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第十三話   確信出来ないことほど恐ろしい。

計6441文字です。

あとがきに第二回アンケートがあります。

前回までのあらすじ。


ディテス姉弟とギーリスの森に向かった。


P.S  ディテス君が懐いてくれない。





『リーガ』から西に歩くこと一日、僕らは『ギーナルの森』に辿り着いた。


「【冷たき刃よ『氷貫ニードル』】」


三本の氷の矢が僕の指示に従い飛翔していき、飛んでいるビーを三匹打ち落とす。


「【出でよ、大地の昂り『岩槍スピア』】」


続けて『岩槍スピア』でウルフと大きめのミミズ型(エネミー)、ワームを一匹ずつ仕留める。


「【暗きより出でて従え『黒形トランス』】」


レイラちゃんに攻撃を仕掛けようとしているワームの上にサッカーボールぐらいの大きさの黒い点を出現させて、そこから黒い柱を伸ばしてワームを地面に縫いとめる。


黒形トランス』は好きな形をとらせることが出来るので使い勝手がいい。


「【清き水、汝、盾となりたまえ『水盾ウォール』】」


ルル君の横から襲いかかろうとしていたビーの前に水の壁を出して攻撃を防ぐ。


「【奔れ『風刃カット』】」


水盾ウォール』で攻撃を防がれたビーを『風刃カット』で切り殺して、同時に別の方向にも『風刃カット』を複数放って僕に向かってきていたウルフを殺す。


「【我が従えしは炎『炎撃ファイヤ』】」


最後に炎を複数放って飛んでいるビーを焼き落とす。


「・・・・・・片付いたか」


僕の索敵範囲内に気配を感じなくなったので、警戒レベルを下げる。


「レイラちゃん、ルル君、怪我はない?」


「はい。大丈夫です」


レイラちゃんは僕が『黒形トランス』で縫いとめたワームにちゃんと止めを刺していたようで彼女の前にはワームの斬られた姿で転がっていた。


「大丈夫」


ルル君は返事はしてくれたけど僕に視線を合わせてくれない。彼はずっとこの調子であり中々僕に懐いてくれない。子供好きの僕としてはちょっとショックだったりする。


それはともかく嘘を見逃すつもりはない。


「さっき、ワームの攻撃がかすってたよね?」


「・・・・・・こんなの怪我のうちに入らない」


僕が全部を殲滅してもいいのだけど、それじゃあ彼らの今後のためにならないだろうと思ったので彼らにも戦闘に参加してもらっている。もちろん、危険があれば僕がサポートしているけど。


「【癒しを恵みたまえ『小光癒ファーストエイド』】」


柔らかな光がルル君を包む。


気休め程度の回復魔術だが、この程度の怪我なら十分な効果を発揮する。


「これで大丈夫かな?」


「・・・・・・」


彼はそっぽを向く。


「ルル!クリムさん、ごめんなさい。この子人見知りが激しくて」


「別に気にしないでいいよ」


というか、レイラちゃんと話してるとルル君が睨んでくるんだよなぁ。お姉ちゃん子みたいだから僕を彼女が話してるのが気に入らないんだろう。


「それにしてもクリムさんは凄いですね。魔術をあんなに使いこなせるなんて」


「初級魔術ばっかりだけどね」


「私も魔術が使えれば苦労をかけないんで済むんですけど、本当にすいません」


「まぁ、そんな簡単に使えるものでもないから仕方ないさ」


魔術を使うにはただ詠唱をすればいいってものではない。


術を発動させるのに十分な魔力を保持していて、詠唱に伴い魔力を放出しなければならないのだが、魔力は全てのものが持っていても魔力を放出するということが中々難しいらしい。


どっかの誰かさんは一発で成功させていたけど、本来は才能と修練があって初めて使えるようになるものだ。


高度な術になってくると魔力を放出する強さ、魔術式に魔力を通す順序なども関わってくるので魔力のコントロールというのは上位の術者になるほどうまくなってくるし、高度な術は当然、魔力の消費量も多いわけだから魔力の保有量も多くなってくる。


