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第二十四話    嫌いな言葉には罰を与えましょう。

計8599文字です。

遅くなって申し訳ありません。

前回までのあらすじ。


裏切りイベント発生。


P.S こうもトラブルに巻き込まれ続けると何かに憑かれていてるのではないか疑ってしまう。・・・・・・こっちの世界に御祓いのようなことをしてくれる人はいるだろうか?





ナヴェルの腹部の傷は早めに塞いだほうがいいな。


あの出血量だとそのうちにまずいことになる。


「『血の栄光(ブラッドグローリー)』だと・・・・・・?あんなならず者の集まりに、寝返るって言うのかよ!」


「ええ。あなたの言うようにあそこはならず者の集まりです。今は、ね」


「どういうことだ?」


小治癒ファーストエイド』だと十分に傷を塞ぎきれそうにないし、僕がアレンジ調律コードに作り変えた『小治癒・恵(ファーストエイド)』は界系に変えただけで威力は向上しないから別の術を使うしかないか。


「それはあなたが知ることじゃないですよ。それに、それとは別に私達は『狩人衆イェーガー』のその在り方にも不満があります」


「何?」


「『狩人衆イェーガー』は力無き者達の味方であり、彼等のために脅威と戦い、求めている物を手に入れてくる。確かに立派なお題目です。これだけ聞けば『狩人衆イェーガー』は民に信頼され、頼られる素晴らしい集団でしょう。・・・・・・しかし、現実は違う。私達に感謝するべき民は私達の行いを当然のように受け入れ、消耗品の道具のように使う!私達に護られているにも関わらず!敬意の念も賛辞もよこさない!」


となると、中級魔術を使うしかないか。確か水属性で治癒の術があったな。


「貴族や商人共は庇護されている分際で私達を見下す!私達に比べれば虫けらのような強さしか持たない屑が!優れた力を持つ私達を見下す!そんな屈辱をこれまでさんざん味わってきた!」


ってか、さっきからあの人、五月蝿いな。


「・・・・・・そんな屈辱を受け入れている弱腰の『狩人衆イェーガー』には愛想が尽きたのですよ。私は『血の栄光(ブラッドグーローリー)』で力というものの偉大さを、脅威を示す。力こそがこの世の真理。弱い者は強い者の餌になる。その真理を愚かなる民共に知らしめる」


