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第十話  死を招く刃は血で雪を染める。

計5206文字です。

人が死にますのでそういうのが嫌いな方は注意してください。

 最初は少し前の話の後半部分とかぶります。

前回までのあらすじ。


盗賊に襲われた。十中八九、グレゴリオの手下にでも雇われたのだろう。


P.S 左腕が痛い。






トリアさんの足元が僅かに動いたのを見て、彼女を助けるために動いた。


「ぐぅ!」


『不知火様!?』


その代償として左腕を負傷し、そのまま動きを縫いとめられるわけにもいかず腕を引き抜く。


出血が激しい、早めに止血しないとまずいな。・・・・・・ん?


『だ、大丈夫ですか!?』


「・・・・・・とらえた」


やっと網にかかった。慣れない事はするもんじゃないな。


『何ですか?』


「・・・・・・大丈夫、です。ふっ!」


右腕一本で剣を振り、腕を切りつけ脚にも切りかかったあと、蹴り飛ばす。


「けど、この出血は、早めに手当てをしないと、マズイかも、しれません」


この程度で痛がるほどやわな鍛え方はされていないけど、辛そうにするのが自然なのでそういう演技をする。


「それより、あの男、魔術師としては、未熟みたいですね」


詠唱をして魔法を使おうとしているみたいだが、発動の際に感じられるようになった魔力の気配を感じない。


さて、どう仕留めるか?


