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旅行ついでに迷宮攻略  作者: 8bit
はじめの一歩
3/3

1ー3 旅立ちの迷宮

 未だ薄く霧がたちこめる中、街の大通りには既に人の姿があった。露店に売り物も並べ始める者や、都市近くの村で取れた野菜や肉を届けに来たどこかの村人、更には遠い町から来たと思われる商人らしき人物もいる。それらの都市外から訪れる者達に対応すべく、都市の入口である大門の検問所で早朝から働き始める兵士は欠伸をこらえ、眠い目を擦りながらも慣れたようにスムーズに対応している。昼間ほどではないが商人同士の挨拶や商品の競りなど、未だ寝ている住民達を起こさない程度で賑わっていた。


 少しの時間が経ち殆どの店が準備を終えた時、街中に行き渡る様な鐘の音が鳴り響いた。それと同時に日が昇り、太陽が街に光を届け朝を告げる。街の人々が眠りから目覚め、今日も明るい一日が始まろうとしていた。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 窓の外からくぐもった鐘の音が聞こえ、薄らと開いたカーテンの隙間から陽の光が差し込み部屋の中の一部を照らす。その一部にフィーゼの顔がど真ん中に入っていた。太陽に好かれているとしか思えないほどフィーゼはよく朝の日差しにあたる。鐘の音と太陽の直射日光の二重の攻撃によってフィーゼは無理やり瞼をこじ開けられた。薄く開けた目に容赦なく太陽の光が突き刺さり、思わず目を閉じてしまうが、瞼の上からでも光は容赦がなかった。なるべく太陽を見ないよう、視線を下に逸らすとその先には自分の腕を枕にしてスースーと可愛らしい寝息を立てているノアがいた。


「珍しいな···俺の方が早く起きるなんて···」


 そんなことを小さく囁きながら、空いている方の手でノアのサラサラとした髪に手櫛をかける。思った通りなんの抵抗もなくスッと指が通った。「···ぅん」とノアが小さく声を出す。その時布団がずれてノアの姿が露わになった。


「ん?·········っ!?」


 昨日はあんな話をしていて全く気付かなかったが、ノアは短パンにタンクトップのみという結構露出度の高い服を着ていた。目のやり場に困ってあたふたしているフィーゼを知ってか知らずかノアは寝返りを打ち、向かい合う形になった。かなり密着した状態で。ノアはそれ程胸は大きくはないがそれでも今のフィーゼには十分に凶器になり得た。柔らかな二つの膨らみが容赦なくフィーゼの胸板に押し当てられ、ムニュという感覚が伝わる。


(これ以上はマズイ···!!!)


 そう思った後の行動は速かった。ノアの頭を起きないようどかし静かにベッドを降り、シャワールームで冷水を浴びて頭を冷やした。フィーゼはとても青かった。


 頭を冷やして落ち着き部屋に戻ると、そこにはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたノアがベットに座っていた。まさか···とフィーゼの表情が徐々に引き攣っていく。


「随分慌ててたねぇ〜?」

「お前、起きてたのか···」

「うんっ、フィンの亀さんも早起きだったね?」


 ノアからノアらしからぬ発言が聞こえ、ギョッとしながらも咄嗟に自分の股間を押さえる。


「そんなのどこで知ったんだよ!?」

「ん〜?村のおばちゃん達から聞いたんだ〜。こうすれば男はイチコロだっ!って」

「純情なノアを返せぇぇぇええ!!!」


 宿の一室で一人の娘を女へと変えてしまった中年女性達への悲痛な叫びが響いた。




 そんなこんながあった後、二人は着替えを終えて宿1階の食堂へ来ていた。食堂は広く、白い木でできたシックなデザインのテーブルや椅子が多数置かれてた。そこへ昨日接客してくれた獣人の女の子がやってきた。


「おはようございますニャ!」

「おはよー!えっと···」

「フルールはフルールニャ!」

「おはよ!フルールちゃん!」

「おはよ」

「はいニャ!」


 表情をコロコロ変えるフルールは、家のお手伝いで褒められた子供のようでなんとも可愛らしい。


「それではお客様、こちらへどうぞニャ!」


 フルールに案内されたテーブルには既に朝食が並べられていた。湯気が立ち上るスープに、焼き上がったばかりであろう大きめなクロワッサンの間に青々としたレタスと表面をカリッと焼いたベーコン、そして瑞々しいトマトが挟まれたサンドイッチ、更にはデザートまでついている。