「馬鹿がっ。たかが一つのギルドが粋がったとこで、国に潰されるがオチだ!」


「【滴り落ちる血を洗い流すは慈愛に満ち足りし水の精の欠片『水霊の介抱(ヒール)』】」


対象の傷口を水で覆い、治癒する水の中級魔術『水霊の介抱(ヒール)』をナヴェルにかけてとりあえず応急処置を施す。


これで失血死はしないはずだ。


「話の途中に余計なことはしないでもらいたいものですね」


「と言われましても、こちらとしては貴重な戦力を失うのは避けたいので。どうぞ、気になさらずに続けてください」


「・・・・・・マグナ、彼を殺してください」


「お前に指示される覚えはねぇが、まぁいい、お前の長話には俺も飽きてきたところだ」


巨斧を担いだ男、マグナが僕に意識を向ける。


「精々、少しでも足掻いて俺を楽しませろよ!!」


その巨躯に見合わない速さで僕に突進してくる。


「クリム!」


「フィリアちゃんは自分の身を護ることを考えてて」


「ぜぁっ!!」


僕に加勢をしようとするフィリアちゃんを制して、振り下ろされた巨斧をバックステップで射程外に出て回避する。


振り下ろされた巨斧がそのあまりの力に地面を砕き、砕かれた地面の欠片が飛び跳ねる。


それを避けながら周りに被害が出ないようにそのまま少し離れたところまで移動する。


「他の邪魔者達にも消えてもらいましょうか。エクジス」


「・・・・・・俺は帰らせてもらう。手負いのヘイズと有象無象相手に俺が出る必要もないだろう」


「・・・・・・それもそうですね」


黒の長髪の男、エクジスが踵を返す。


「待て!エクジス!お前はっ、本当に俺たちを、俺とフェイを裏切るのか!?」


「・・・・・・俺には俺の目的がある。お前達とではそれが叶えられそうにない。それだけだ」


エクジスはナヴェルの叫びに背を向けたまま答えて立ち去っていく。


「エクジスっ!!」


「おっと、あなたの相手は私です」


「くそっ!邪魔をするな、エスティ!」


エクジスを追いかけようとするナヴェルを好青年風の男、エスティがナヴェルに攻撃を仕掛けて遮る。


「雑魚はお前たちが殺せ」


エスティの命令が下ると僕等を囲んで傍観していた人間達とエネミーがフィリアちゃんや生き残りの人達に襲い掛かった。


「くっ、皆一つに固まれ!あなたもこちらへ!」


そのうちの一人の掛け声で生き残りの人達とフィリアちゃんは一ヶ所に集まって協力して迎撃を始めた。


「ぐぅ。っつあぁぁ!!」


「ふっ。はっ!!」


「っ!」


「万全の状態ならともかく、深手を負い、片目も使えないあなたに私が負ける道理はないですよっ!」


「ちっ!」


ナヴェルとエスティの攻防は若干エスティが押しているようでナヴェルの表情に焦りが浮かび、腹部の傷による痛みに顔を歪めながらエスティと剣を交えている。


「いいことを教えてあげましょう。既に『狩人衆イェーガー』の三分の二は私と同じく『血の栄光(ブラッドグローリー)』に鞍替えしています」


「何だと!?」


「大隊長も私を含め十人中七人がこちらにつき、副隊長もあなたを除き二人とも賛同しています。これがどういう意味か分かりますか?・・・・・・あなたには生き残ったところで帰るところなど存在しないのですよ。今頃、こちらに取り込めなかった他の人達も処分していることでしょう」


「な、に・・・・・・?」


ナヴェルの呆然とした様子にエスティは笑みを浮かべる。


「総隊長も副隊長と大隊長とエルフの三人がかりで今頃、無残に殺されているでしょう。・・・・・・ああ、それとも容姿は知りませんが声からして女性のようですから玩具にされているかもしれませんね」


「エスティィィィィィーーーーーーーっ!!」


激昂したナヴェルが怒りに身を任せて猛攻を仕掛ける。


「おおおぉぉぉぉぉ!!」


「ぐっ!?」


その攻撃の激しさにエスティは押されつつも攻撃を捌く。


しかし、傷を負った体でそんな猛攻を仕掛ければ当然体に負荷がかかる。


「っ!?」


「はぁっ!」


体を激痛が走ったのか動きが一瞬鈍ったところをエスティに攻撃されて胴を切られる。


「ぐぁ」


膝をつくナヴェルにエスティが剣を突きつける。


「安心してください。すぐに総隊長と同じところに送ってあげます」


「く、そぉ・・・・・・」


ナヴェルが忌々しげにエスティを見上げる。


さて、さっきから冷静に周りを観察している間にも僕も攻撃にさらされていた。


「うらぁ!」


「【唸れ『風打ブラスト』】」


「ぬっ!うぉぉぉ!」


何度も振り回される巨斧を冷静に見切りながら、詠唱の短い風の魔術で牽制をしてはいるのだけど、『風打ブラスト』はあまり威力が高くないため押し切って攻撃してくるし、『風刃カット』はその巨斧で薙ぎ払われる。


そんな防戦一方の展開を演じていた。


本当なら最後まで適度に相手をして他の人たちが危険なところを魔術で援護しながら先に周りの戦いを終わらせてから加勢してもらって倒そうと思っていたのだけど・・・・・・、予想外の速さでナヴェルがやられてしまったから予定変更するしかないか。