そんなことを考えていると魔力の流れが変化したのを感じ、破裂音が幾つか重なって響き魔術師の男が崩れ落ちた。


トリアさんがやったのかと思うと同時に隣でトリアさんが倒れた。


そういえば、本で魔力を使いすぎると、魔力切れを起こして気を失うって書いてあったな。


・・・・・・まぁ、ちょうどいいと言えばちょうどいいか。


「・・・・・・【唸れ、『風打ブラスト』】」


魔力を込めて作り出した数は十。標的の顔部分を囲うように密集させて発動させる。


そして、『風声ソナー』で標的が崩れ落ちたことを確認する。


今まで手加減して戦っていたのは視線を感じてはいたものの、僕が気配を感じられる範囲外にグレゴリオの手下がいたため、どこにいるか正確な位置が分からなかったからだ。


こいつらを皆殺しにしたところでグレゴリオに報告がいったら意味がない。第三幕に向けてグレゴリオの手下を捕らえる必要があった。


そのために魔法の理論を本で学び、昨日、宿屋を抜け出し魔法の練習をした。


あの短い時間でも位置を掴むための『風声ソナー』、そして意識を奪うための『風打ブラスト』だけを覚えるなら僕には十分な時間だった。


偶然、露店で見つけた魔法石は嬉しい誤算だった。違和感を感じさせないようにそれをトリアさんに持たせ、盗賊たちとの戦闘中に抱きしめたときに掠め取った。


そして、トリアさんが集中し、魔力の流れが彼女によって変化したときに小声でこっそりと『風声ソナー』を発動。


気づかれないようにゆっくりと有効範囲を広げていき、魔法石のおかげでより正確に居場所を掴め、予定より三つ多くの『風打ブラスト』を叩き込めた。


そして、計画通りグレゴリオの手下は気絶した。


これで、序幕は終了。


「ふぅ・・・・・・」


とりあえず、目標の第一歩が済んだので一息をつく。


「何だ?女が倒れて諦めたか?」


それを諦めて溜息をついたのかと勘違いしたらしい、親分らしき男がそんなことを言った。


「あ、いや、序幕はもう終わりだなぁ、と思って」


「何言ってやがる?」


「ところで、ここにいる人で盗賊団は全員?」


「そうだが?それがどうした?」


話しながらポケットからハンカチを取り出して一瞬のうちに片手で左腕を縛って止血する。これであと一時間はもつだろう。あとの処置は終わらせてからでいい。


「いくら?」


「あ?」


「僕の命だよ。いくらで殺せって言われた?」


その言葉に少し驚いたようだが、すぐに笑みを浮かべた。


「1000万ガルドだ。お前みたいなガキに何でそんなに金を使うのか知らねぇがこんな儲け話放ってはおけねぇ」


「1000万、ねぇ」


「だから、てめぇはさっさと死ねよっ!」


無粋にも話している最中に盗賊の一人が襲い掛かってきた。


「・・・・・・そんなはした金で命を売ったんだ」


防ぐ必要も、よける必要もない。剣を一閃して首を斬りとばす。


「なっ!?」


今までの戦い方からまさか殺すとは思わなかったのだろう。一瞬、呆けた隙に剣を投げて弓を持っていた男の首に突き刺す。


これからは血と恐怖と死が支配する第二幕。


「可哀想だけど、誰一人としてここから帰すつもりはない。生き証人が一人でもいたら面倒だからね」


日は沈んだ。今夜、二度と覚めることのない眠りをプレゼントしてあげよう。


「さぁ、出番だ。紅雪こうせつ。僕の中に眠る殺人鬼の血」


これは人格を切り替えるための自己暗示キーワード


死刃血雪しじんけっせつ


――――――――――――――――――――



与えられた役割は殺戮劇の主演。左腕を使えなかろうとも、この程度の雑魚を相手に遅れをとるほど落ちぶれてはいない。


眼鏡を外し、ポケットにしまいながら標的を見つめる。所詮はあかの擬態用の道具だ。外したところで何の問題もない。


一足飛びで敵まで近づき、心臓の上から掌底を叩きつける。


「ごふっ!?」


敵は血を吐き出して倒れる。


「い、何時の間に!?」


全力で動いたわけでもないというのに驚くんじゃない。


『君の動きは父さんに近いんだ。認識なんてこの程度の連中に出来るわけないだろ?』


ならば、お前でも連中の相手は十分だろう?


『まぁ、そうだけど。今回は時間制限があるからね。怪我のこととトリアさんと監視が起きるまでのね』


胸中であかと会話をしながらも別の敵の後ろをとり、掌底を叩きつける。


「ごぼっ!?」


「て、テメェ!何をしやがった!?」


近くにいた奴が恐怖で顔を染めながら血を吐いて倒れた敵を見て喚いた。


「・・・・・・衝撃を体内に徹して心臓を直接攻撃しただけだ」


この舞台にあげられてしまった哀れな生贄達に冥土の土産として教えることにした。


浸透頸を応用したこの技は的確な位置に衝撃を叩き込むことが出来なければ命をとることは出来ないが、この程度の雑魚ならば何の問題もない。


「このように、な」


「ぐはっ!?」


怯える敵の後ろをとり、掌底を叩き込む。


周りにいる奴らは瞬く間に五人も仲間を殺され、俺の動きも目で追えないため恐怖で固まっている。


「こ、殺せ!早く殺せ!」


親玉の叫びで鬼気迫った形相で剣を振りかぶり四人同時に襲い掛かってくる。


「・・・・・・理解が出来んな」


軽い、なおかつ鋭さも申し分ない。


「「「「っぁ!?」」」」


右手であかが購入したナイフを持ち四度閃かせると、敵はそれぞれの首筋から血を噴出して力なく倒れおちた。


「ひぃっ!」


「何故そんなに大きな獲物を振り回す?」


敵の視覚の外、知覚の外を闇にまぎれて素早く移動する。


「ぐぁっ!」


「人を殺すのにそんな大仰なものも力もいらない」


一人の首を掻っ切り、並んで立っている二人の間を駆け抜けながらそれぞれの首筋を切り裂く。


「「かっ!?」」


「速さと」


敵の懐に潜り込み、掌底をナイフを持ったまま叩き込む。


「ごふっ!?」


「技術だけで十分だ」


「うあぁぁぁぁぁ!!」


後ろから剣を振り下ろして、襲い掛かってきた敵の上へと跳躍。両足で首を絞めて、へし折る。


「がふっ」


「は、話が違う!こ、こんな化物相手だなんて聞いてねぇぞ!」


「に、逃げろ!」


敵は恐慌状態に陥り、逃げ出し始めた。


「無駄だ」


一人にナイフを投擲、心臓を的確に貫く。


同時に、右手を振るう。


「ぎっ!?」


「かぁっ!?」


「うぁっ!?」


「ぐぁっ!?」


「ひぃ!な、何だ!?」


先頭を走っていた四人の首が突然、切り飛ばされてそいつらの丁度、後ろを走っていた敵が腰を抜かし、他の連中も動きが止まる。


あかが言ったはずだ。誰一人生かして帰さない、と」


言いながら、もう一度腕を振るうと更に四人の首が切り飛ばされる。


「ま、魔法か!?」


「生憎、俺はまだ使えんよ。これも技術の一つだ」


腕を振るうと右手から伸びる四本の糸が闇の中を蠢く。


「糸とて極めれば凶器になる」


糸で敵の首を括り、一気に切りとばす。


更に四人を殺し、あれだけいた敵も残り三人。


「二」


腕を振って糸で女に仕留められ気絶した魔術師の首を落とす。


「一」


「がはっ!」


恐怖で固まった敵に掌底を叩き込んだ後、糸で投げたナイフを回収する。


「うあぁぁあぁぁあぁ!!」


「零」


最後まで生かした親玉はやけになり襲い掛かってきた。


「あぁ、あ?」


剣を振り下ろした姿勢で呆けたそいつが自分の自分の胸を見下ろせば、心臓にナイフを突き立てられていて、剣を完全に見切り、紙一重でかわした俺はそれを冷めた眼で見ていた。