「おぉ、これはなかなか」

「美味しそう!」

「当店人気のクロワッサンドニャ!存分に楽しむニャ!」


 自分の店の料理が美味しそうと言われて嬉しいのか尻尾をぶんぶん振り、耳をピコピコ動かしながらえっへんと胸を張っている。そんな微笑ましいフルールの言うように早速席につきサンドイッチにかぶりついた。柔らかいクロワッサンに続きシャキッとしたレタスの食感、そしてベーコンの芳ばしい塩気とクロワッサンに練り込まれたバターの香りが追い討ちをかけるように口に広がりそして最後に瑞々しくほんのり甘いトマトによって包まれ素晴らしい組み合わせに仕上がっていた。スープの方はと言うとカボチャや人参や玉ねぎなどをじっくり煮込んであり野菜の優しい甘さが朝の体に染み渡るようだ。


「ドリンクはコーヒーと紅茶とミルク、それぞれホットとアイスが選べるニャ。どうしますかニャ?」

「俺はコーヒーのホットで」

「あたしはミルク!アイスで!」

「畏まりましたニャ!」


 フルールはてててて···と厨房の方へ駆けて行った。その時ドアが開く音が鳴り、音の出処であるドアを見やるとそこにはエネギスの姿があった。


「ようお前ら。旨そうなの食ってんじゃねぇか」

「あ、ジッちゃん。どうしたんだこんな朝早くから」

「エネじいおはよ〜」

「おうおはようノアちゃん。それで話なんだが、お前らこの後暇か?」


 フルールがコーヒーとミルクを運んできてエネギスの姿に気付くとあの元気で明るい笑顔をパァと咲かせエネギスから注文を取る。エネギスはフィーゼ達と同じものを頼み話を続ける。


「この後は特に予定もないから街を散策する予定だったんだけど何かあるのか?」

「いやぁな、お前らもめでたく冒険者になったわけだからよ、クエストの一つや二つやってみねぇかって誘いだったんだが無理なら···」

「はいはいはい!やる!ね、フィンやろう!」

「わかったから落ち着け。···ノアもこう言ってるからやるよクエスト」

「そうか!そりゃあ良かった」


 街の観光もしてみたかったがノアがクエストができると聞いて大はしゃぎしているのを見て小さく笑みを浮かべた。




 朝食を食べ終えたフィーゼ達はギルド内奥のテーブルに座っていた。エネギスはフィリアを呼びつけ対応を任せる。始めニコニコしていたのにフィーゼ達を見るなり笑顔が引き攣ったのは見なかったことにした。


「え、えっと···今回はどのようなご要件で···?」


 明らかに物怖じしていた。そんなフィリアを見てそこまで酷いだろうかと苦笑いを浮かべる。


「フィリア、こいつらにクエストを見繕ってやれ」

「あのー···何故私なんでしょうか···?」

「お前は昨日の話を知ってる奴だからな。話が広まるより、一人で止めておいた方がいい」

「はぅ···」


 フィリアは肩を落とし目には薄く涙を浮かべていた。そして半ばヤケになったのか「分かりましたよ!」と言ってクエストボードから依頼を持ってきてテーブルに叩きつけた。


「これでどうです!?」

「あ、あぁ、ありがとう」


 フィーゼはフィリアにキッと睨まれ、少したじろいでしまう。とりあえず、クエストを確認するためにテーブルに置かれた(叩きつけられた)依頼書に目を通す。クエストの依頼はギルドから、またはその他からの二種類あり今回の依頼はギルドからのようだ。内容は採取兼討伐クエストでダンジョン内のモンスターから落ちるドロップアイテムと魔玉の回収であった。


「流石フィリアだな。いいものを選ぶ」


 このクエストは結構人気があるらしく、駆け出しの冒険者でなくとも受けるものが多いようだ。理由としては難易度がそこまで高くなく、ギルドから報酬も出て余ったドロップアイテムで装備を作ることができるからだそうだ。