「あなたは、何のために裏切りを?あなたはあれのような自己顕示欲が強い人には見えませんが?」


「俺はただ戦いたいだけだ!より強者と!より切迫した殺し合いを!そのためには『狩人衆イェーガー』では物足りんのだ!」


「そうですか・・・・・・」


戦闘狂、か。別にそれ自体を非難するつもりはない。


命の取り合いに生きがいを見出す人間がいたところで生きがいなんて人それぞれなのだから。家の父さんなんか『殺す』ことが生きがいだし。


「うるぁ!!・・・・・・何?」


マグナが横に巨斧を薙ぎ払った次の瞬間には僕は彼の視界から消えている。


「っ!ぐぁっ!?」


僕はエスティに飛びかかり、飛んできた勢いを乗せて蹴りを放つ。


マグナが巨斧を横に振った瞬間、地面に対して横に振るわれたその巨斧の側面に飛び乗り、マグナの馬鹿力で振るわれた巨斧の勢いを利用して巨斧から飛び出した。


突然の襲撃にエスティは蹴りをまともに受けてよろけながら後退する。


「き、貴様!」


「【癒しを恵みたまえ『小光癒ファーストエイド』】」


エスティの相手より先にナヴェルに回復魔術をかける。


「下がっていてください。その傷じゃもうこの人の相手は無理でしょう?」


「しかし、お前だけじゃ、エスティと、ぐっ、マグナを同時に相手、出来ないだろ?」


「出来る出来ないじゃなくてやらなくちゃいけないんですよ」


「・・・・・・すまない」


傷を負って冷静さを取り戻したナヴェルが傷口を押さえながら申し訳無さそうにしている。


「雑魚がっ、よくもこの私を足蹴にしてくれたなっ」


「周りにも気を張っていないあなたが悪いと思うんですが、責任転嫁されても困ります」


「マグナ!こいつはあなたでしょう!余計な邪魔をさせないでください!」


「そう言われてもよ、あのガキ中々すばしっこくてな」


離れていたマグナがこっちに近づいてくる。


「ふん。あれが速いんじゃなくてお前の動きが鈍重なだけでしょう。あなたの攻撃は一撃一撃が大振りすぎる」


「じゃあ、てめぇがあいつの相手をしろよ」


「・・・・・・そうだですね。副隊長殿は虫の息だし、あのガキには私を足蹴にしてくれた礼をしないといけませんか。マグナ、相手を交代しますよ」


「おう」


声をかけ終えると二人は同時に同時に襲い掛かってくる。


「【奔れ『風刃カット』】」


風刃カット』を複数飛ばして牽制するが、二人はそれぞれ剣と巨斧で弾いてそのまま突っ込んでくる。


「はぁっ!」


マグナより速いエスティが先に出て、僕に向かって剣を振るう。


その太刀筋は鋭く、マグナより速いが僕は見切って紙一重でかわす。


「せいっ!」


次の攻撃に移るまでの速さもこの世界に来てから今まで戦ってきた中では一番速い。しかし、やっぱり僕はそれを見切ってかわす。


続けてエスティは二撃、三撃と繰り返してくるが僕は全てをかわしきる。


「くっ!くぁっ!?」


エスティの顔に困惑が浮かんでくると僕はエスティの顔に右手で軽いジャブを放つ。


それと同時に左手にここに潜る前に購入してきたナイフを三つ、指で挟むと僕の脇を通り過ぎようとするマグナの胸、足、頭部を目がけてノーモーションで投げる。


「ぬっ!?」


それにかろうじてマグナは反応して頭部、胸のナイフは避けきるものの足を狙った一つはかわしきれずに足をかすめて傷を作る。


「はぁぁ!」


「ふっ」


「げふっ!?」


体勢を立て直したエスティの一撃を軽くかわして、後ろ回し蹴りを叩き込んで後退させる。


「【我が従えしは炎『炎撃ファイヤ』】」


ナイフをよけるために前進を止めたマグナに炎を放って、それをかわすためにマグナは後退する。


「貴様、一度ならず二度も私を足蹴にしたな!!」


「だから言っただろう。あのガキ、中々やるぜ」


・・・・・・『僕』のままでも大丈夫っぽいな。


二人の実力はそれぞれ聖夜以上ではあるけど、この世界で揉まれて経験を積めば聖夜でもすぐに戦い合えるぐらいの強さしかないみたいだ。


ここまで来る途中でナヴェルを観察して実力はある程度は把握してたけど、彼らに遅れをとるとは思えない。


不意打ちのときに負った傷といきなりのことでの動揺の影響がよっぽど大きかったんだろうな。


「マグナ!あいつをさっさと殺しますよ!」


「二人がかりかよ。まぁ、あいつを先にどうにかしねぇとナヴェルを殺すことも出来ねぇか」


二人がかりでもさっきまでと同じように実力を隠しながら相手は出来るけど、ナヴェルを庇うことやフィリアちゃん達の援護も考えると先にこの二人に集中して少しやる気を出したほうが効率がいいか・・・・・・。


「悪いけど、殺される気はないよ」


右手にK.Wのナイフを持つ。


力が全てというならその力で捻じ伏せられる覚悟、見せてもらおうか?