ナイフをゆっくり抜くと、そいつは血を吐いて崩れ落ちた。


ナイフの血を振り落としながら死屍累々の惨状を見渡し、生き残りがいないことを確認する。


『お疲れ、紅雪こうせつ


べにに代わるか?」


『いや、後始末は僕がしておくよ。必要があれば彼女に代わればいいしね』


「そうか・・・・・」


ならば、役目を終えた俺は舞台から降りるか。


理究造月りくぞうげつ


――――――――――――――――――――


これで第二幕は閉幕。次は肝心な第三幕。


転がっている死体のうち僕と背格好が似ているものを選ぶと、近くにあった剣を拾い左腕を貫く。


首は既に飛んでいるから切り落とす必要はないみたいだ。


あとは仕込みをして役者達がうまく踊ってくれるのをじっくりと見物しようか・・・・・・。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





眼が覚めると、まず気絶する前のことをうまく思い出せなくて段々とはっきりしてきた記憶を思い出し、ハッとしました。


自分がどうして助かったのかは分かりませんが、急いで不知火様を探すとすぐに彼を見つけることが出来ました。


・・・・・・すでに冷たくなった姿で。


ところどころを切り刻まれ、服はにじみ出た血で染まり首を切られていて、その近くには血痕が飛び散った割れた眼鏡と剣が落ちていました。


思わず私は胃の中のものを吐き出しました。


胃の中のものを出し切って落ち着いた後に周りを見渡すと他に死体はないものの所々に血の跡があり、私が気絶した後に激しく争ったことが伺えました。


私は不知火様の遺品の眼鏡を拾い、気分が悪くなりながらも街に戻り、戦いの直前に不知火様に渡されたぬいぐるみを依頼者の子供に渡しました。


その子はお礼が言いたいのに不知火様がいないことに首を傾げていましたが、一緒にいたその子の母親は私の顔色から何があったか悟ってくれたようでした。


帰る時に私に何かお詫びの品を渡そうとしていましたが、それを丁重にお断りしました。不知火様が生きていたとしたら何かをもらおうとなど考えないと思ったからです。



そして、私は報告のためにお城に戻ってきました。


一人で戻ってきたことを最初は疑問に思われましたが、報告をして証拠の品として眼鏡を提示すると動揺が一気に広まり騒然としました。


私の責任を追及する声もありましたが、この騒ぎは思わぬ方向に収束していきました。


最初から不知火様の存在をなかったことにしよう、と・・・・・・。


不知火様のことをまだ民衆は知らないため、勇者は最初から光様一人ということにして民衆の動揺を防ぐ、ということになりました。


そのため、私を罰することはしないようですが、不知火様のことを吹聴することがないように命じられ、彼のことを知る者には緘口令がしかれました。


そして、私は再び、お城で働くことになりました。


城の皆の態度は私が不知火様についていったことを知る人が元々、少なかったこともあってあまり変わりませんでした。


それでも、間近で人の死を見たため気持ちは常に沈みながら仕事をしていました。



そして、一週間が経った時でした。私の部屋の机に一通の手紙が置かれていました。


こんなところに置いてある事を不思議に思いつつ、封を切ると中からあのときに盗賊達に奪われたはずのネックレスが出てきました。


同封された手紙には


『ご協力感謝します。いずれお礼に参りますのでくれぐれもこのことは内密にお願いします。 

P.S この手紙は燃やしてください』


とだけ、書かれていました。





というわけで、今回、紅月(紅雪)が大暴れしました。紅雪に代わる前の部分が説明くさくて読みにくいかもしれませんがどうかご容赦下さい。

 戦闘のシーンに関しては前の話でもそうですが、私の拙い文才ではこのようにしか書けず、何かこうしたらいいのではないかという意見がありましたらどんどん送ってください。

 最後のトリアの部分は大分投げやり的な風になってしまいましたが、喋れない彼女視点だと紅月がいなくなった今、こうしたほうがいいかなと思いこうしましたが、どうでしたでしょうか?

 ご意見・ご感想のほうは随時お待ちしています。

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