「じゃあこれ受けるよ」

「かしこまりました。ですがその前にギルドから装備を支給しましょう」


 二人の格好は村にいる時と同じ格好でとても戦闘向きとは言えない服装だ。フィリアは奥からいくつか装備を持ってきてテーブルに並べていく。


「ノアさんはジョブから剣士系かと思われるので軽装ですがこちらの鎧をつけてください。フィーゼさんは魔道士系でしょうか?」

「いや、俺は体術専門だよ。」

「そうなんですか?ではこちらのワイバーンの皮を使ったシャツとオープンフィンガーグローブを使ってください。それとグリーブも付けておきます」


 こうしてフィリアから渡された装備に着替えた。フィーゼはシャツとグローブとグリーブのみなのですぐ終わったが、ノアは初めての鎧に手間取ってフィリアに手伝ってもらっていた。


「いやぁー、遅れてごめんね」

「おぉなかなか様になってるじゃないか」

「へへ、そう?フィンは何かいつもと変わんないね」

「やっぱりそう思うか?」


 ノアは胸部のみ守る作りになっているプレートとガントレットにグリーブ、腰には剣まで付けており正しく剣士と言った感じだ。それに対してフィーゼの装備はいつものシャツとズボン姿にグリーブとグローブがプラスされただけのように見えた。


「防御面は問題ありません。これから行くダンジョン、"アンフェンガー"通称旅立ちの迷宮に出る魔物の攻撃はその装備で十分防げます」


 "アンフェンガー"はダンジョン内の魔物の強さが低くく、階層数も21層と比較的少なく、Eランク冒険者が多くの人数挑むことから旅立ちの迷宮と言われていた。実際最初の階層ではゴブリンやコボルドしかいない。だが、弱いと言ってもやはりダンジョンである。気を抜けばすぐに首を狙われる。冒険者になったことで自惚れたEランク冒険者が命を落とすことは少なくない。


「おし、準備もできたみたいだな。表に場所をつけといたからそれで向かうといい」


 ギルドを出てみるとそこにはどこかで見たような馬車が止まっていた。すると誰かが馬車を降りてこちらに向かってくることが分かり、よく見るとその人物に見覚えがあった。


「「御者さん!」」

「おう」

「久しぶりだなブロード。やはりお前が言ってた二人ってのはこいつらか」

「ようエネギス。その通りだ。昔はお前らみたいな骨のあるやつ乗っけてたが、今じゃ殆ど見なくなっちまったからな。この二人がゴブリンと戦った時は衝撃だっぜ」


 どうやらこの御者ブロードはゼノやエネギスが冒険者だった時代からやっているらしい。エネギスと仲が良いのもエネギスが昔よく乗っていたかららしい。


「む?ゴブリンだと?凄い奴等が来たとは聞いたがその程度でお前が骨があるなど、歳で目が悪くなったか?」

「けっ、馬鹿にすんのもいい加減にしろよ?ゴブリンは1匹や2匹じゃねぇ。······15匹だ。」


 そこに反応したのはエネギスではなく隣で話を聞いていたフィリアだった。


「じゅ、15ひきぃぃいーーー!!!???そんな数駆け出しの、しかもたった二人の冒険者に倒せる数じゃありません!?」


 そんな反応を見てブロードは面白そうに続ける。


「おいおい、誰が駆け出しの冒険者なんて言ったんだ?ゴブリンを倒したのはジョブを授かる前だ」


 その言葉を聞いたフィリアは口をパクパクさせた後、頭の処理速度が追いつかなかったのか倒れて目を回してしまった。


「はぁ···ブロード···こいつは新人なんだ。あまり弄らないでくれ···」

「おや、それはすまんな。ガッハッハッ」


 フィリアが倒れるというちょっとしたアクシデントもあったが、とりあえず今はダンジョンへ向かうためフィーゼとノアはブロードの馬車の荷台に乗り込む。


「そんじゃま、行きますかね」

「お前ら気ぃ抜くなよ?」

「おう!」「うん!」


 馬車がゆっくりと動き出してギルドから遠ざかり手を振るエネギスと他のギルド職員に引きずられるフィリアが徐々に小さくなっていく。見えなくなるまで手を振り続けた二人は互いを見合いニッと笑う。その顔に緊張や高揚感はあれど、不安や恐怖は一切なかった。そんな二人を見たブロードは「···いい顔をしやがる」と小さく笑いながら囁いた。そして一行は大門を潜り迷宮を目指して歩を進めた。






