっ!?今度は剣!?」


石が来ると思っていた聖夜は僕が木剣を投げたことで再び詠唱を中断させられる。


二回の詠唱中断の隙に僕は既に聖夜に手が届く範囲まで接近していた。


聖夜が現在木剣を持っている右手とは逆の左手側から右足の蹴りを放つ。


それを左手でガードされるとすぐに右足を地面について踏み込み、左手で聖夜の顔を目がけて拳を放つ。


それを聖夜は持ち前の反射神経で首を傾けてギリギリかわすと当身で僕を押し返し、押し返された僕はすぐに右手で殴りかかる。けど・・・、


「そこまで!」


審判をしていたリベリスの声で僕らの動きが止まる。


「・・・・俺の勝ちだ」


「だね・・・・」


僕が殴りかかるより聖夜の木剣が僕の首筋につけられうほうが早く、勝敗は聖夜の勝利で終わった。


「やっぱり聖夜には敵わないか・・・・」


「剣を手放さなければもっと粘れたんじゃないか?」


「馬鹿言わないでよ。魔法なんて反則技を出されたんだ。長引かせたら僕のほうが不利になるし、剣でも投げる奇策を使わないと勝ち目なんてなかったよ。・・・・まぁ、負けたけど」


そう言って肩をすくめていると、リベリスが近づいてきた。


「奇策も結構だが、勝負を決めにかけるのが早かった。もっと粘ってから実行したほうが堅実だったな。石を弾いて攻撃できるならそれで対抗策も練れただろう」


「あれはそんな大層なもんじゃないですよ。石なんてものは少し注意すれば簡単に対処できます。通じるのは後二回か三回だったはずです。だから奇襲に慣れる前に、と思ったのですがこの様ですよ」


「戦い方も二人は対照的だったが、どちらも並以上ではあったな」


リベリスの戦いの講評を聞きながら、周りに視線をまわすとこちらに向かってくるノインさんとトリアさん。


よく分からない眼で見ているリデアさんとどこか安堵しているかのような眼をしているヴィーゼさん。


そして、こちらを睨みつけているグレゴリオがいた。


・・・・うん、挑発もうまくいったか。僕の実力のほうも聖夜の魔法がいい隠れ蓑になったし、終わらせるまでの都合のいいシナリオも思いついた。案外聖夜が魔法を使ってくれて助かったな・・・・。














〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




広場から戻る道すがら私たちの他に誰もいないことを確認して母様に尋ねた。


「母様、彼に母様が言うほどの実力は感じなかったのですが?」


アイシャが言うに簡単な原理聞かせ、『炎撃ファイヤ』を見せただけで再現してみせたその才能は恐ろしいとは思うが、剣術では私より劣っているだろうし魔法も現時点では私に及ばない。

 そんな勇者に母様が何故それほどまでに興味を抱かれるのか不思議でしょうがない。


「そうね。私も感じなかったわよ」


しかし、母様は平然とそう返した。


「どういうことですか?母様の勘違いということですか?」


「勘違いじゃないわ。今でも、いえ、さっきの試合を見てますます欲しくなったわ」


「・・・・おっしゃてる意味がわからないのですが」


母様の矛盾した言葉に困惑しながら意味を聞いた。


「そうね・・・。あなたはあの試合を見て何を感じたのかしら?」


「それは、あの勇者の魔法を僅かな知識から再現した才能は確かに素晴らしいとは思いますが、剣術、魔法共に現時点では私よりも劣っています。だから、なおさら母様が彼を欲しがる理由が分からないのです」


「あなたも同意見かしら?」


私が正直に答えると、お母様は護衛についている騎士、ロイに問いを向けた。


「私も姫様と同意見でございますが、もう一人の勇者の石を弾いて攻撃する技能、その行動と剣を投げるなどの奇策を瞬時に思いつく頭脳、そしてあの身軽さは評価をしていいものかと」


そういえば、そうね。確かにそこそこはいいものだとは思う。


「けれど、彼は負けました。技能もさほど難しいことでもありませんし、その手の手段なら思いつく兵はいるでしょうし、身軽さも隠密などに比べれば劣っています。並よりは使えるでしょうが、私と母様の部下の実力と比べればどうしても劣っています」


そういう点で言えば、勝ったほうの勇者、確か、セイヤ・ヒカリという名前のほうが私達の部下でも下の者どもになら渡り合えるということで評価できる。


しかし、その程度の人間を母様が欲しがるとは思えない。


「そうね。二人とも言っている事は正しいわ。・・・・表面的に見れば、ね」


「どういうことですか?」


「あなたたちに何故、宰相が広場から出て行くときに不機嫌だったか分かるかしら?」


そういえば滅多に表情を崩さないあいつが広場から出て行くときはやけに不機嫌だったような気がする。


「ふふふ。あの子は宰相を挑発までして何をするつもりなのかしら・・・・?」


私達は戦いから目を離していなかったのにそんなところを見ていない。なのに、挑発をしていた?


「私にはそのような場面がなかったかのように思うのですが?あなたには見えた?」


「いえ、私にも分かりません」


ロイも首を横に振る。


「私も目で追えたわけじゃないわ。ただ、試合中の違和感と宰相の頬についていた傷を見て気づいたのよ」


試合中の違和感・・・・?


「・・・・二度、振っていた?」


ロイがハッとして呟いていた。


「何?何のことなの?」


「ダメよ。ヴィーゼ、これはあなたが自分で気づきなさい。上に立つものとしてそういう観察力も重要なのよ。あなたもヴィーゼに教えないように」


「はっ」


ロイは気づいたようだけど、母様に口止めされてその後に聞いても教えてくれなかった。


胸の中にもやもやを抱えながら母様に求められているであろう勇者に嫉妬するしかなかった。




というわけで、初戦闘シーンです。

私はこういうものの書き方がよく分からないので何か悪い点があったならご指摘してくださると嬉しいです。

 今回、魔法を出しましたが、【】部分を詠唱。『』の中を術名にしましたが見やすいでしょうか?その点に関しましても意見があれば感想でお送り下さい。

 アンケートは今のところ思った以上に集まっておらず、また同数のものがあるので延長したいと思います。アンケートに一人でも多くの人が答えてくれると助かります。

 ご意見・ご感想のほうもどんどん送ってください。

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