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第三十五話    やってやれないことはない

更新が遅れてすいません。

前回までのあらすじ。


『ケトゥル古城』に調査に行きます。


P.S  今のところ、噂で聞いていたよりジーナさんは普通の人っぽい。







『ケトゥル古城』は腐っても王族が建てた建造物であり、氷杖『コキュートス』が発見された場所でもある。


そんな場所であるにも関わらず、何故現在は放置されているのか?


「大丈夫ですか?」


「は、はい。その、すいません」


背負ったジーナさんに声をかけつつ、雪を踏みしめて先に進む。


彼女はここまでの来る途中で疲れて足を止めてしまったため、僕がこうして背負っている。


まぁ、疲れるのも無理もないことだ。


既に今いるこの雪山を登り始めて三日目、麓の村『ニニース』ではそれ程でもなかった雪が雪山に近づくに連れて、どんどん強く吹雪いてきていたのだから。


『ケトゥル古城』が放置された理由、立地条件が悪すぎるのだ。


常にこのように吹雪いている雪山の山頂付近に『ケトゥル古城』は建造されている。


「ジーナさん、エルジナ」


「また来ましたか」


雪で姿は見えないが、気配を感じたので背負っているジーナさんと近くでリトリル君を背負っているエルジナに注意を促す。


最初は僕の言うこと疑っていたジーナさんだけど、何回も繰り返し僕の言うことが的中すると信じてくれるようになった。


「今度はどっちだ?」


「スノウラビット二匹が左側、ブルーモンキーがその少し後ろに一匹、ついでに前方からスノウボールが三匹。僕等が左の三匹に対処するよ」


「分かった」


エルジナの返事を聞くと同時に駆け出すと、吹雪に隠れたスノウラビットが見えてきた。


スノウラビットは姿が大型犬より二回りほど大きいことを除けば、普通の兎と変わりない姿のエネミーだ。ただし、脚力が凄まじく油断しているとその巨体による容赦ない突進を受けることになる。


「【墜ちろ、汝、罪人たれと望まれた者。その御霊を奈落へと導かん『黒の断頭(ギロチン)』】」


現れたスノウラビットを無視して、僕がその間を通り抜けるように駆け抜けた後にジーナさんによって、闇属性の中級魔術『黒の断頭(ギロチン)』が発動した。


黒の断頭(ギロチン)』は闇によって対象を拘束し、闇の刃をその上から落とすことで切り落とす遠隔系の魔術だ。


スノウラビットに向かって放ったらしい魔術の結果を確認せずに、その先にいるブルーモンキーに向かっていく。


「【雷光の怒涛、ここに来たりて宿れ『雷装・攻(アーム)』】」


ブルーモンキーが投げてきた雪玉をよけるために跳躍、それと同時に右足に雷を纏う。


そして、右足をブルーモンキーに振り下ろし、直撃すると同時に魔術式を弄ったことで出来るようになった雷の解放を行いダメージ与える。


蹴りと電撃を同時に受け、倒れるブルーモンキーに追加で無詠唱で『朱柱キャンドル』を発動しながら背を向けて、エルジナの気配がするほうを向く。


「【薙ぎ払え、拒絶の風は荒れ狂う『風の癇癪(ダンスエア)』】」


僕が魔術を使うと僕とエルジナの中間点を中心に外側に向かって強風が吹き荒れ、視界が少しの間だけ開ける。


風属性の中級魔術『風の癇癪(ダンスエア)』は発動点を中心に強風が押し出すように吹き出して、範囲内のものを吹き飛ばす魔術だ。


開けた視界の中でエルジナが転がって襲ってくる直径一メートルほどの雪玉型(エネミー)、スノウボールの攻撃をかわしていた。


エルジナはリトリル君を背負っているため、動きが鈍くなっていて攻勢に移れないでいる。


「【閃きは刹那の間に、害意を持ちて空間を駆け巡れ『雷光の閃き(ライトニング)』】」


視界が再び、吹雪で閉じられる前にジーナさんの『雷光の閃き(ライトニング)』が一匹につき二条ほとばしり、それを追うように僕が無詠唱で唱えた『炎撃ファイヤ』が殺到する。このときに瀕死状態のスノウラビットにも放って止めを刺す。


