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第二十五話    やり方なんていくらでもある。

間を空けてしまい申し訳ありません。

今回は計6445文字です。

前回までのあらすじ。


大隊長二人、始末。


P.S 女性は大切にしましょう。ほんっと嫌いなんだよね、ああいう発言。








糸でナイフを回収して血を振り払うとナイフを元の位置にしまいこむ。


周りに視線をまわしてみれば大隊長が二人もやられたことが信じられないのか裏切った連中が硬直している。


「ひっ・・・・・・」


そのうちの一人と視線があうと怯えながら一歩後ずさる。


ひどいなぁ、この程度で怯えるの?


「ギィッ!」


後ろから襲い掛かってきたバットを回転をして半身になることでかわし、同時に左手にナイフを持ち首を切り落とす。


バットが血を噴出しながら地面に力なく落ちると硬直していた連中が動き出す。


「に、逃げろ!」


「うわぁっ!」


「か、勝てるわけねぇ!」


恐怖と混乱は爆発的に伝染する。


たいしたことはしてないんだけど、こういう小物達は自分達の優位が揺らぐと馬鹿みたいに動揺する。


動揺は混乱となって、混乱は恐怖となって、心を乱す。


「【我が呼び声よ、彼方まで届け『風声・拡(ソナー)』】」


・・・・・・そして、乱れた心ほど御しやすいものはない。


「【動くな】」


風声・拡(ソナー)』によってこの空間全てに声が届くようにして、一瞬だけ殺気を乗せて威圧しながら音程、リズムを調節して声を発すればこいつらのように心を乱した小物は簡単に術中に嵌まる。


「ひっ」


「な、何だよ、これ!?」


「体が動かないっ!?」


金縛りの術。まぁ、術なんてたいそうなものじゃないんだけどね。


催眠術の初歩の初歩。乱れた心に付け入って体の支配権を切り離すことぐらい造作も無いことだ。


動かないこいつらを一人一人殺していってもいいんだけど・・・・・・、ぶっちゃけめんどい。


というわけで。


「【焔よ、その雄々しき姿を示せ『朱柱キャンドル』】」


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


「あぁぁぁ!!」


金縛りで固まっていた魔術師達を『朱柱キャンドル』で始末する。


すると、彼らに召喚されたエネミーは魔術師の制御から離れ、僕ら以外にも攻撃を始める。


「あぁぁぁ!た、助けてくれぇぇえ!!」


「あぎっ!?がぁ!あぁぁぁ!!」


「く、来るな!来るなぁぁぁ!!」


動けない奴らはエネミーにとって格好の餌なわけで奴らの始末はエネミーに任せる。


「クリムゾン・・・・・」


この惨状に納得いかないような顔でナヴェルが僕を見る。


「裏切りには報復を。手心を加える気はありません。・・・・・・そもそも彼らは裏切り者です。あなたが庇う道理はないでしょう」


「確かに、そうだが・・・・・・」


「優しさは人の美徳ではありますが、使う場合を間違えればただの甘さです。甘さは人を殺します。特に人の上に立つ人なら非情になれなければ判断ミスで多くの人を殺しかねません」


