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第二話   当たって欲しくない予感ほどよく当たる

ちょっと無理矢理?

前回までのあらすじ。


気がついたら知らない場所にいた。


うん・・・。まぁ、それだけだね。前回はプロローグだったしそれぐらいでもいいよね。無駄に二話ぐらい使うはめになるよりいいと思う。


「大丈夫か?」


呆けた状態から我にかえってすぐに倒れている女性の心配をするあたり流石は聖夜だ。


聖夜が彼女を起こしている間に周りをよく観察してみると、段々と部屋の暗さにも慣れてきて割と広い部屋ということが分かり、光源も何本か立てられている蝋燭しかないようだ。


それと床や壁、天井にびっしりと書き込まれた文字のようなものがあった。・・・なんか凄く認めたくない可能性が出てきたんですけど?


「う、うん・・・」


女性が目を覚ましたようだ。僕も聖夜の傍によって彼女の様子を伺う。


「大丈夫か?」


聖夜が心配してるけど、パッと見た感じどこも悪くなさそうだからただ気絶してただけだと思う。


女性は目を開けて自分が聖夜に抱きかかえられていることが分かると顔を赤くして


「だ、大丈夫です」


「よかった」


「あ、あの離してもらえますか?」


「あ、悪い」


聖夜も少し恥ずかしそうにしながら彼女から離れたが、聖夜の整った顔だちを至近距離で見た彼女の顔は真っ赤のままだった。


気まずい空気が流れる中、彼女が居住まいを整えると凛とした顔で僕ら(視線は聖夜に一直線)に向きなおった。そして・・・、


「お初にお目にかかります。勇者様。私はミッドガルズ王国、宮廷付巫女第142代、アイシャ・ノインと申します」


僕の平穏をぶち壊す一言を発してくれた。


「勇者?それに、ミッドガルズ王国?」


「・・・ファンタジーの世界に迷い込んだっぽいね」


混乱している聖夜に僕自身かなり、というか、拒絶反応が出るくらいに認めたくない可能性を口にした。


「どういうことだ?」


「異世界召喚。創作小説なんかよくある話だよ。強大な魔王を倒すために異世界から勇者を召喚して世界を救ってもらう。違いますか?」


「は、はい。確かに魔王を倒して世界を救って頂くために勇者様を召喚しましたが・・・。」


「しましたが・・・?」


「・・・喚んだのは一人のはずなんです」


女性、ノインさんも僕の存在に気づき(つまり、僕が声を発するまで聖夜しか見えていなかったらしい)困惑した様子で僕と聖夜を見比べる。


あっち側に問題がないとすると、僕らのほうに原因があるわけだ。確かここに来る直前は・・・


〜〜〜〜〜〜〜


「で、いい加減にそろそろ身を固めたら?」


「いや、その言い方だとまるで結婚相手を決めろって聞こえるんだが?」


「他の子のためにもそれくらいの気持ちのほうがいいと思うよ」


「でもなぁ」


「そういう風に迷ってるといつまでも彼女たちは君のことを諦めきれないよ。早いところ誰かに決めて他の子たちを次の恋愛に進めてあげないと可哀想だね」


「そうなんだけどさ。いい女ばかりだから選びがたいんだよ」


「それは自慢?」


「事実だ」


「はいはい。もてる人はいいですね〜。って、うわぁ!」


「っと」


「すいませ〜ん!!」


「謝るくらいなら飛び出さないでほしいよ。・・・聞こえちゃないだろうけど」


「ははは。何か急ぎの用事でもあんだろ。って、何だこの光は!?」


「え?うわっ。何だ!?」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



・・・ああ。あのときくっついてたのが原因か。あの飛び出してきたクソ餓鬼が原因か。・・・帰れたら覚えてろ畜生。


「俺らの体が触れていたのが原因だろうな」


「だね」


聖夜も同じ考えに至ったらしい。


「それでは、勇者様は・・・?」


「彼です」


僕は0.1秒以下の速さで聖夜を指差した。


だって勇者なんてやりたくないし、実際に光は聖夜を中心にして発生してたから間違いないと思う。


「おい紅月!」


「いや、だって実際勇者っぽいのは聖夜のほうじゃん。容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、みんなに慕われてるし、正義感も強い。・・・それにノインさんもその方がいいだろうしね」


「・・・そう言われると納得できるが、最後のはどういう意味だ?」


「さぁね?自分で考えて」


色んな女の子にもててたけど、聖夜って女の子たちが告白するまで好意を持たれていることに気付かないほどに鈍感なんだよな。そのせいで一番彼が信用していると口を零したらしい僕に彼女たちは相談をしてくるんだからたまったもんじゃない。的確なアドバイスをしつつ全員が均等なラインに並ぶように僕がどれだけ気を配ったか。


・・・まさかこっちでも同じ事態に陥らないよね?全員が告白してやっと気が楽になったのにこっちに来てまで同じことをするなんて御免だよ。


ノインさんは僕の発言に顔を赤くするも頑張って冷静さを保っていた。


「では、貴方様が勇者様ですか?」


聖夜は少し考えて


「勇者って一人じゃなきゃ駄目なのか?せっかく二人も現れたんだから二人とも勇者でいいんじゃないか?」


素晴らしい提案をしてくれやがりました。


「どうでしょう?こんなことは予想されていなかったので私にはお答えしかねます」


一人で十分だと言って!二人も勇者いらないだろ!?


「いや、勇者が二人もいたら混乱するんじゃないでしょうか?」


「私には決められませんのでお二人には王様とお会いして頂き、そこで王様の判断を仰ぎたいと思いますが、よろしいでしょうか?」


僕のささやかな抵抗もあっさりとかわされ、王様との対面フラグまで立てられてしまった。


「どうする?」


「・・・どうするも何も会わないわけにはいかないだろ?」


本音を言えばもの凄く会いたくないけど。


「では、私について来てください、勇者様」


「待った」


歩きだそうとしたノインさんを聖夜が引き止め、彼女が不思議そうに彼を見る。


「何でしょうか?」


「俺達は名乗ってないだろ?光 聖夜だ。勇者様じゃなくて名前で呼んでくれ」


そういえばそうだった。


「不知火 紅月です。勇者じゃないかもしれませんがよろしくお願いします」


というか、そうでないであってほしい。


「こちらこそよろしくお願いします、光様、不知火様。では、参りましょうか」


ノインさんの後を聖夜と一緒について行きながら思った。



どうか厄介なことになりませんように・・・。・・・無理っぽいけど。

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