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




情けないとしか言いようがない。


自分の部下たちの不穏な動きにも気付かずに、その部下達に裏切られて仲間を殺されて、自分は重傷を負わされた。


どういうわけか知らないがエネミーを召喚する魔術を仕入れてきていた奴らの策略にはまり絶体絶命のピンチに陥った。


ここで俺も終わりかと、エスティの安い挑発に乗ってしまい無様に膝をついた俺は覚悟を決めた。


敵は大隊長が二人に大魔ギガエネミーエネミー、裏切った部下達、そしてさらに俺が重傷を負ってしまった以上、もう望みはないと思っていた。


「はぁ!」


「ぬらぁ!!」


しかし、俺の予想を覆されようとしていた。


「ぐっ!?がっ!」


「ぐぅっ!?」


エスティとマグナの同時攻撃をかわし、右手に持ったナイフでエスティを切りつけ、左足で蹴るとマグナに向かって素早く左手に構えた四本のナイフを投擲して、鎧の関節の隙間に見事に突き刺す俺の予想を覆そうとしている人物。


クリムゾン、と名乗っていた魔術師だったはずの青年は『狩人衆イェーガー』の大隊長二人を近接戦闘で完全に手玉に取っていた。


「く、くそっ!」


エスティが悪態をついている間に素早くクリムゾンはエスティの懐に潜り込むとナイフを振るう。


「くっ!つぁっ!?」


剣速だけならナイフという軽い武器を振り回しているクリムゾンのほうが全快時の俺よりも速いかもしれない。


その剣速についていけないエスティは当然のごとくその体に傷を増やしていく。


「あぁぁぁ!!」


クリムゾンを振り払うべくエスティは痛みを堪えて剣を振るうが距離を離さずに小さなステップと体の捻りだけで剣をかわされてしまう。


その間もナイフによる攻撃は止まらない。


エスティが命を繋いでいるのは身に纏った鎧のおかげと鎧に守られていない頭部だけは必死で防御しているからに過ぎない。


「おぉぉぉぉ!!」


そこへマグナが刺さったナイフ振り払い、自慢の巨斧で攻撃を仕掛ける。


「っ!?」


「何ぃっ!?」


が、俺は目を疑うような光景を目にし、攻撃をしかけたマグナも驚愕した。


あろうことにクリムゾンはマグナの怪力によって振り下ろされた巨斧をその手に持った小さなナイフで完全に受け流しきったのだ。


マグナの怪力によってつけられた巨斧の勢いをあんなちっぽけなナイフで完全に受け流す。


それにどれだけの技量が必要とされるか分かるだけに俺は戦慄した。


剣でならまだしもナイフでとなると同じ芸当は俺にも出来ない。


「ごっ!?」


「ぐぅっ!?がはっ!!」


驚愕に一瞬硬直したマグナを見逃さず、クリムゾンはまずはエスティの胸を右肘で打ちつけて押し出すと、左足でマグナの鳩尾を蹴り上げて、間髪いれずに高く上げた右足で側頭部を蹴りぬく。


どういうわけか鎧を着ているはずなのは打撃が通じているらしく二人とも打たれた部位からの痛みに顔をしかめている。


「ぐっ、はぁ、はぁ」


「はぁ、はぁ、やるじゃねぇか、ガキ」


「それはどうも」


息を切らす二人に対してクリムゾンは全く息を切らしていない。


「てめぇ、ただの魔術師じゃねぇな?いや、魔術師じゃないな?」


「そうですよ?魔術は最近、手を伸ばした分野ですからそちらは本業とは言えません」


「き、貴様!騙したのか!」


「心外ですね。僕は魔術を使って戦ってただけで魔術師と名乗った覚えはありませんが」


確かにそうだが、道中で魔術だけで戦況を見極めて見事に戦い、自調律アレンジコードまで使っていたら誰だって魔術師だと思い込むのではないだろうか?・・・・・・いや、むしろそれが狙いか?


魔術師だと思い込ませて、近接戦闘を仕掛ければ優位に立てると錯覚させ油断させる。


喰えない奴だ・・・・・・。


「あまり長引かせても連れが心配なのでそろそろ幕を引きますよ?」


「調子に乗るなよ!!」


エスティが攻撃をしかけようとする。


「っ!?」


しかし、その動きは止めることを余儀なくされた。


突然、横からナイフが飛来してきたので回避せざるを得なかった。


「それで終わりじゃないですよ?」


「何っ?」


「後ろだ!」


マグナの声にエスティが振り返るとそちらからもナイフが飛来してきていた。


エスティはそれもかろうじてかわすが、その瞬間を見ていた俺とマグナは再び驚愕させられた。


エスティに飛来したナイフは、クリムゾンが既に投げて落ちていたはずのナイフであり突然、動き出してエスティに襲いかかったのだ。


「休む暇はありませんよ?」


クリムゾンの言葉と同時に他の落ちていたナイフが更に動き出す。


その数は計5本。その全てがナイフ自体が意思を持つかのように飛び回ってマグナとエスティに襲い掛かる。


「くっ!?」


「何だこりゃぁ!?」


別々の方向からナイフが勝手に襲い掛かってくるという不可思議な現象に二人は動揺しつつも何とかかわし、防いでいる。


最初の二撃、三撃は動揺していて防御で手一杯になっていたが、少し慣れれば単に複数の方向からナイフが襲い掛かってきているだけに過ぎないので二人は冷静に対処して反撃に転じようとした。