うまく魔力の放出が出来なければ、グレゴリオが雇った盗賊一味の魔術師みたいにうまく術が発動しない。


僕だってちゃんと術を発動させるには一晩かかってしまった。・・・・・・それでも早すぎるほうだけど。


ちなみに、中級魔術の詠唱などは本のおかげで知ってはいるけど僕は何事も十分に習熟してから先に進む性格なので今は初級魔術のみを使っている。


「短剣だけで無茶をさせるのも悪いし、僕が頑張らないといけないのは当然だって」


「本当にすいません」


ルル君とレイラちゃんの装備は共に短剣が一本ずつのみ。僕と同じで依頼を受けるのは初めてで更にはエネミーと戦うことすら初めてらしいということをさっき聞いた。


「そういえば、エネミーのせいで話は途切れたけど、何で二人はこんな仕事をしてるのさ?」


エネミーの素材を剥ぎながらレイラちゃんにさっきの続きを促す。


ちなみに、ワームの素材は皮の一部らしい。


「私の家は父が随分前に亡くなってそれからは、ん、母が身を粉にして働いて、いたんですけど、その母が、んっ、先日無理がたたって倒れてしまったんです、えいっ。これでいいですか?」


レイラちゃんは僕の見よう見まねでエネミーから素材を剥ぎながら話してくれる。


「うん。それでいいよ」


「それで私が働こうとしたんですが、よいしょっ、私みたいな子供を雇って、くっ、くれるようなとこは少なくて、しかも母の治療費やら、ん〜っ、食費やら何やら色々とお金が入用だったので危険、えいっ、な仕事ですが稼ぎがいいこの仕事をする、ことにしたんです。そのことを知った、やっ、ルルも一緒に仕事をすると言い出して、えいっ、私は止めたんですが言うことを聞かなくて、よいしょっ、結局、一緒にこうして働くことになったんです」


レイラちゃんの隣ではルル君も悪戦苦闘しながらエネミーから素材を剥いでいた。


「レイラちゃんが心配だったんだよ。ルル君も男の子だからね、お姉ちゃんを護らなくちゃと思ったんじゃないかな」


ルル君は僕がそう言うとレイラちゃんの体で僕から隠れるように移動して作業を続けた。


「それは嬉しい、んしょ、んですが、姉としては弟を危険な目に、えいっ、合わせたくないんですよ」


素材も剥ぎ終わったので立ち上がって、レイラちゃんの手を取って立つのを助けてあげ、ルル君にも同じことをしようとしたのだけど、差し出した手を無視された。


それに苦笑しながら森の奥へと進んでいく。


「その気持ちは分かるよ。僕も妹が一人いるからね」


「妹さんですか?どんな人なんです?」


「可愛い妹だよ。身内の贔屓目が入ってるけどどこに嫁に出しても恥ずかしくない、良い子さ。ただ、僕に過剰な愛情を持ってるのがたまに傷だけど」


重度のブラコンでなければ、本当に凄く良い子なんだよ。


「僕が親代わりみたいなことをしてたからか僕に懐きすぎちゃって」


「親代わりというとご両親は?」


「いるにはいるんだけどね・・・・・・」


あの二人+αに任せたらとんでもないことになる。


僕を例に挙げれば、まず父さん。

 物心つく前に子供に人殺しをさせるな!というか、生まれてから一ヵ月後から『スキンシップ』を始めたとかマジでふざけるなよ!初めて出来た子供に嬉しいからって自分の特技で趣味の殺人技能を教え込むな!!そんなもんは『スキンシップ』なんて言わない!!・・・・・・ちなみに以前、そのことを直接を言ったら


『僕にはこれしか得意なことがないんだ。息子に父親としていいところを見せたかったんだ』


と言って、マジでへこんでいたので慰める羽目になった。まぁ、父さんだし少しは大目に見てやってもいいかなと思った。許す気は微塵もないけどね。

 小学校に上がったころには『スキンシップ』は『教育』という名に変わっていて、その頃には一人で仕事をすることもあった。


で、続いて母さん。

 何で幼稚園児にもみたない子供に人心掌握術やら暗示やら催眠術やら教え込む!?幼稚園に行ったら行ったで人間観察を義務付けるな!家に帰れば『おままごと』やら『お芝居』とか言って人を騙す方法や演技や変装を身につけさせるな!っていうかあれは本格的な劇団とかの練習と比べても遥かに超えてるぞ!?小学校に行ったら『社会勉強』とか言って情報関連の訓練をさせやがって!クラスメイト相手に詐欺をさせるな!良い人そうな校長の変態趣味なんぞ知りたくなかった!生徒達の憧れの女教師と教頭の不倫関係なんぞ知りたくなかった!PTA会長相手に脅迫まがいのことなんかしたくなかった!ガキ大将一家の悪い噂を撒き散らして転校に追い込むとかしたくなかった!・・・・・・ちなみにこれを本人に言ったところ


