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第十九話   必要な道具は自分で作れるようにしたい。

計4164文字です。

前回までのあらすじ。


命名、古代神殿ロストグラウンド『ルサルカ』。


P.S ルサルカとロップに協力してもらってアイエ・ゲーテスと勇者の墓を作った。








今の知識で出来る限りの調査を済まして怪我の具合がよくなってくると『ルサルカ』をあとにした。


契約をして、名前まであげたものの強大すぎる存在の水核様から命令に逆らうことも出来ずルサルカは『ルサルカ』から離れることは出来ないらしく、僕があそこを去るときににはもの凄く残念そうにしていた。


それから更に『ミーリオ』、『ビグフィール』、『エーバム』、それぞれの街は特に何事も起こらずに順調に進み、今は河岸にある街『ロール』に辿り着いた。


「橋が落ちた?」


「はい。老朽化が進んでいたところに先日、大雨が河の上流で降ったようでそれに耐え切れずに」


「ああ、そういえばこっちでも少し降ってましたね」


『ロール』の委託施設ユニオンの受付で素材の換金を待っている途中、何気ない話からそんな話になった。


多種族連合アルカディア方面へ行くにはその橋を渡らないといけないんですよね」


「他の街まで遠回りすれば行けないこともありませんが、この街からだとそうですね」


「橋の復旧と遠回りするのはどちらが早いですか?」


「そこまでは分かりません」


そうなると一度、様子を見るために橋に足を向けたほうがいいか。


「お待たせいたしました。合計、3100ガルド、銀貨31枚になります」


「15枚持っていきますので、残りは金庫にお願いします」


「かしこまりました」


あまり物を買うようなこともないので硬貨がかさばってしまい、『ビグフィール』から金庫を借りることにした。月に200ガルドなので今の僕の懐にはたいした問題にならない。


銀貨を受け取って委託施設ユニオンを出ると、街の南方面に足を向けて橋に行く。


街の南の橋がある広場につくと、足止めをくらっている人がたくさん集まっていた。


近くにいた一人に話を聞くと、橋の復旧を待ったほうが他の街にを周っていくより早いそうだ。


そうなると、ここで足止めか。


「あんた、魔法石を持ってるってことは魔術師か?」


その人が僕が右腕の手首につけている腕輪に気付いたようだ。


この腕輪に埋め込まれている青い石は『ルサルカ』で採集したものだ。あの神殿にはルサルカが宿っているためこうして削り取った神殿の一部は魔法石と同じ力を持っているらしく材料を買い揃えて腕輪を自作した。


「まぁ、駆け出しですがそうです」


「もし錬金術が使えるなら橋の前に立っている奴のところに行ってそう言えば雇ってもらえるぜ?橋を作り直してる連中には橋を手早く組める錬金術師はのどから手が出るほど欲しいからな」


錬金術は土の中級〜上級魔術に分類される。複数の素材を魔術により分解、結合して別の物質を作り出したり、魔術式を物に刻むことにより魔力を流し込むことで発動する魔術装飾体アーティファクトを作ることを指す。

 作るものによってその難易度は高まり、戦闘向きでないことと本業としてやっていくには高度な魔術知識、魔力制御技能が必要なため錬金術を本業とする錬金術師自体はほんの僅かしか存在しないらしい。


それでも軽い錬金術なら出来る魔術師はいる。


しかし、錬金術か・・・・・・。まだ手を出してない分野だな。


先々のことを考えて魔術装飾体アーティファクトを作る技術は欲しいよな。


適当にその辺に転がっている丸い石を拾い、持っていた銀貨を一枚取り出す。


えっと、確か・・・・・・。


「【ことわりを描き我、創造の使徒とならん。土に掛けるは銀、成す型は枝、得る意は強化、創造の証となれ『錬金混成クリエイト』】」


石と銀が分解されて、新たな形に再構築される。


結果、銀が混じった細長い石が出来た。


「【奔れ『風刃カット』】」


続いて『風刃カット』を発動させて、石に叩きつける。


それを受けると石は簡単に二つに折れてしまった。どうやら生成した物質を強化することは失敗したらしい。


本で理屈は理解していたとはいえ、形状変成までは一回で成功したか。けど、石に混じってる銀の比率を見る限り、何割か消失してるし性質変成は失敗したからまだまだ改善、修練が必要だな。


錬金混成クリエイト』によって、作る物質は複数の物質の掛け合わせ、形状を決定し、性質を付与することが出来る。ただ、形状は元の物質とかけ離れた大きさのものは作れず、性質は作った場所に満ちる魔力によって多少の変動はあるが、基本は簡単なものと元の物質の延長上の性質しかつけられない。


