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第十五話   ダンジョンの奥には当然・・・?

計4185文字です。

アンケートは引き続き実施中。

前回までのあらすじ。


ゾンビに囲まれるルル君、発見。


P.S プチ針の山地獄を再現してみた。岩だけど・・・・・・。






ルル君にお礼を言われてちょっと嬉しい。


無事でよかったと思いつつ、改めてこの部屋を観察する。


部屋の側面にはびっしりと魔法陣が刻まれていて、何よりやっぱり、これ、祭壇だよね。


ルル君とレイラちゃんが乗っている台を見る。


広い部屋の中心に階段まで築いてその頂上に何かを乗せる為と思われる台。


「二人とも、そこから下りてもらえるかな?」


「あ、はい」


レイラちゃんが先に下りて、ルル君が下りるのをサポートする。


二人が下りると台の上を観察する。


血の跡は、ないか。たいした汚れもなくて綺麗なもんだ。少なくとも生贄の祭壇ではなさそうだ。となると、あのゾンビ達に魔法陣の処置でも施すための台か?いや、それだと祭壇形式にする意味がない。


しゃがんで台の側面を見ると、模様が刻まれていて真ん中の部分には文字が刻まれていた。


これは、古代語か。となると、相当古い遺跡だな。えっと、文頭はここか。内容は『母なる水の精達よ、我等ここに悠久なる平穏と癒しを望み祈りを捧げん。病みし我等が同胞に生の祝福を恵みたまえ。我等に優しき加護を恵みたまえ』、か


台をぐるりと一周するように一列に刻まれた古代語を翻訳すると立ち上がり、この部屋に入ったときに一番気になった高いところにある天井を見上げる。


「ふむ・・・・・・、ここは『アイエ湖』の下かな?」


天井には水の中らしき風景があり、そこでは先程まで僕が釣っていたアイエフィッシュが泳いでいる。


「え?湖の下?え!?何で天井に!?え!?あれ!?」


「わぁ・・・・・・」


レイラちゃんはルル君ばかりに目がいっていて天井の様子に気づいてなく、ルル君もゾンビに追われていた恐怖で、ゾンビが死んでからは二人とも下の様子や僕の行動を見ていたせいで僕が呟くまで気付かなかったようだ。


よく見れば天井の端のほうに微妙に明滅している魔法陣の一部が見えるのでその効果か?そうなると魔力の供給元は、世界脈ラインかな?本で世界脈ラインを魔法陣に組み込めば半永久的に動くって書いてあったし。・・・・・・まぁ、理論だけが確立されてるのであって実際にそれが適用されているものはないはずなんだけど。


世界脈ラインというのは大地を流れる大きな魔力の流れのことで、地下深くを流れているのだが時々、世界脈ラインの魔力が地表近くまで漏れ出してくる土地があり、その土地『秘境区域マジックグラウンド』は自然が豊かになったり、不可思議な現象が起こったり、魔術的に希少なものが取れるような土地になるらしい。


そうすると、この祭壇は世界脈ラインから漏れ出した魔力を利用するために作られたもので、この台は刻まれた文字から推測すると病人などを寝かせて世界脈ラインの魔力を利用して強力な回復魔術をかけるためのものかな?湖の近辺にエネミーが出ないのも少なからず太古の術式が生きてるんだろうな。『我等に優しき加護を恵みたまえ』が結界のことを指しているんだろう。


しかし、そうするとなおさらあのゾンビが異質になってくる。


ここの守護者にしては性質が悪すぎるし、弱すぎる。神殿にそんな生き物を放置しておくとも思えない。


あえて、あのゾンビは別口と考えるべきか?


「レイラちゃん、何か『アイエ湖』に関することで知ってることはない?」


「え?あ、えっと、湖の名前の由来なら昔話みたいなのを知ってますけど」


「聞かせて」


レイラちゃんから聞かされたのは巫女、アイエ・ゲーテスと勇者の物語。祈りもむなしく息絶えてしまった勇者。共に消えた巫女と勇者の遺体。時折出る行方不明者と妙な音。


昔話だから多少、事実とは異なる点はあるだろう。例えば、当時にこの地下神殿の存在が伝わっていたなら勇者の体はここに寝かされて巫女がここで回復魔術をかけたはずだ。あくまでそれは仮定だから別の可能性もある。


だけど、十中八九、このゾンビ達は・・・・・・。


「ところで、クリムさん、どうやってここから出たらいいんでしょう?やはりあの最初の場所から?」


「ん?いや、あれは入り口専用みたいだからあれから外に出ることは出来ないよ。出口は多分、あっちだろうね」


入ってきた通路と祭壇を挟んで反対側にある通路を指す。


「ここは神殿みたいだから出口がないってことは流石にないとは思うよ」


「神殿、ですか?」


考察をやめて足を動かし階段を下りはじめる。


「それもかなり古いね。多分、アイエ・ゲーテスが生きていた頃よりもずっと前に建造されたんだと思うよ。大体、こんな地下に神殿を建造する技術は今に伝わってないから現代にも伝わっていない技術をもった存在がいた頃の遺産。そう考えると遺跡という表現もあてはまるかもね」


世界脈ライン』を利用しての回復魔術が開発された記録も王宮の書庫にもなかったからそう考えてもいいだろう。


「それに恐らく『ギーナルの森』も含めてこの辺り一帯は『秘境区域マジックグラウンド』なんだろうね。この神殿にその力の大部分をとられても残った余力で森を生い茂させるだけの力はあったんだと思う」