炎撃ファイヤ』を受けて、スノウボールも動きを止めた。


敵を全員、倒したことを確認するとジーナさんを降ろして、ブルーモンキーから爪を回収して、スノウラビットから毛皮を、スノウボールからは結晶体を回収した。


「しかし、走ったりしているのにほとんど揺れないんですね。快適です」


再び、僕の背に乗ったジーナさんは最初に背負ったときにあった羞恥心はもうあまりないようだ。


戦闘中、僕の背に乗りながらも彼女がちゃんと詠唱できているのは僕が彼女を揺らさないようにしているからだ。


「気配探知もそうですが、訓練すれば誰でも出来ることですよ」


「そこまでのレベルに仕上げるとなると誰でもというわけでもないだろう」


エルジナが僕を探るように問いかけてくる。


「このレベルならちゃんとした教育者がちゃんと鍛え上げればそうでもないよ」


気配を隠しているわけでもない相手の気配を探るくらいは割りと簡単に習得出来ることだし、揺らさないで走ることにしても武術を修めているなら姿勢制御の延長であるからさほど難しい芸当でもない。


「何なら僕が少し教えてあげようか?」


「・・・・・・結構だ」


「でも、実際クリムゾンさん程の強さになると近衛騎士にも引けをとらないと思いますよ。その若さでこれほどの強さとなりますと余程いい指導者に恵まれたんでしょうね」


「いや、それは、そうでもないと思いますよ」


確かに僕を鍛えた両親+αは能力面のスペックと能力を鍛え、引き出すということに関しては一般のそれとは比べ物にならないほど優秀ではあるけど、方法、損害、犠牲、尊厳、意思、程度などなど滅茶苦茶な部分が多すぎるから悪い指導者とも言えばないが、いい指導者とも絶対に言えない。


英才教育ならぬ狂才教育とでも言うべきか、受ければ百人が百人、常人とは隔絶した能力を持つだろうけど、百人が百人、狂気に染まり、更にその大多数が破滅の道を辿り、少数が不幸を撒き散らし、少数の更にごく一部が『第三世界』の住人に足る存在になり、ごく一部の中から奇跡的に生まれ出るのが社会と付き合える狂人となるだろう。


実際にこの教育を受けたのが、現在、僕一人なので正しいかどうか分からないが、両親+αに加えて、他数名の狂人達も巻き込んで作った育成プログラムであり、作った者達も作っていない者達もこのプログラムの内容を聞いて、同じような意見が出たから恐らく間違いないだろう。


ちなみに、僕は奇跡的な狂人に分類される。両親達は『第三世界』の住人に足る存在にはなるだろうとは思っていたが、社会に付き合える部類になるのは少し予想外だったらしい。


「あ、何か見えてきたよ」


エルジナに背負われていたリトリル君が前方を見上げながら声を発した。


リトリル君が見ている先には吹雪に隠れて見えにくいが、大きな建造物の影が見えてきた。


「三日目で着きましたか」


「本当は五日かけて登るつもりだったんですけど、あなたに背負われて進んできたおかげで大分早く着いちゃいました。予定短縮です」


「こんな天候の中で野宿するのは一日でも少なくしたかったですし、そんなに無茶なことでもなかったですから」


若干、急いでの進行だったが、この提案をしたときリトリル君にあまり負担をかけたくないエルジナも賛成したので提案が採用されて、この速さで辿り着くことが出来た。


「さっさと行くぞ。リトリル様を吹雪に晒されない場所に早く連れて行かなければ」


「僕は大丈夫だよ。エルジナ」


リトリル君は僕等よりも防寒具を多く身に纏っているのだが、リトリル君に仕えているらしいエルジナは彼を非常に気遣っている。


人に仕える者としてとてもよくやっているとは思う反面、僕に対して多少刺々し過ぎるとも思わないでもないが、敵地とも言える人間達の住む土地であるから警戒心が表に強く出てしまうのはしょうがないか。


笑顔の下に敵意を隠すみたいな腹芸が出来ればより優秀なんだろうけど彼女は護衛も兼ねてるし、そちらの面のほうに比重を置いているようだから腹芸の能力はそんなに求められてないのだろう。


先に行く主従の後姿を眺めながらそんなことを思い、後に続いた。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