今回の場合でいえば、物質の強化を付与するつもりだったのだが、僕の未熟な腕ではうまくいかなかった。


「この程度の腕で大丈夫ですかね?」


「十分なんじゃねぇか?まぁ、実際行ってみた方が早いぜ」


「そうですね。どうもありがとうございました」


その人に礼を言って、橋のほうへと足を向ける。


橋の前で人を止めている人に説明をすると、先へと案内してくれた。


先に進むと大工の人が大勢で忙しそうに動いている中、一人だけ様相の違う人間が杖を持って橋の途切れた部分にいた。


「【ことわりを描き我、創造の使徒とならん。木に掛けるは木、型は橋、創造の証となれ『錬金混成クリエイト』】っ」


魔術が発動するとその人の傍にあった木材が分解され、その分の木材が組み合わされた橋の一部となってそれが収まるべき位置へ再構成される。


周りの大工達の数倍の速さで橋が構築されているな、これは重宝されるわけだ。


「あんたはそいつの近くで作業してくれ」


「はい。ありがとうございました」


案内してくれた人が遠ざかって行くと、その人の隣に移動する。


「どうも」


「あなたは?なの」


どうやら僕とそう変わらないくらいの年頃の女の子らしい。


フードつきのクリーム色のローブを羽織っていてその下には黒を基調とした制服のようなものが見える。

 髪は蜂蜜色でゆったりとした感じで肩口まで伸ばし、眼は茶色で顔は幼げな印象を受ける。


「あなたと同じですよ。【ことわりを描き我、創造の使徒とならん。木に掛けるは木、型は橋、創造の証となれ『錬金混成クリエイト』】」


木材が分解され、再構築される。・・・・・・また無駄があるなぁ。


「助かるの」


「さくっと、進めましょう。【ことわりを描き我、創造の使徒とならん。木に掛けるは木、型は橋、創造の証となれ『錬金混成クリエイト』】」


この辺がいけないのか?


精度を上げるために試行錯誤しながら橋を生成していく。


意外と錬金術のいい練習になるな、これ。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




橋の復旧作業は予定していた期日より早く終わったの。


まだ十分な強度をつけるために補強作業は残っているけど、人が渡る分にはもう問題はないの。


「ありがとうございます」


「何、気にするな。お前さん達のおかげでこんな早く終わったんだからよ」


「そんなことありませんよ。皆さんの仕事がいいから早く終わったんです」


「若いもんが謙遜すんじゃねぇよ」


私の目の前で工事責任者から報酬をもらっているこのクリムゾンとかいう人が来てから修復のペースが上がったの。


最初は私より『錬金混成クリエイト』の精度が低く、構成スピードも遅く、一度術を使うと手を止めて少し何かを考えた後、もう一度術を使ってたの。


それを繰り返している内にどんどん精度、構成スピードを上げていって、最後のほうには性質変化で強化も混ぜていたの。


しかも、私達は支給された魔法薬などを使って魔力を回復して作業をしていたのだけど、その回数もこの人のほうが少なかったの。


つまり、認めがたいことにこの人のほうが優れた魔術師である可能性があるの。魔術師養成学校の中でもトップクラスの成績を誇る私を差し置いてなの。


「あなた、なの」


「僕ですか?」


パッとしない外見のその人が私に向き直るの。


魔術師は大体、杖を持っているのだけど彼は持っていない上に剣士なら剣を持っているはずなのにそれもないの。武器らしい武器を見た感じ何も持たず、腕輪についている青い魔法石だけが彼を一般人と別だと示しているの。


「私と勝負しなさいなの」


「・・・・・・はい?」


その人がきょとんとした顔になるの。


「聞こえなかったの?」


「いや、聞こえましたけど、何故、勝負をしなくちゃいけないんですか?」


「私とあなたが魔術師だからなの」


「・・・・・・お嬢さん、よく言葉が足らないって言われません?」


何で知ってるの。


「魔術師同士が戦う決まりなんてなかったと思いますが」


「私があなたより優れていると証明するの」


「そういうことですか。えっと、争いごとはやめません?」


その人が困ったような顔をしたけど止めないの。


「勝負なの」


「あなたのほうが優秀ですから戦わなくてもいいと思うんですが」


「勝負なの」


「無益な争いはどうかと思いますけど」


「勝負なの」


「お互い橋の建造で疲れてますし」


「勝負、なの」


「・・・止めませんか?」


「しょうぶ、なの」


「・・・・・・分かりましたから、泣かないで下さい」


な、泣いてなんかないの。


「とりあえず、今日はお互い疲れてますから明日、ということで」


「わかったの。逃げるな、なの」


「分かってますよ。逃げたらまた泣かれそうですし」


「そんなことないの」


「とりあえず、先にお互いに自己紹介しておきましょう。僕はクリムゾンです。あなたは?」


「フィリア・ヴァリルなの」


「ちなみにお年は?」


「19歳なの。それがどうかしたの?」


「年上ですか・・・・・・」


何だか馬鹿にされている気がするの。


明日はボコボコにしてやるの。







というわけで、錬金術を出してみました。今後の展開で紅月は聖夜の様に仲間と共に戦うわけではないので、戦闘を有利にするための道具、魔術装飾体アーティファクトを使わせようと思っています。聖夜達も使わないわけではないですが、使用頻度、効果ともに紅月のほうが上等な物を使う(作る)予定です。

 新キャラ、フィリアは何となく出してみました。一応、設定上はティニーとはちょっとしたライバル関係というか意識しあっているということになっています。ティニーも勇者一行について行くだけあってそれなりに優秀なんです。

 次回は魔術が多く出てきます。次回とその次辺りで初級魔術は打ち止めです。全属性二個ずつ、風属性だけは私の構成の甘さから例外的に三個になってしまいました。

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