「・・・・・・えっと、『秘境区域マジックグラウンド』っていうのはよく分かりませんけど、歴史的大発見だったりしますか?」


「魔術的にもね。ここの存在を公表するだけでも一財産築けるはずだよ」


「・・・・・・」


驚きのあまり声も出ないようだ。


「普通なら誰かが気付くはずだろうけど、『アイエ湖』で行う依頼がEランクで収まってしまうせいで入り口の魔術的な初歩の仕掛けに気付ける人がいなかったこと。この神殿のせいで『秘境区域マジックグラウンド』としての影響が分かりにくかったこと。そのせいで見つからなかったんだろうね」


それでも時折出るという行方不明者はルル君のように偶然、ここに迷い込んでしまったのだろう。


Eランクの人間にあのゾンビ達を相手にするのは少し難しいかもしれない。けど、走れば逃げ切れないわけでもないはずだ。


ということは、まだ何かあると考えるべきか。それとも、この考えは杞憂で済むか・・・・・・。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





ルルと合流してからは特に問題もなく、先に進めた。


たまにゾンビが襲ってくることもあるけどクリムさんが軽くあしらってくれて私達に被害は及ばない。ただ、あの部屋を出てからクリムさんは極力、魔術を使わずナイフだけで戦っている。


それでも私は魔術師だと思っていたのでそれに驚いてつい聞いてしまったぐらいに強い。


そして、私の問いにむしろこっちの戦い方のほうが得意だと言われたときには更に驚いた。


それで安心しながら歩いてこのまま帰ったらここの場所を知らせて、三人で取り分を分けようと考えていた。


しばらく歩くとさっきの部屋ほどではないけど、広い部屋に出た。


その部屋は奥のほうに二つの通路があり、それより少し手前に杖が床に刺さっていた。


見事な装飾施された杖で先等部分は縦と横に直行した二つの円環で囲われたその中心に青い結晶がついていた。


「二人とも、止まって」


それを近くで見てみようとしたとき、クリムさんに止められた。


クリムさんはジッと杖を見て、やがてゆっくりと口を開いた。


「・・・・・・出てきたらどう?」


何を言ってるんだろう?


そう思った瞬間、杖の青い結晶が輝きだして思わず目を逸らして次のそっちを見たときにはそれがいました。


青い表皮に覆われ、大きな四足で地面の上にたち黄色い眼でこちらを見る青い甲羅を持つ人を丸呑みに出来そうなぐらい大きな亀。


「ヨク我ノ気配ニ気付イタナ」


「まぁ、そういったものには敏感なもので」


それに大した動揺も見せずにクリムさんが答える。


「く、クリムさん、あれは?」


「ここの番人、かな。恐らく、ここまで何とか逃げ延びた人間がいたとしてもあれに殺されたんだろうね」


「正解ダ。我ハ此ノ地ヲ護ル者ナリ。侵入者ニハ死ヲ与エル」


亀から与えられる威圧感に震えながらクリムさんに尋ねる。


「か、勝てるんですか?」


「いや、流石に高位精霊相手に勝つなんて言えないよ」


「こ、高位精霊!?」


魔術に疎い私でも高位精霊の存在くらいは知っている。


な、何で高位精霊がこんなところに!?


「何故、我ガ高位精霊ダト思ウ?」


「あなたの後ろにある杖。その青い結晶部分に宿っていたんでしょう?高位精霊が物に宿ったっていう話は知らないけれど、中位精霊が出来るなら高位精霊が出来ても不思議はないし、実体化出来るのは高位精霊からだからかな」


「我ハ元ハ杖ニ宿ル中位ノ精霊ダッタ。シカシ、コノ神殿ニ長キニ渡リアッタコトデ精霊トシテノ格ガ上ガッタノダ」


「この神殿自体がかなり水を祀る神殿で水の力が強いみたいだからそういうことも有り得るか」


「に、逃げましょう!?高位精霊になんて勝てませんよ!」


「それでもいいけど、多分出口は向こう側だよ。じゃなきゃ、ここで張っている意味がない」


「ソノ通リダ。外ニ出ルニハコノ先ニアル魔方陣ヲ使ウシカナイ」


そ、そんな・・・・・・。


「じゃあ、二人は通路に戻って隠れてて」


「クリムさんはどうするんですか?」


「やるしかないでしょ?あれを倒さないとここからは出られない。逃げてもそのうちに餓死するだけだからね」


無理だと分かっているけど、そうするしかないのも事実で素直に従って戻っていくことにする。


しかし、ルルがクリムさんを見て


「あ、あの、が、頑張って。お、おにいちゃん」


ルルがクリムさんを応援したことに驚き、更にはお兄ちゃんとまで呼んだことで更に驚いた。


クリムさんも驚いたようだけど、すぐに微笑を浮かべた。


「ルル君にそう言われちゃ負けるわけにはいかないな」


そう言って、ナイフを構えるクリムさんに背を向けて巻き込まれなさそうなところまで下がった。


頑張ってください!クリムさん!


私には祈ることしか出来なかった。



最初の難関、高位精霊登場。どういう形態にしようか迷ったんですけど、結局亀ということで落ち着きました。杖の形状にしてもエネミーなどの外見にしてもうまく表現することが出来なくてすいません。これからもこういった乏しい表現が多いと思いますがどうかご容赦下さい。

 高位精霊の話し方を漢字とカタカナにしてみました。読みにくいかもしれませんが人間と区別をつけるためにあえてこういう書き方にしました。主にこの表記の仕方は今のところ高位精霊と龍のみに使う予定です。どうかご容赦下さい。

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