『つっ君が可愛いから私の全部を教えて上げたかったの(ほろり)』


そんな嘘泣きに騙されるか!母さんは自由自在に泣けるから信用ならないんだよ!


『本当なんだよ!・・・・・・まぁ、面白そうだったっていうんもあるけど。で、ね。つっ君、今夜も『お勉強』、ヤろう?』


息子に欲情するな!!精通する前に母さんの嘘に気付いて一般常識を知ってホンッッッッッとによかったよ!このときだけは神に感謝した!

 ・・・・・・小学校に上がったころからそっちの『お勉強』をさせられていました。本番は出来なくても、ね。色々あるから・・・・・・。『普通』だと思ってたんだ、思わされてたんだ。

 常識を知ってからもどんなに抵抗しても母さんが言葉巧みに、父さんが武力で僕を捕まえる。というか、父さん、あなたはそれでいいんですか?


『玉藻さんのためなら』


・・・・・・そうですか。


最後の一線は越えていない・・・・・・はず。


次、+α、居候。

 幼稚園児を実験室に連れ込むんじゃねぇ!!しかも、手伝わせるってどういう了見だ!おかげで、小学校に上がるころには大学院を卒業できるだけの知識がありやがりましたよ畜生!母さんの嘘に気付いたころには一流の研究者になっちまってたよ!


『お前、働く。私、サボる。そして、お前の成果を私の物として提出する完璧だろ?』


どこが完璧だぁぁぁぁあぁぁぁあ!!むしろ、穴しかないわぁ!!あんたのいかれた頭と比較されたら一発でばれるだろうが!!


『だが、誰も気付かない。よかったな、お前も十分『規格外』だ』


・・・・・・微塵も嬉しくない。誰か気づいて。そして、僕はまだ十分に『一般人』だ。


そんなわけで、こんな常識を忘れ去った連中に妹を任せられるわけもなく僕が普通に育ててきた。


・・・・・・歳の離れた妹なんだけど、父さんと母さんが子作りをしてる様子が僕が覚えてる限りないんだよな。・・・・・・最後の一線、越えてないよね?


「く、クリムさん?」


「え?何?」


「いえ、何か怖い、というか、様子が変だったもので。それに最後は顔色が悪くなってましたよ?」


感情が表面に出ちゃってたか。


「ゴメン。何でもないよ」


「お姉ちゃん」


ルル君が急にレイラちゃんを呼ぶ。


「どうしたの?」


「あれ」


ルル君が指差した先にはギーナルの実がなっている木があった。


「よく見つけたね、ルル。偉いよ」


レイラちゃんがルル君を撫でるとくすぐったそうに身をよじった。


「じゃあ、早速採りに行こうか」


そう言って、その木へと足を向けたとき


「?」


「どうかしましたか?」


「いや、何か聞こえたような気がしたんですけど」


・・・・・・何か嫌な予感がするなぁ。













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





『ギーナルの森』の奥にある『アイエ湖』は昔から澄んでいて質のいい水は『リーガ』ではお店の料理に使われたり、魔法薬の材料に使われたりしている。貧しい私には縁のないものだと思っていた。


「おいしい」


それが私がわざわざエネミーが住みつく『ギーナルの森』の奥地にあるここまでやってきて、直接飲めるなんて少し前の私には思いもしなかった。


「かなり良質の水みたいだから一般のものと比べると誰だってそう感じるよ」


私の傍で森の中で拾った丈夫そうなしなりのある枝に街で買った釣り糸と針を結びつけて釣りをしているクリムさんに私の呟きを聞き取られてしまった。


「まぁ、だからこそ、依頼に出るくらいの価値があるんだろうけど」


私達、姉弟が初めての仕事なので誰かについていこうと依頼掲示板の前で待ち構えていたらこの『アイエ湖』での依頼を受けるクリムさんと出会い、連れて行ってもらうことにした。