眼前にいる敵に向かって剣を振り下ろす。


「せやぁっ!」


「あっ!」


相手の右肩に強烈な一撃を与えて、叩き伏せる。


「どうした!その程度の腕で近衛騎士が務まると思っているのか!」


「も、申し訳ありません」


お互い剣の刃は潰してあるので、相手は切られることなく強烈な打撃を与えられた肩をおさえながらこちらに頭を下げてくる。


「次!かかってこい!」


肩をおさえている者を下がらせて、次の相手を呼び出す。


「はぁっ!」


一合、二合、三合と何度か剣を交わらせると、相手は隙を晒してしまうので容赦なく底に剣を叩き込む。


「たるんでるぞ!貴様ら!昨今の情勢が分かっていないのか!もっと気合を入れろ!」


あまりの歯ごたえの無さに叱責を飛ばすと、強い返事が返ってくる。


次の者を呼ぼうと口を開きかける。


「気合が入っているわね、ロイ」


「リデア様」


振り返るとリデア様がやってきていたので、構えを解いて礼をする。


「少しいいかしら?」


「はっ。おい、あとは任せた」


「了解しました」


副官に声をかけ、後の訓練のことを任せ、リデア様の後に続いて訓練場を出て行く。


移動をしながらもリデア様が声をかけてくる。


「騎士達の練度はどうかしら?」


「必要最低限の実力はついていますが、人数を考えるとまだ足りないかと思われます」


「そう。やっぱり何処かから兵をかき集めるしかないかしら?」


「数は補えますが・・・・・・」


「そうよね。信用が出来ないわよね」


私達の懸念事項の一つである戦力、特に人数不足の問題は近々、荒れるであろう時のことを考えると早急に解決したい問題だ。


「となると、少し危険を犯してでも切り崩しにかかるしかないわね」


今までは下手に動きがばれないように分かりにくいところから人材を引き抜いてきたが、そうも言ってられなくなった。


「何処からとりかかるおつもりですか?」


「オーテンロッセ伯爵。前からエミリア達に内偵させていたのは知ってるわね?」


「はい。それで私が呼ばれたのですか?」


現オーテンロッセ伯爵は私の伯父に当たる人物であり、それなりに私とも良好な関係でもある。


前々からこちらに引き入れる候補として、色々と調べていたことはこれまでのエミリアの報告で聞いている。


「ええ。密偵からの報告によると、『血の栄光(ブラッドグローリー)』の蜂起以来、どうにも雰囲気が悪いらしいの。不穏な動きもあるみたい。」


「奴等がその近辺に潜んでいると?」


「潜んでいるだけならいいのだけど、伯爵は北部地域『ゲードンム』では数少ない将軍についていない人物でもあるし、その能力も低くないわ」


「排除される危険があるということですか?」


「そのとおりよ。あなたには一部隊を率いて行ってもらう事になるわ。名目上は不穏な動きに対処するための援軍。本来の目的は伯爵の引き抜きよ。もちろん、名目上の仕事もしてもらうわよ」


「了解いたしました」


「私の部屋で詳細の相談を」


言葉を区切るリデア様の先を見ると、リベリスがこちらに向かってきていた。


「あら、将軍。城から出るのですか?」


「愚王の命令だ。北部が荒れているらしいからな。俺に北部の混乱を鎮圧しろとのことだ」


装備を整えているリベリスは不遜な態度を隠さないままリデア様に答える。


リベリスの不敬に剣に手が伸びそうになるのを自制する。


「となると、しばらくは北部にあるあなたの砦に腰を据えることになりそうでうね」


「そうだな」


「どの程度の戦力を連れて行くつもりで?」


「今回は広範囲で混乱が広まっているようだからな。軍の半分以上は連れて行くことになりそうだ」


「そうですか。早く混乱を鎮圧して、王が安心できるように頑張ってください。どうかお気をつけて」


「ふん。次に会うときを楽しみにしているぞ」


リベリスは私達の横を通り過ぎていく。


「・・・・・・私に何の知らせもないうちに出兵、ね。宰相があの人をそそのかしたようね」


「会議もなしに出兵などと独断が過ぎます!」


「大方、あの人に『血の栄光(ブラッドグローリー)』が『ゲードンム』に潜んでいること、この国を狙っているかもしれない、とでも言って焦らせて判断を迫ったのでしょう。宰相も今は国と将軍を争わせて疲弊させたいだろうから、将軍を後押したようね」


リデア様は止めていた足を先程より早めに動かして歩き始める。


「ロイ、急ぐわよ。将軍が動いた以上、伯爵の領地で動きがあるのも時間の問題だわ」


「はっ!」


早足のリデア様に続いて、私も足を進めた。







急に執筆の時間が取れなくなったり、やる気が出なくなったりで大幅に執筆が遅れてしまったことをお詫びします。

 内容もほとんど進展が無く、読者の皆様には申し訳ないことばかりですが、今回は更新をするため内容が薄くても投稿することにしました。

 今後も執筆が大幅に遅くなると予想されますが、続けていこうとは思っていますので応援よろしくお願いします。

 ご意見・ご感想のほうも随時お待ちしています。・・・・・・が、先に書きましたように時間の余裕がないので、返答は遅くなったり、しなかったりということになってしまうかもしれませんが、どうかご容赦ください。

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