 しばらく進むと一箇所異様に盛り上がった大地が見えてきた。近ずいて見ると盛り上がった大地には大きな穴が空いており、穴は斜めに地下に向かっていた。周りを見ると商人の姿もあり冒険者に必要なポーションなどの回復薬はもちろん転移石も売っていた。ポーションはともかく転移石はかなり高額なものだ。ポーション1個で銀貨3枚に対して転移石1個でポーション10本は買えてしまう。だがフィーゼとノアは既にエネギスからそれらを支給してもらっていたので特に問題は無い。


 迷宮の手前で馬車は止まり、ブロードが二人に告げる。


「ここが"アンフェンガー"。旅立ちの迷宮だ」

「ここが···」「ほぉあぁー···」


 成り立ての冒険者が挑む迷宮と聞いて結構こぢんまりとした地味な場所だと思っていたが、意外と大きく獲物が口に入るのを待っているかのように入口は大きく開いていた。微かにだが風が薄暗い穴の中へ向かっており、不気味な雰囲気を醸し出している。きっと心が弱い冒険者はここで折れるものも出てくるだろう。二人はじんわりと手に汗が吹き出るのを感じる。


「おいおい、こんな所でびびんなよ?お前らはこの俺が認めた冒険者だ。胸張ってけ」


 ブロードはフィーゼとノアの背中をポンっと叩く。その瞬間二人の顔から緊張が取れ徐々に目に力が入っていく。


「うん···ありがとう!ブロードさん行っくる!」

「御者さんのお陰で緊張が解れたよ!よしフィン!攻略するよ!」

「んな無茶な···!?」

「ガッハッハッ!その意気だぜノアちゃん。俺はここで待っててやるから存分に暴れてきな!」


 こうして二人の本格的な迷宮探索が始まった。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 実際に迷宮に入ってみて分かったが、あまり暗くない。日が届かない場所であるにも関わらず壁が青白く発光していた。


 そんな迷宮内をマップを確認しながら進むフィーゼとノアがいた。この迷宮は既に攻略されていて全階層のマッピングも終了していた。今は下へ続く階段を目指して進んでいた。


「思ったより何も出ないねぇー」

「ノア、そう言うのは口に出さないで······ほら出てきた」


 ノアが立てたフラグに誘われて出てきたのはゴブリン3匹だった。ギシシッとあの醜悪な顔に笑を浮かべていた。敵を確認した二人はすぐに剣を抜き拳を構えた。


「あの時のゴブリンはフィンがやったから今度はあたしにやらせて!」

「気を付けろよ」


 ノアは頷くとゴブリンへ途轍もない速さで肉薄し突きを放つ。当然ゴブリンは反応できるわけもなく攻撃を受けて後方へ吹っ飛んだ。1回の突きに見えたが、頭と首と胸の3箇所を正確に貫いていた。ノアのスピードがどれほどずば抜けているかを物語っている。


『グゲッ!?』


 一瞬で吹っ飛んだ仲間と目の前に迫った敵に驚愕したゴブリンは慌てて攻撃の態勢に入ろうとした時に視界がずれていく。何が起こったのか理解する前にゴブリンの意識は途絶えた。


「恐ろしく速いな···」

「ふへへっ、どーよ?」


 ブイっとピースサインを飛ばしてくる。ノアは基のSが高いのに加えてパッシブの『剣装備時S50%上昇』により途轍もないスピードになっている。突きと横薙ぎがほぼ同時に見えた程に。


「とりあえず剥ぎ取らないとな」

「おぉ!」


 二人は剥ぎ取り用ナイフで素早く剥ぎ取っていく。ゴブリンの肉などは初めてだが村付近の森に住む獣の肉は良く剥いでいたので手慣れている。牙や耳、爪などをバックパックに詰め終え探索を再開する。この階層では完璧にノアが無双していた。


 しばらく進むと下へと続く階段らしきものを見つけた。階段と言っても凹凸が激しい坂道に無理やり木を打ち付けただけの簡易なものであった。一段降りるたびメキメキと今にも折れてしまいそうな音が聞こえてくる。実際すでに何箇所か折れてる部分も存在している。そんな階段を下りきると違う景色が広がるかと思いきや大して変わりはなかった。壁一面薄く発光するゴツゴツした岩肌で覆われている。


 周りを見渡していると、この階層初の魔物が一匹現れた。二階層でも変わらずゴブリンであった。ノアは飽きたようなのでフィーゼがゴブリンと対峙する。フィーゼは早速あの時魔法を使うことにした。意識を集中しゴブリンに魔法の標的を合わせ魔法のトリガーを引く。ゴブリンもそれと同時に走り出した。