裏切った奴等を助けても必ずしも改心するわけではない。むしろ、改心しない人間のほうが多いだろう。


隙を見て逆に殺されるかもしれない。逆恨みの対象にされるかもしれない。改心したふりをしてスパイ行為をするかもしれない。


全て可能性の話ではあるが一度裏切りを犯した以上、信用は地に堕ちる。特に目先の欲に走るような奴等は信じられるはずもない。


「それに敵に情けをかける余裕なんて今の僕らにはないんですよ」


大隊長二人を始末したから若干の余裕はでたけど、大魔ギガエネミーも残っているし、ナヴェルの怪我も早く街に戻ってちゃんと治療をしなければならない。


「動けますか?」


「少しは」


「なら、あっちで戦ってる彼らと合流しましょうか」


ナヴェルが傷を押さえながら立ち上がると、近づいてくるエネミーを撃退しつつ固まって戦っていたフィリアちゃん達のもとに移動した。


「副隊長!ご無事ですか!?」


「あんまり大丈夫とは言ねぇな」


生き残っている隊員の一人がナヴェルに声をかけ、他の隊員達も傷ついたナヴェルを護るように立ち位置をかえる。


「フィリアちゃん、大丈夫?」


「平気なの」


とは言っているものの傷も少なからず負っているし疲労の色も色濃く出ている。


「【苛烈なる咆哮をもって我が前に立ち塞がる敵を焼き貫け『灼炎の暴食(フレアランス)』】!」


両腕でギリギリ抱え込めそうなぐらいの太さの高熱の炎の渦を前方へ放つ中級魔術、『灼炎の暴食(フレアランス)』でフィリアちゃんが前方のエネミーを焼き払いつつ、その奥にいるストーンゴーレムにもぶつけて牽制する。


僕はその間にフィリアちゃんによってきたエネミーを切り払って彼女の援護をする。


「・・・・・・効果は微妙だね」


ストーンゴーレムを後退させダメージも与えることが出来たようだけど、大きなダメージとまではいかないようだ。


「フィリアちゃん、もっと威力の高い術は?」


「『天より降る剣(サンダーボルト)』もだけど雷属性の術はストーンゴーレムには効果は薄いと思うの。雷属性の術を抜くと今の『灼炎の暴食(フレアランス)』が私が使える術で一番威力が高いの」


フィリアちゃんが得意なのは雷属性の術だからやっぱりそっちの術を中心に習得してるのか。


「となると、二人で削っていってあれを倒さないといけないのか」


「二人?他の人達にもいるのになの?」


「魔術師はいないみたいだから、あの人達は物理攻撃しか攻撃手段が無い。ナヴェルさんならともかくあの人達に物理攻撃でストーンゴレームにダメージを与えられるほどの技量があるとは思えない」


事実、フィリアちゃんの魔術での攻撃しかストーンゴーレムにダメージに与えられてないみたいだ。


話を聞いていた隊員たちも悔しそうにしているだけで何の反論もしてこない。


「だから、僕とフィリアちゃんが魔術でダメージを与えるしかないってこと」


「前衛はどうするの?さっきまではあの人達に足止めをしてもらっていたの。だけど・・・・・・、」


視線を移せば動き回り命の削りあいをしていた彼らは疲労がフィリアちゃんよりも濃い。これ以上、彼らを前に立たせるのは酷だろう。


「じゃあ、彼らにはフィリアちゃんとナヴェルさんの護衛を任せて僕が前衛を兼任するよ。足を止めるくらいならどうにでもなる」


「クリムが、なの?」


「さっきの戦い、見てたでしょ?」


少し視線を向けているくらいは出来るだろうからね。見ていなくても大隊長二人を殺したことぐらいは状況から推測できるだろう。


「でも、そうすると魔術が、」


「同時にこなすくらいどうにかなるよ。ああ、それと魔術は僕にかまわずに遠慮なく打ってかまわないから。こっちで危ないと思ったらよけるよ。じゃ、よろしく」


ナイフを両手に持ってストーンゴーレムに向かって駆けるいく。


その間にいたエネミーは足を止めることなくすれ違いざまに切り殺していく。


「さて、まずは【我が従えしは炎『炎撃ファイヤ』】」


五つの炎を先行させてストーンゴーレムに当ててみるがこの程度ではやはりダメージはないらしが注意はひけたらしい。


ストーンゴーレムの腕の届く範囲に僕が辿り着くと同時に右腕を振り下ろしてくる。


しかし、動きが早くもないため僕は軽がるとかわして、ついでにその腕を切りつけてみるがやはり普通に斬るだけでは効果は薄いようだ。


「【白き矢、我に仇なす敵を討て『光矢アロー』】」


眼と思われる場所に『光矢アロー』を当ててみるがこれも効果はないようだ。


人間で弱い部分ならゴーレムでも弱いかと思ったが、そうでもないらしい。


ストーンゴーレムが左腕で攻撃してくると、それをかわしてかわした勢いを殺さないまま右足を軸に回転して左腕に後ろ回し蹴りを叩き込む。もちろん、衝撃を徹して。


しかし、特に何の反応もない。そのまま僕へと攻撃を繰り出してくる。


生物であればダメージが薄かったとしても内部に衝撃が徹る不可思議な現象に何かしらのリアクションを示すはずだから、恐らくストーンゴーレムを含むゴーレム系のエネミーは生物というよりは与えられた命令プラグラムに従う機械に近いのだろう。