クリムさんも初めての依頼ということを街を出るときに聞いて、不安になったけれどここまでの道中で彼に出会えたのは幸運だと思った。


まず、強さで言えば申し分ない。魔術師であるらしいクリムさんは魔術で現れたエネミーを圧倒し、そのおかげで私達もたいした怪我も無くここまでやってこれた。そして、私達の今後のことも気遣ってくれて色々と戦いのアドバイスをしてくれたりもするし、戦いやすいように場を支配する。


人格面で言っても、ルルの失礼な振る舞いも笑って受け流してくれて夜の見張りも自分から進んで一晩中してくれる優しい人だった。旅の注意点や素材を剥ぐときも丁寧に教えてくれて、私が言わなくてもワームの処理を彼が進んでしてくれる。女の子としてミミズに触れるのはどうしても嫌悪感が出てしまうのでこれには助かった。


「お、かかった」


クリムさんが竿を上げるとその先端に魚がかかっていて、用意してきた入れ物につめる。


その動作を素早く行うと次の餌をつけて、再び釣り糸を飛ばす。


「暇なら湖の周りを見てきていいよ」


「え?でも、」


「この湖、若干だけど魔除けの力を持っているらしいから湖周辺にはエネミーは出ないはずだから大丈夫だよ。ずっと僕の釣りが終わるまで何もしないで待っているのは退屈でしょ?」


「そんな別に大丈夫ですよ」


ここまでよくしてもらって勝手に行動するのは気がひけてしまう。


「特にルル君なんかは耐えられないんじゃないかな?」


クリムさんの反対側を見るとルルが私を期待するような眼で見ている。


「・・・・・・それじゃあ、少しだけ」


「どうぞ。行ってらっしゃい」


クリムさんに見送られてルルを連れて湖の周りを散策することにした。


湖の周りは空気も澄んでいるというかこうして歩いているだけでもリラックス出来て、気分がよくなってくる。


湖の綺麗な水に光が反射してとても綺麗な風景も見れた。


歩き始めてしばらく経った所で


「ルル、どうしてクリムさんと仲良く出来ないの?」


「あいつなんかいなくても僕がお姉ちゃんを護れる」


むすっとした顔でルルが答える。


「でもね、クリムさんにはルルも怪我を治してもらったり助けてもらってるでしょ?そうしたらお礼はちゃんと言わないと駄目じゃない」


「助けてもらわなくても大丈夫だった」


「ルル」


「・・・・・・」


「あ、待ちなさい!」


ルルは私から逃げるように走り出してしまった。


私もルルを見失わないように小走りになって追いかける。


しばらく走ると池に向かってしゃがみこんで地面をいじっているルルの姿があった。


安心して速度を落としてゆっくり近づいていった。


しかし、


「え!?」


突然、ルルの周りが光ったかと思うと姿が消えた。


「ルル!?」


慌ててルルが居た場所に駆けつけるがそこには何もなく、パニックになった頭でどうしようかと焦りながら考えて、クリムさんに助けを求めることにした。


ルル、無事でいて!





というわけで、ルル君失踪。今回は次回への繋ぎですが、その中で紅月の家族をちょっと紹介してみました。ちなみに玉藻というのは紅月の母親の名前です。厨二病満載の設定ですが、どうかご容赦下さい。

 しばらくはこっちの作品に力を注ぎたいと思っていますので更新スピードが上がるかもしれません。

 さて、この作品も十三話とそれなりに進んできました。紅月も無事に旅を始めたので次のアンケートをとりたいと思います。結果次第で先の構想を詰めていきたいと思います。

A.ジーナ登場

B.海(多種族連合アルカディア領内)へ

C.K.W(ナイフの作者)登場

です。それぞれで最低限の構想は出来てますので結果次第でその構想を詰めていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 あと紅月(紅雪)が父から教わった殺人技能(衝撃を徹す。一瞬で間合いを詰める歩法。ect)に名称をつけるべきか否か、そちらも答えていただければ嬉しいです。

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