しかし、二人がナイフに気をとられていた数瞬はクリムゾンには既に十分すぎるほどの隙だった。


俺自身も動き回るナイフに注意がいきクリムゾンから注意が離れ、次に俺がクリムゾンを認識したのは何時の間にか先程いた位置とマグナを挟んで反対側の位置。


「さようなら」


「お?」


そして、次の瞬間マグナは首筋から血を噴出してゆっくりと倒れた。


・・・・・・確かにクリムゾンから注意は逸れた。しかし、それは本当に数瞬のことだ。しかも、二人はもちろん少し離れた場所で見ている俺まで攻撃の瞬間もマグナに駆け寄った瞬間も後ろに駆け抜けた瞬間も認識出来なかっただと?そんな馬鹿な・・・・・・、本当にあいつは何者なんだ?


「マグナ!?」


「次はあなたです」


「くぅっ!」


エスティも本人も気付かぬ間に殺されたマグナにエスティが驚くが休む暇も与えず、五本のナイフが襲い掛かる。


さっきまでマグナにも分担されていた分のナイフもエスティに襲い掛かる。


エスティはそのナイフの防御で手一杯になる。先程までと違い、数も増えクリムゾンにも注意を払わなくてはならない上に先程の単純な動きと違い、五本のナイフがうまく連携をとって襲い掛かってくるので余裕がなくなったようだ。


「・・・・・・死ぬ前に二つ言っておきます」


その様子をクリムゾンは僅かにマグナの血が滴るナイフを右手に持ち傍観している。


ん・・・・・・?巧妙に隠されてるが左手が僅かな動きだがせわしなく動いている?


「一つは、力が全てだ、と言うならより大きい力に蹂躙されることは享受してください」


・・・・・・まさかあれは。


「くっ!っ!?何だっ!?」


エスティの動きが突然不自然に停止する。・・・・・・いや、拘束されたのか。


そして、五本のナイフがそれぞれエスティの視界に入る軌道でエスティの頭部に迫る。


「もう一つは、僕の前では女性を玩具にするとかその手の発言は止めてください。そういうのは心底嫌いなんです」


「く、くそぉぉぉっぉぉぉ!!ごぉっ!!」


エスティの叫びも虚しく五本のナイフは見事に全てエスティの頭部に突き立つ。


「来世では気をつけてください。ま、二つ目に関しては来世では僕と縁がないとは思いますが」


クリムゾンが左腕を大きく横に振るうとエスティの頭部に突き刺さっていた五本のナイフが抜けてクリムゾンの元に戻っていくと同時に拘束の解かれたエスティが倒れ伏す。


やはり、糸か。悟られないように左の五本の指から伸びた糸で五本のナイフを自由自在に操り、なおかつナイフに注意がいっているところに見えにくい糸で拘束する。極悪の連携だな・・・・・・。


しかし、あれだけ糸をからませずに自由自在に糸を操り、なおかつその動作も悟らせない。さっきのナイフでマグナの巨斧を受け流したときもそうだが、その技量は想像を絶する。


それに未だに余裕があるように感じられる。


俺が全快であっても、こいつに勝てるのか・・・・・・?


俺の目の前に立つそいつの背中を頼り強いと思うと同時に、その技量への畏怖とこいつと戦うときのことを想像し戦士として胸を躍らせた。



更新が遅くなってしまいすいませんでした。次の更新も7月は忙しいので更新は難しいと思います。楽しみにしてくださっている読者様には大変申し訳ありません。

 というわけで、今回はかませ犬(マグナ、エスティ)にご退場願いました。大隊長クラスの人間のほとんどは勇者補正もあり、紅月や聖夜と比べると紅月より下、聖夜より僅か上程度の実力しかありません。ちなみに、ナヴェルと紅月が正面からやり合えば地力ではナヴェルのほうが僅かに上です。それを小細工で拮抗まで持っていって互角の戦いです。紅雪になれば話は別ですが。

 同時に展開を進めるのは難しいです。エネミー大魔ギガエネミーと雑魚、それにフィリア達も同時に書くことは私の技量では無理でした。申し訳ありません。

 ご意見・ご感想は随時お待ちしています。

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