だとしたら、面倒だな。


そんなことを考えながら右手のK.Wのナイフを逆手に持ち直しながら、ストーンゴーレムの右足の裏に回りこむと腰を捻って一瞬だけタメを作り今までより一段と鋭い斬撃を放つ。


今度は弾かれることはなく、ストーンゴーレムの足にナイフの刃が通る。しかし、切れたことは切れたのだが足の太さに比べてナイフの刃が短く、それほど深い傷にはならない。


「【闇のいざない、木霊する悲鳴『暗剣・旋(ペイン)』】」


暗剣ペイン』を回転させながら射出するようにアレンジした『暗剣・旋(ペイン)』を切り裂いた部分に打ち込むと同時に背に背負っていた弓を構えて矢を打ち込んで『爆式バーストシンボル』を発動させて傷口を抉る。


元々、『暗剣・旋(ペイン)』は表皮の硬い敵に対して作った傷を抉るための術で相手がまともな痛覚をもつ生物なら痛がるんだろうけど、この術と『爆式バーストシンボル』も傷を少しは広げることは出来たが、痛みはないようで何事もないかのように足で踏み潰そうとしてくる。


だが、それとほぼ同時にフィリアちゃんの術が完成したらしく『灼炎の暴食(フレアランス)』がストーンゴーレムの頭部に当たりバランスを崩す。


それを見て、矢を三本同時に番えると地面についているストーンゴーレムの左の足元に打ち込み『爆式バーストシンボル』を発動させて爆発を起こしてバランスを完全に崩させて倒れさせる。


「【冷たき氷の軍勢の侵略に呑み込まれろ『氷路・界(フリーズ)』】」


倒れたストーンゴーレムを頭部を凍らせるついでにそのまま凍らせて地面に前進を縫いつけようかと思って凍らせてみるがこれもあまり効果がないようで力ずくで難なく起き上がってくる。


これも駄目か。だったら、手数で削っていくことにしよう。


精神中に『氷貫アイスニードル』の魔術式をイメージしていく。


「【焔よ、その雄々しき姿を示せ『朱柱キャンドル』】」


詠唱と同時に精神中の魔術式に魔力を流し込み、ストーンゴーレムの足元に『朱柱キャンドル』と頭上に『氷貫アイスニードル』を同時に発動させる。


初級魔術に関して言えば、ここまでずっと使ってきたので発動の感覚は把握できた。


無声での発動には発動の感覚と魔術式をしっかりと描けるイメージ力と魔術式の構成を理解していることが必要になってくる。


感覚は術を使うことで、イメージ力は精神を鍛えることで、理解は魔術の知識を深めることで得ることが出来る。


精神は元の世界で既に鍛えられていたから条件をクリアしていて、知識は城で書物を読み漁ることで大体は手に入れた。


だから、初級魔術の感覚を把握した今なら初級魔術なら無声での発動も出来るようになったということだ。


そして、家の居候、ニートとはいえ世界最高の頭脳に鍛えられた僕ならもう一つ先の領域に踏み込める。


科学者において重要な要素の一つに客観的な視点、別視点からの考察、及びあらゆる可能性の想定があげられる。


それを素早く、より効率的に実行するために得る技能が並列思考マルチタスクであり、当然僕や居候もその技能は習得している。


しかも、仮にも狂人奇人の住まう世界に身を置いていた僕は居候よりは劣るがその技能は常人と隔絶している。


精神中に『炎撃ファイヤ』、『朱柱キャンドル』、『風刃・裂(カット)』、『水弾・大(ブルーボール)』、『地槍ランス』、『氷貫アイスニードル』、『氷路・界(フリーズ)』、『暗剣・旋(ペイン)』、『黒形トランス』、『光矢アロー』の魔術式を同時・・に展開する。