「《ディセラル》!」


 走り出したゴブリンに薄く黒い光が纒わり付く。するとゴブリンの走る速度が急激に低下した。動きの全てがスローモーションになっている。


 ······一歩······一歩······一歩······そしてまた一歩


 足が地面についている時間より滞空時間の方が長い気さえする。棍棒を振りかぶり振り下ろすまでに欠伸が出てしまう。試しに棍棒を素手で受けてみると、全く勢いが乗っていない。速度が殺されてしまっている攻撃は徐々に力を加えられているような感覚だけであった。


「本当に遅くなるんだな」

「あはは、なんか面白いね」


 相手は必死にやっているのだろうが動きが遅いので少々滑稽に見えてしまう。ゴブリンには悪いが容赦なく腹に蹴りを入れる。すると蹴られた部分が見事に脚の形に凹み空中をゆっくり後方へ飛んでいく。小走りで余裕で追いつくスピードであった。


「空中でも持続するみたいだな」

「結構便利かも」


 と、ここで効果が切れたのか一気にスピードが上がり吹っ飛んでいく。壁に叩きつけられたゴブリンは既に息絶えていた。


「フィンの魔法かなり厄介だね」

「まぁお前に掛けたところでそこらの兵士といい勝負するだろうな」


 フィーゼは『アクセラル』も試してみることにする。犬面で二足歩行の魔物コボルドが現れ魔法を発動する。フィーゼの周りを白い光が纏い、今度は自分以外の周りの動きが先程のゴブリンのようにスローモーションになって見え、『ディセラル』よりもこっちの方が凄いんじゃないか?とフィーゼは思った。ただ問題があるとすれば敵味方関係無く自分の周り全てが遅くなることだろうか。この加速状態で敵に攻撃したところ相手の頭部が消し飛んだ。普通に殴るだけで顔を陥没させることが出来るフィーゼのパンチにこの超加速が加われば当然こうなるだろう。更にMPの消費量もスキルのお陰でかなり少なくすんでいる。


 この後の探索はスムーズに進み10階層を終える頃には既にバックパックはいっぱいになっていた。普通、多くの魔物と出会えば何とかして撒いたり、事前に位置を知り鉢合わせないよう別のルートを行くのだがこの二人は逆に向かっていき文字通り瞬殺していく。よってすぐにバックパックがいっぱいになってしまうのだ。


「うーん、もうこれ以上はいらなそうだよ〜」

「どうする?戻るか?」

「そうする。そろそろオフロ入りたいしっ」


 フィーゼとノアは数時間ぶっ通しで動いたせいで服に汗が染みている。


「そうだな。んじゃ帰るか」


 バックパックの底の方にあった転移石をなんとか取り出し込められた転移の魔法を使う。一瞬視界が歪み瞬きをした後には既に地上だった。瞬間移動なんて自分の魔法よりよっぽど凄い気がする、と思うフィーゼだった。


「ん?おぉお前達。随分長く潜ってたな。5階層くらいまで行ってたのか?」

「いや、10階層まで行ってバックパックがいっぱいになったから戻ってきたんだ」

「体力的には全然イケたんだけどねぇ」

「じゅ、10階層···?ククク···ガッハッハッ!そうかそうか10か!お前らはやってくれると思ったぞ!」


 フィーゼとノアは顔を見合わせ頭に?を浮かべる。


「まぁなんだ!話は後だ。もう遅いから帰るんならとっとと帰るぞ」


 気が付くと当たりは真っ赤な夕日に照らされてオレンジ色に包まれていた。太陽を見るともう既に全体の3分の1を地平線に埋めていた。


 二人は馬車に乗りブラドへの帰路についた。その帰り道先程の話しの続きを聞くと成り立ての冒険者は基本5階層へ降りるのもやっとでこんな短時間で10層に行けるほど迷宮は甘くないらしい。だがそんな不可能を余裕も見せながら軽々とやってのけた二人を見てブロードは大声で笑うのだった。

いつも読んでいただきありがとうございます。


思ったより遅くなりました。。

執筆スピード遅くてすいませんorz

ダンジョン内の描写が難しいです。こういうの簡単に書ける人の才能が欲しいです。

先に言っておきます。

次回も遅くなりそうです。読んでもらっている方には申し訳ありませんが用事が入ってしまいました。用事の合間に書ければなと思います。

ではまた次の機会に

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