壊す算段はあるし、それまではダメージを蓄積させてさっさとストーンゴーレムを機能停止に追い込むとしますか。











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






前方ではクリムが動き回って、一人でストーンゴーレムを翻弄しながら戦っているの。


それだけでも十分に凄いことなの。


だけど、さっきからクリムが使っているあれは・・・・・・・。


多重行使オーケストラ、なの・・・・・・」


詠唱と無声による二重の魔術行使を二重行使アンサンブル、三つ以上の魔術行使を多重行使オーケストラというの。


無声での魔術行使ですら難しく、同時に行うため更に難しい二重行使アンサンブルを使えるほどの魔術師ならどのギルドからも引っ張りだこで、その上である多重行使オーケストラを使えるなら魔術師の最高峰とも呼ばれるギルド『真理ウィッチパーティー』にスカウトされるほどの超高等技能なの。


それが例え初級魔術だとしてもなの。


クリムは詠唱では『錬金混成クリエイト』を使い、多重行使オーケストラで発動した初級魔術同士を合成させているの。


炎を纏った『暗剣ペイン』、氷となって質量を伴うようになった『風刃カット』と硬くなった『水弾ブルーボール』、『地槍ランス』のように先の尖った形状になる『朱柱キャンドル』などが生成されているの。


他にも初級魔術が途絶えることなくストーンゴーレムに襲い掛かり、振るっているナイフも弾かれることなく通じている攻撃もあるようなの。


って、ボーっと見ている場合じゃないの。


「【苛烈なる咆哮をもって我が前に立ち塞がる敵を焼き貫け『灼炎の暴食(フレアランス)』】!」


炎の渦をストーンゴーレムに向かって放つの。


あまりダメージはないようだけど私にはこうするしかないの。


私の攻撃が収まるとクリムがすかさず同じところに『光矢アロー』を打ち込むの。


光矢アロー』に『氷貫アイスニードル』を合成していて、『光矢アロー』が打ち込まれたところが凍っていくの。


でも、やっぱり効果はないようで何事もないように動き回っているの。


そんな攻防を何回も繰り返して、魔力が尽きそうになってきたときなの。


パキッ。


・・・・・・?今のは何の音なの?


小さいけど確かに聞こえた妙な音に首を傾げていると、クリムが突然ストーンゴーレムから距離をとったの。


それとほぼ同時にストーンゴーレムを囲うように広範囲に無数の『地槍ランス』が地面から突き出したの。


しかし、ストーンゴーレムには何の障害にもならず、それを蹴散らして進もうとしたの。


「【ことわりを描き我、創造の使徒とならん。地にかけるは地、成す型は粒子、得る意は可燃、創造の証となれ『錬金混成クリエイト』】」


こちらに下がりながらクリムは『錬金混成クリエイト』で自分が作った『地槍ランス』分解して、濃い砂煙のようになってストーンゴーレムを包むの。


「皆さん、伏せてください」


私の隣まで素早く戻ってきたクリムが弓を構えて砂煙の中にいるストーンゴーレムに矢を放つと同時に目の前に『水盾ウォール』が展開され、更に『硬土ハード』がかけられたと分かった瞬間に砂煙が轟音を立てて爆発したの。


その突然の衝撃と光と轟音にクラクラしていると、前を見ていたクリムが肩の力を抜いたの。


「とりあえず、一段落か」


視線の先を追ってみると、爆発の煙が薄れてきた中で色んな部位が壊れ活動を停止したストーンゴーレムがいたの。





というわけで、お待たせして申し訳ありません。約一ヶ月ぶりの更新になりました。やっと休みに入って書きかけだった今回の話を書き上げることを優先したので後半部分が異様に短い上にあっさりとストーンゴーレムを倒してしまう結果になってしまいました。その点はどうかお許し下さい。

 というよりも、ストーンゴーレムとの戦闘は長々と書いたところで同じことの繰り返しで最終的に爆発という形になってしまうのでこのような形にしたほうがいいかと思い、短くさせていただきました。

 約一ヶ月ぶりの執筆なので違和感を感じるような部分もあるかと思いまずが、どうかご容赦下さい。

 私自身、ほとんど忘れかけていた『爆式バーストシンボル』を出した以上どうにか使わなければと思い、少し強引に入れてみました。覚えてない方もいらしゃって分かりにくいかもしれませんが、ご勘弁下さい。

 ご意見・ご感想は随時お待ちしています。

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